浜通り地域での内部被ばくの現状─検査結果の意味するところとその限界

2012.12.19

浜通り地域での内部被ばくの現状─検査結果の意味するところとその限界
南相馬市立総合病院内科、相馬中央病院内科、東京大学医科学研究所
坪倉正治

 南相馬市立総合病院では2011年7月より住民を対象とした内部被ばく検査が開始され
た。2012年3月までの検査結果では、小児1,432人中、235人(16.4%)から、成人8,066人中、3,051人(37.8%)からセシウムが検出された(検出限界は2分の計測でセシウム134:210Bq/body、セシウム137:250Bq/bodyである)。預託実効線量は1人を除いて全員1mSv以下であり、チェルノブイリ原発事故数年後に検出されていた値を、南相馬市での現状の内部被ばく検査による被ばく線量は下回ることが示された。また、現在の日常生活での慢性被ばくは非常に低く抑えられていることも分かってきている。しかしながら、浜通りでも非流通の汚染された食品を継続的に摂取することで、比較的高度の内部汚染を認める住民も散見されている。チェルノブイリ原発事故後、汚染食品の継続的な摂取による内部被ばくが続き、年間の内部被ばく線量が事故後約10年後に最大になった地域も存在し注意が必要である。放射線被ばくの問題は個別対応が基本である。安易な安全論や危険論にだけ固執するのではなく、今後も食品検査の徹底を含めた継続的な検査が必要である。

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