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臨床の現場では患者の息止めが困難な場合が少なくない。ここでもADCT のボリュームスキャンが、成功率の高い追加撮影として活用されている。
■ 病 歴:90 歳代 女性
発熱、肝機能障害を認めた。腹部エコーで胆石、胆嚢炎、総胆管拡張を認めた。臨床所見、採血検査などと併せて急性胆嚢炎、急性胆管炎と診断された。
■ 検査目的
総胆管拡張の原因精査目的にて造影CT を施行した。
■ 読影医コメント
急性胆管炎は、重症化すれば急速に敗血症へと進展し致命的となる緊急性の高い疾患であり、胆道閉塞の有無ならびにその原因を可及的速やかに診断することが肝要で画像診断が担う役割は大きい。通常のヘリカルスキャンでは呼吸停止不良などによるモーションアーチファクトが鑑別診断の妨げとなることが少なくない。320 列ボリュームスキャンはモーションフリーズした鮮明な腹部画像を得ることができるため、日常臨床におけるメリットは大きい。
■ 撮影担当技師コメント
高齢のためコミュニケーション困難で呼吸停止も不可能であったため通常のヘリカルスキャンでは上腹部領域のモーションアーチファクトが大きく、再撮影による改善も期待できなかった。 そこで再撮影は320 列ボリュームスキャンを行った。ボリュームスキャンは1 秒以下の高い時間分解能によって、モーションアーチファクト発生症例に有効性が高い。撮影範囲は160mm と限られるが、主要な上腹部臓器はほぼカバーできる。当院では上腹部の追加撮影としてボリュームスキャンをルーチン的に使用している。本症例では、呼吸が比較的規則的であったため、動きの少ない瞬間を狙って撮影を行い、診断に供する画像を得ることができた。
Aquilion ONE
管電圧:120kV
管電流:500mA
再構成関数:FC11
スキャン時間:0.5sec/rot
コリメーション:0.5mm スライス× 320row
被ばく低減:AIDR 3D(Weak)
ヘリカルスキャン
ヘリカルスキャンでは、呼吸によるアーチファクトのため総胆管拡張の詳細が判然としない。
ボリュームスキャン追加撮影
ボリュームスキャンでは、モーションフリーズした鮮明な画像によって下部総胆管結石に伴う総胆管拡張と診断が可能である。