■目的
・可視化ソリューションの自社開発
・「3クリックで結果が出る」ほど簡単な操作で、高度な解析を行うソフトウェアを医療現場に提供
■アプローチ
・「LungVision」「Bf-NAVI」等、高度な処理を行うシステムをストレスなく稼働できるハードウェアとして、HP Z230SFF Workstationを採用
■システムの効果
・高精細化する画像の膨大なデータ処理にハイスペックなワークステーションで処理時間を低減
・従来よりも優れた処理速度・描画速度により、操作スピードが1.2~1.3倍
■ビジネスへの効果
・3年間標準で土日を含む翌日対応でのオンサイト保守対応。5年まで延長や当日対応への拡張可能などの充実したサポート体制が生む安心感
・HPワークステーションは東京生産で納期対応も安心
・HPワークステーションの医療現場での利用者が多いことによる安心感と導入のスムーズさ
3クリックで結果が出る
肺気腫計測ソフトウェア LungVision
LungVisionは、全肺野のCT画像(DICOM画像)から3次元図を構築、気管支部は自動的に除去し、正確な低吸収領域(LAA:Low Attenuation Area)の割合を算出するソフトウェアである。肺気腫の診断等に用いられる。「3つのボタンをクリックするとレポート作成できる」をコンセプトとし、画像の取得に1クリック、3D画像作成に1クリック、LAA%を含む視覚的なレポート作成に1クリックの、計3クリックで基本作業が完了する(図1)。シンプルな操作性で、簡便に定量的な解析ができる点が魅力である。
レポートは、数値と共に低吸収率領域(肺気腫部分)が色分けされた画像が表示される。ゴダード法CTスコアに準拠した3画像を自動クリッピングする標準レイアウトのほか、最も肺気腫が多くみられる1スライスのみを表示させるよう、カスタマイズすることが可能となっている。「肺気腫の割合が一目でわかる画像つきのレポートは、患者様に与えるインパクト・危機感も大きく、禁煙外来では禁煙を促すのに最適と評されています。インフォームドコンセントが重視される今の医療現場のニーズに適していると考えます」と永井氏は説く。「元々は健診センターや禁煙外来がある施設をターゲットに開発しましたが、発売を開始してみると大学病院での研究用途やクリニックからの要請が多くありました。結果、学会発表なども普及効果となり、CTやPACS等の導入時の引き合いが増加し、現在は病院の規模にかかわらず広い裾野で導入されています」(永井氏)
気管支鏡の挿入ルートをナビゲーション
仮想気管支鏡ソフトウェア Bf-NAVI
同じく全肺野CT画像から3次元図を構築するシステムを使っているBf-NAVIは、気管支鏡挿入のための経口から患部までの最短・最適ルートを算出する。現在は教育用として、大学病院を主として導入されている。気管支樹の複雑かつ多岐にわたる構造、さらに患者ごとの狭窄・肥大などがすべて可視化され、患部への確実なルートを取得、気管支鏡の安全な挿入の一助となる。作成したルートは動画再生することが可能で、再生速度を調整しながら実際の施術と連動させて練習することができる(図2)。「カーナビゲーションと同じで、『一度使えば、便利でなくてはならないものになる』という評価を頂いています」と加苅氏は教えてくれた。
こちらもボタンを左から右に順押ししていけば簡単に作業ができる、直感的なインターフェース設計となっている。
3Dソフトウェアを支えるHPの最新ワークステーション
HP Z230SFF Workstation
膨大なデータ処理を必要とするLungVision、Bf-NAVI等を支えるのはHP社のWorkstationである。「医療用ソフトウェアで一番課題となるのが処理時間です。各工程の処理時間を軽減することが、限られた時間のなかで多くの患者と向き合う必要のある医療現場にとって大切であり、そのためにはハイスペックなワークステーションが欠かせません」と加苅氏は語る。全肺野領域約350枚のDICOM画像を3D構築するために、従来機では1分半ほどかかっていたが、今回採用されたHP Z230SFF WorkstationはHDDと併用してSSDを搭載しており、低コストで画像処理のレスポンス速度が向上、従来機の1.2~1.3倍の速度で処理が進み、3D回転などの動きもなめらかで、よりストレスフリーな作業環境を生み出すことができる(図3)。
HPワークステーションと形作るこれからの展望
最新ワークステーションを得て、サイバネット社はすでに様々な新機能に向けて動き出している。加苅氏は「両ソフトウェアの発売から5年が経ち、ソフトウェアもハードウェアも一新する時期に来たと思います」と語る。
LungVisionは、3クリックシステムは変わらずに、よりスタイリッシュなインターフェースを設計。2014年6月発売予定のSTL画像(図4)の抽出機能を強化した医用画像処理ソフトウェア「INTAGE Volume Editor」との連携も図る。
一方、Bf-NAVIの機能は今後新製品「DirectPath」へと受け継がれていく。DirectPathは64bit対応ソフトウェアであり、より多くの画像をスムーズに3Dイメージングすることができる。中国では発売済であり、国内の学会でも次世代ナビゲーションシステムとして高く評価されている。Bf-NAVIが教育用として積んだ実績のほか、同社の別部門の技術を融合・応用し、手技との更なる連動を目指す。今後の医療現場での活躍が期待される。
「当社の製品は、分野違いの人に口頭説明を一度すれば、追加質問なしに結果まで行きつけるぐらいのシンプルさ・簡便さを重視しています。これからもユーザの『こう動いて当たり前』をキャッチアップし、わかりやすさを第一に、開発を続けていきたいと思います」と加苅氏は結んだ。HP社のハードウェアに支えられたサイバネット社のソフトウェアは、様々な技術を取り入れこれからも躍進していくだろう。