APCCVIR2012・ISIR・JSIR見聞記

2012.06.19

2012年5月30~6月2日に、神戸ポートピアホテル(兵庫県神戸市)にて開催された
APCCVIR2012・ISIR・JSIRの参加報告を、荒井保典先生よりお送りいただきました!

聖マリアンナ医科大学放射線医学講座
荒井保典

英語アレルギーの自分と、臨床現場に活かすには。

5月30日から6月2日まで、神戸ポートピアホテルで開催されたAPCCVIR2012・ISIR・JSIRに参加してきた。紹介する機会を頂いたので、僭越ながら書かせていただきたい。
最初に書いておくが、自分は英語が苦手だ。どれくらい苦手かというと、まぁ学会会場にいた参加者の中では、最終ラインを手堅く固めているといえるくらいだと思う。なので、そのへんは含んで読んでいただければ幸いである。

自分は初日午後から、最終日朝までの参加だった。初日は午後に自分の口演があり、昼過ぎから参加させていただいた。まず最初の感想は、初日から結構盛況であったことだ。前回軽井沢で開催されたISIR・JSIRでは、参加者の多くが日本人で、初日はやや閑散としている印象であったが、今回はAPCCVIR共催ということもあって東南アジアや韓国からと思われる多くの参加者が初日から多く見かけられた。
全体として初日以降も、海外から参加された先生方の熱のこもった発表が目についた。特に韓国のレベルの高さ、研究の練度、積極性はさすがと思われるところで、アジア・太平洋のIVRの騎手は自分たちだという気概すら感じた。
それに対し、残念ながら議論はあまり盛り上がらず、座長からの質問で終わる場面が多かった。平均すると日本人はなぜか自分も含めて英語力はやはり大きく劣っており、この点で世界に出るに出られない状況があるように思う。

まず初日は、自分は有痛性骨腫瘍に対する緩和目的TACEの発表をさせていただいた。韓国の先生が座長でもあり、国際学会だなぁという意識を改めて感じさせられた。抗癌剤の併用は必要か、抗癌剤の選択基準は、という質問を頂いた。現在、日本で使用できる塞栓物質で十分な有効性を見込むには、抗癌剤の併用が望ましそうな感触であること、選択基準は原発腫瘍などに応じて選択しているが、あまり明確な選択基準が残念ながら無いのが正直なところで、早い球状塞栓物質の使用認可が望まれる。自分の次に発表された韓国からの報告では、やはり骨転移に対し緩和的にTACEを施行していたが、gemcitabine・oxaliplatine・adriamycin3剤の抗癌剤カクテルを動注後、imipenem含有のビーズで塞栓するというもの。奏効率は7割で自分の報告と大きく変わらず、悪くなさそうだが、その薬剤を使う根拠に関してはやはり弱いと思われる。こういった治療を、どう普及させるかというのは難しい。前向きのデータで成績を示せれば、「勝てば官軍」ということもありうるが、Oncologistを納得させることのできるような形にするのは、かなり難しいだろう。ただし、臨床現場では使えるツールではあるので、自分としては引き続き紹介していきたいデータではあるし、球状塞栓物質でやれれば、また随分違うのではないかとも考えられる。

2日目のSpecial Session 2:Mortality & Morbidity Sessionは興味深く聞かせていただいた。各国の先生方の肝を冷やした症例、肝が冷えただけで済まなかった症例、どうにも判断の迷う症例などが提示され、会場からの回答も集計しながら、転帰が報告されるというもの。奈良医大の穴井先生から提示されたIVCフィルター(Trap Ease)の精巣静脈への誤留置の症例は、どこに入ったかはすぐ想像がつくものの、自分でも日常診療で起こりうるケースだと思われ、改めて意識させられる。精巣静脈の高位合流の解剖学的パターンは頻度も一緒に提示されており、大変勉強になった。また、TrapEaseの構造上、頭側からしかアプローチできない状況で、抜去はかなり難しいと感じていたが、上手に抜去されていた。韓国からはAsan Medical CenterのGi-Young Ko先生から、小児の肝移植後の門脈狭窄に対するIVRの症例が提示された。PTA後に門脈破裂を認め、ステントグラフトを挿入したりと非常にaggressiveな報告で、数多くの経験をされている先生ならではとも言える判断力と、韓国の優れたデバイス事情が垣間見える症例だった。患児が成長した後は、どうするのか?も、とても気になるところではある。全体としては、治療の方向性や判断のポイントは会場の集計結果に大きなばらつきはないように感じられた。アジア・太平洋中心の参加者ではあまりお国柄関係なく、みんな考えるところ、迷うところは同じようなところだな、というのも面白い。欧米の先生方が入ると、デバイスなどの違いから、大きくやることが変わるような局面も出るのかもしれず、そういう点も興味が尽きない。

※続きは「Rad Fan2012年8月号」(2012年7月末発売)にてご覧下さい。

第1会場の2日目、Ziv J Haskal先生肝いりのMortality & Morbidity Session。時々、会場からどよめきが起きる。