日本メドトロニック、脊髄刺激療法における全身3.0テスラMRIに対応しクローズドループセンシング機能を搭載した充電式デバイス「Inceptiv™」の販売を開始

2023.12.07

 日本メドトロニック株式会社(本社:東京都港区)は、慢性の難治性疼痛を緩和することを目的とした充電式神経刺激システム「Inceptiv™(インセプティブ)」(以下、Inceptiv)を12月1日より発売した。従来品である「SureScan MRI(シュアスキャン エムアールアイ)リード」(以下、MRI対応リード)と併用することで、条件付き全身3.0テスラMRIの撮像が可能になった。また、先進的なクローズドループセンシング機能により、個々の患者さんに合わせて刺激強度を自動調整することで、最適化された刺激による治療を提供する。

 痛みには、けがなどにより生じる侵害受容性疼痛、何らの原因で神経が損傷し生じる神経障害性疼痛、心因性疼痛等があります。中でも慢性疼痛は、治癒に要すると予測される時間を超えて持続する痛みで、3カ月以上継続する、または繰り返している痛みを指す。日本国内においては有病率が全成人の22.5%との報告から、約2,300万人の患者さんがいると推計されている。

 慢性疼痛の治療法は、薬物療法、神経ブロック等の保存的治療と外科的治療がある。

 外科的治療法の一つに分類される脊髄刺激療法は、十分な鎮痛又は除痛効果が得られない難治性の慢性疼痛の疼痛緩和を目的として使用されるもので、国内においても1982年から保険適用されている。

 リードと呼ばれる細い電極を脊髄の硬膜外腔に留置し、体内に植え込まれた心臓ペースメーカのような神経刺激装置と接続し、脊髄に微弱な電気刺激を送ることで、痛みを緩和させる治療法である。慢性の腰痛に対しては、近年当社が提供する電気刺激の方法において、50%以上の疼痛緩和効果を得られた患者さんが84%、80%以上の疼痛緩和効果を得られた患者さんが69%というデータが示されている。

 一方、脊髄刺激システムから供給される電気刺激の量はリードと脊髄の距離によって変化する。慢性疼痛が緩和されて活動量が高くなると、日常動作によってその距離が変化し、電気刺激量(刺激強度)の増減を引き起こす。刺激強度が増加した場合、患者さんは刺激を不快と感じ、ご自身で本来治療に必要な刺激強度よりも低い強度に設定してしまうことがある。つまり、適切な電気刺激量に満たなくなり、本来得られるべき治療効果が十分に得られないという課題があった。

 また、従来製品は1.5テスラのMRI検査に限定され、医療現場において広く普及しつつある3.0テスラのMRI検査を受けることが出来なかった。

 Inceptivは、3.0テスラMRI検査を受けられる充電式デバイスであり、また、本品に搭載されたクローズドループセンシング機能により、電気刺激に反応して脊髄によって生じる生体反応をリアルタイムに計測し、計測した生体反応の変化に対して瞬時に電気刺激量を自動調整することができ、日常生活の動作と調和した治療の提供が可能となった。臨床研究では、約88%の患者さんが、従来の刺激法と比較して、クローズドループセンシングによる刺激法を好んだと報告されている。

 NTT東日本関東病院ペインクリニック科部長 安部洋一郎先生は、次のように述べている。

 「脊髄刺激療法で疼痛緩和が得られると、必然的に患者さんの活動量は増えます。本人が意識しないうちに日常生活の中で動きが活発になり、姿勢変化はもちろんのこと姿勢変化を伴わない首をひねる等の動作や生理反応により、脊髄内の刺激電極と神経が近づくことで不快な刺激を感じる場合があり、課題でありました。姿勢のみならず患者さんの生体で起こっているあらゆる変化を即座に感知し、不快な刺激を低減できることはさらなる患者QOL 向上のために必要不可欠です。クローズドループセンシング機能により、患者さんの状態に合わせた刺激の調整ができることは、これまでの課題を解決できるものと大きく期待しています。」

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