日本乳癌検診学会見聞記
秋田大学医学部放射線科
石山公一
検診受診率は無料クーポン券などの効果もあり徐々に上がってきたが、まだまだ厚生労働省が目標としている50%には届いていない。受診率向上についての方策は毎年議論され、今年も多くの発表があった。また、現在は新規導入あるいは更新されるマンモグラフィ機器のほぼすべてがデジタルとなっており、ソフトコピー診断、遠隔読影の流れが進みつつあることからこれらについての発表も目に付いた。モダリティについては、超音波検診の有効性を検証するRCTが現在進行中であり、将来的に超音波検診が導入される可能性を念頭にした発表もされていた。マンモグラフィ装置では3次元表示に関する新しい技術が紹介された。これらの中から印象に残ったものをいくつか取り上げて紹介したい。
初めに「MGソフトコピー診断の現状と精度管理」というワークショップについて記す。聖マリアンナ医科大学の中島康雄先生や国際医療福祉大学三田病院の奥田逸子先生より、デジタル化が進んでいる中での遠隔画像診断の必要性や問題点が提言され、「検診マンモグラフィ遠隔画像診断に関するガイドライン」が策定されたことが報告された。筆者にとって検診は地域単位で精度管理をしながら行われるものというイメージがあったので、マンモグラフィの遠隔診断といっても最初はあまりピンとこなかったのだが、世の中ではマンモグラフィの遠隔フィルムレス読影もどんどん普及しつつあるらしい。なるほど読影医師が足りない地域では遠隔読影に頼めば問題は解決するし、考えてみるとよい方法である。しかし、遠隔読影にもまだ色々な課題があることが分かった。DICOMタグの違いから画像がうまく表示されない事例があることや、自治体によりフォーマットがばらばらな読影所見用紙を統一する必要性があることなどである。聖路加国際病院の角田博子先生からは比較読影の重要性など具体的な読影方法や、診療放射線技師による読影スクリーナーを養成して医師のダブルチェックの代替を担ってもらう提言がなされた。金沢大学の川島博子先生からは5M以上の2面構成モニタが推奨されること、東北大学の斎政博先生からはモニタの精度管理の重要性と実際の方法について解説がなされた。
続いて2日目に行われたシンポジウム「実現可能で有効な乳癌検診システムとは?」について紹介する。四国中央病院の森本忠興先生からは四国4県の検診成績について報告がなされた。高知県や愛媛県では視触診の併用を行わずマンモグラフィの単独検診が行われているが、その成績は視触診併用のものと比べて全く遜色がないことが示された。マンモグラフィで指摘困難で視触診のみで見つかる乳癌も全くないわけではないが、視触診では癌発見率が少なく不要な精密検査が増えるという検診のHarm(害)がある。そのため、検診方式はマンモグラフィ単独を原則とし必要な場合は視触診の併用を認める方法に変えたほうがよいとの提言がなされた。名古屋医療センターの遠藤登喜子先生からはマンモグラフィと超音波の併用による乳癌検診の提案がなされた。超音波検診はマンモグラフィが苦手とするデンスブレストでの癌検出に優れることから、一律に年齢で区切るのではなく受診者個別の乳腺量によってマンモグラフィに超音波を併用する群を設定して行うのがよいのではないかというものである。現在、40歳代においてマンモグラフィに超音波を併用する有効性を調査するJ-STARTが日本で進行している。この結果次第では現在40歳代に行われているマンモグラフィと視触診の併用検診が、マンモグラフィと超音波の併用検診に置き換わる流れが一気に進む可能性があるものと思われた。
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