低線量率長期被ばくについて考える
東京医療保健大学東が丘看護学部
伴 信彦
福島第一原発の事故に伴い、周辺住民に対する低線量率長期被ばくの影響が懸念されている。総線量が同じであれば、一般に線量率が低い方が影響の発生率は低くなることが知られており、このような線量率効果については、放射線の飛跡分布と標的体積に基づく理論が確立されている。放射線防護においては、この理論をベースにした線量・線量率効果係数(DDREF)によって、原爆被爆者の高線量率被ばくに対する発がんリスクの補正が行われている。しかし、現在の線量率効果に関する理論においては、個々の細胞は独立に振る舞うと仮定されており、細胞集団あるいは組織としてのダイナミクスが考慮されていない。低線量・低線量率の影響を疫学的に検出することは困難であるため、組織幹細胞の動態に関する生物学的知見を取り入れながら、より現実的な機構論を構築することが重要である。