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臨床的有用性の高さが謳われるアプリケーションにもピットフォールがある。
見逃しのない確実な診断のために、ADCT ボリュームスキャンの追加撮影が有用であった。
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■ 病 歴:80 歳代 男性
直腸診にて腫瘍を触知し、内視鏡検査を施行した。直腸 (Rb)
に腫瘍を認め、内視鏡検査後にCT colonography (CTC) を
施行した。
■ 検査目的
腫瘍の局在診断、血管解剖 ( 栄養血管との位置関係、破格の有無)、転移性病変の有無を評価して治療方針決定を行う。
■ 読影医コメント
術前CTC+CT angiography は、原発巣や転移巣の評価に加え、解剖学的誤認による血管や周囲臓器の損傷の回避に必要な術前情報を客観的かつ再現性をもって得ることができる。しかしながら、スクリーニングを含めたCTC のピットフォールの一つに、下部直腸と肛門領域の評価がある。直腸診で病変の存在が疑われた際は、専用カテーテルを抜去後に低線量の320 列ボリュームスキャンを追加撮影することで、より確実な臨床評価が可能となる。
■ 撮影担当技師コメント
CTC 検査で得られる仮想内視鏡像やair enema 表示は、腸管壁と空気との高いコントラストを利用するため、低線量での撮影が可能である。本症例におけるボリュームスキャンはヘリカル撮影よりも被ばくが少なく臨床的有用性は高い。しかしながらスキャンの追加による被ばくには考慮すべきである。このため、追加のボリュームスキャンでは描出能を落とさない必要最低限の撮影線量(VolumeEC:SD30)と逐次近似応用再構成AIDR3D を併用した。AIDR 3D によって骨盤内におけるストリークアーチファクト発生が抑制されており、低被ばくでありながら良好な画像の取得が可能であった。
管電圧:120kV
管電流:50-550mA(volme EC:SD30)
再構成関数:FC11 バルーン表示WW/WL → 1800/-700
ローテーション時間:0.5sec/rot
コリメーション:0.5mm スライス× 320row
被ばく低減:AIDR 3D(Mild)
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直腸 (Rb) 右側壁に限局的壁肥厚を認め(黄矢印)、直腸腫瘍が疑われる。3D CTangiography を用いたfusion image では腫瘍と血管の関係を明瞭に把握できる。特に下腸間膜動脈とその分枝ならびに下腸間膜静脈と、腫瘍との関係を把握することが可能であった。
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通常撮影(専用バルーンカテーテル挿入状態)
専用バルーンカテーテルを挿入した状態の通常撮影 から作成したair enema 表示では直腸腫瘍 (Rb) の評価は不可能である。冠状断像をみると腫瘍はバルーンにより圧排されている(黄矢印: 腫瘍/青矢印: バルーン)。
320 列ボリュームスキャン(専用バルーンカテーテル抜去)
専用カテーテル抜去後に撮影した320 列ボリュームスキャンでは、直腸腫瘍の存在部位と壁変形が明らかである。
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内視鏡と仮想内視鏡像の比較
通常撮影(専用バルーンカテーテル挿入状態)から作成した仮想内視鏡像は、air enema 表示と同様に、直腸腫瘍 (Rb) の評価は不可能である。
専用カテーテル抜去後に撮影した320 列ボリュームスキャンでは、内視鏡と同様の所見を得ることが可能であった。
内視鏡
通常撮影(専用バルーンカテーテル挿入)
320 列ボリュームスキャン (専用バルーンカテーテル抜去)