第41回日本磁気共鳴医学大会Report

2013.10.11

9月19~21日にアステイとくしまで開催された第41回日本磁気共鳴医学大会の参加レポートを北里大学病院放射線部の塚野 優先生にご執筆頂きました!

 
北里大学病院放射線部 塚野 優

アスティとくしま
はじめに

 第41回日本磁気共鳴医学会大会が2013年9月19?21日、徳島県のアスティとくしまで開催された(写真)。大会の先日には台風18号が全国各地に被害をもたらしていたが、当日からの3日間は素晴らしい秋晴れであり、天候にも恵まれた大会となった。会場は多くの聴衆が集まる多目的ホールを始めとして、とても綺麗な造りであった。また、ポスター展示場の周囲には椅子やテーブルが多く並べられており、休息や意見交換を行い易い環境という印象を受けた。大会長は徳島大学の原田雅史先生で、テーマが「MR2013 新たなBreakthroughへの挑戦」とされていた。内容もシンポジウムから一般演題まで、テーマの通り新しい撮像技術、撮像方法の発表が多くされていた。また新しい技術だけではなく、今日からの業務に取り入れられるような報告も多く行われていた。全ての内容に触れられた訳ではないが、私個人が感じたこと、興味深かったことについて報告する。

CEST imaging

 まずCEST imagingについてだが、シンポジウム、一般演題共に大変盛り上がっていた。CESTとはchemical exchange saturation transferの略で、ある化合物に飽和パルスを照射することで、化合物に組み込まれた特定の周波数を持つプロトンとバルク水(自由水)のプロトンとの間で交換が起こる現象と解釈している。CEST imagingとは、このプロトン交換によるバルク水の信号低下を介して、対象とする低濃度溶質を間接的に検出してマッピングすることが目的であるようだ。シンポジウム2「新しい画像技術と病態解析のBreakthrough」にて、九州大学の吉浦 敬先生は、CEST imagingには内因性のものと造影剤として投与する外因性のものがあるが、現時点では内因性、その中でも水の周波数から遠い位置にoffset周波数をもつアミド(-NH2)を対象としたamide proton transfer(APT) imagingが最も実用に近いとして注目されていると述べられていた。APT imagingの臨床応用として脳腫瘍に関するものが多く研究されており、中でも悪性神経膠腫の悪性度予測や放射線治療後の再発と放射線壊死の鑑別、脳虚血診断等への有用性が期待されるとのことであった。
 また中枢神経領域以外でも、少数ではあるが骨盤領域の腫瘍への応用が報告されているようで、本大会の一般演題でも九州大学 西江昭弘先生が「直腸癌におけるchemical exchange saturation transfer imagingを用いた腫瘍悪性度の評価」という演題で報告されていた。高分化型腺癌でのATP signalが高~中分化、また中~低分化型腺癌のsignalと比較して有意に低いという結果が得られ、悪性度診断の新たなbiomarkerとしての可能性を述べられており、このような非侵襲的な検査での診断が可能になれば患者への負担は大きく軽減する素晴らしい技術だと感じた。CEST imagingは悪性腫瘍でもAPTコントラストが数%と小さいこと、B0やB1不均一、動きの影響など課題は多い技術のようだが、他の画像、臨床的因子、病理学的所見等との比較を繰り返して有用性を確立し、新たなMRIの分子イメージングとして広まることを期待する。

圧縮センシング

 圧縮センシングは近年MRIへの応用が進んでいる情報技術である。この技術は、MRIのデータはスパース(疎)性があるという点と、k空間でのサンプリングの自由度が高い点を利用して、データ収集をアンダーサンプリング、また特殊な復元法を用いて画像再構成を行うと把握している。現在は、研究段階で主に高速撮像の点で大きな利点が得られているようだ。GE Healthcare社イブニングセミナーの「Fast imaging up to date」で聖隷浜松病院の増井孝之先生は、圧縮センシングは画像再構成と復元に膨大な時間がかかるが、技術が進歩して臨床機を用いても検査時間内で画像取得が可能になってきたと述べられていた。現在は非造影MRAでの活用で高速撮像が可能となっているようだ。MRAはMRI画像の中でもスパース性が高いことから圧縮センシングとの相性が良いと解釈する。
 画質に関する検討も一般演題で数演題行われていた。画質改善、特にスパース性の低いデータについては課題も多く発展途上のようだが、臨床応用に向けて確実に進歩している技術だと感じた。

 
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