ITEM of the Year 2024~2024年はこの製品が来る!~ 小林智哉先生(東北大学大学院医学系研究科 画像診断学分野)

2024.04.05

第1位 ポケットエコーmiruco(日本シグマックス)

 超音波検査は、触診しながら患者と会話をして診断できる非常に有効なツールである。昨年も本企画でポータブル超音波診断装置を取り上げているが、訪問診療や病棟チェック、災害現場などでの利用が拡大している。本製品の価格は、深部用(3.5Mhz)で250,800円(税込)から、浅部用(10Mhz)で327,800円(税込)からと非常に安価である。約5秒で起動し、連続動作時間は約6時間と実用性に富んでいる。さらにAI(人工知能)を統合した画像診断のサポート機能は、さまざまな職種が超音波装置をポケットで持ち運び、素早く正確な判断を可能にするため医療現場の変革を促している。実際にmirucoを使用した医師や看護師は、その迅速性と携帯性が医療サービスの質を高めると証言しており、今後も広範な医療シーンでの活用が期待される。

第2位 EIRL(エルピクセル)

 AIの画像診断からは目が離せない。EIRLは、AIを活用した医療画像診断のクラウドサービスを提供し、高価な機器やシステムの導入コストを必要とせずに、月額2万円で利用可能である。特に小規模クリニックなど専門医が不在な施設では胸部CTや脳のMRIなどの診断支援を高速かつ精度高く行えるため医療格差の解消にも有用である。EIRLの技術は、脳動脈瘤の発見や胸部の結節検出において、微細な画像所見を検出可能であり(図)、その実用性が多くの医療機関で評価されている。

第3位 AeroDR TX m01(コニカミノルタジャパン)

 「AeroDR TX m01」はICU(集中治療室)、病棟、手術室などのベッドサイドでX線動画の撮影を行うことができる回診用X線撮影装置である。コニカミノルタ社初の動態撮影装置であり、従来の静止画像に加えて、パルスX線を毎秒約15回連続で照射することで最大20秒間の動画撮影を可能とし、患部の各構造物の動きを可視化する。また、「AeroDR TX m01」で撮影されたデータはX線動画解析ワークステーション「KINOSIS」を介してコニカミノルタ独自の処理を行うことで、様々な撮影情報の提供が可能になる。
 撮影パネルの設置角度と管球の照射角度、及び双方の相対距離をセンサー感知して数値として表示することで、撮影者の技量に依らない、撮影の再現性をサポートする。

第4位 光超音波イメージング装置「LME-01」(Luxonus(ルクソナス))

 株式会社Luxonusは、内閣府が主催する第6回日本医療研究開発大賞にて「スタートアップ奨励賞」を受賞し、活躍が期待されている。本製品は2022年にも同企画で取り上げているが、最大180mm×290mmの範囲を0.2ミリメートルの分解能で撮影し、手のひらであれば2分20秒ほどで3次元(3D)画像を得られる。血管の静止画だけではなく、血流の状態が分かる動画も撮影できる。また、がんの新生血管の評価やリンパ管の流れを画像化する研究も進められており、新たな画像評価のポテンシャルを有している。

第5位 AmiVoice Cloud Platform(アドバンスト・メディア)

 Amivoiceは、高性能な音声認識技術を有しており、読影レポート作成のツールとして活用されている。AmiVoice Cloud Platformは、音声認識技術を用いたAPIおよびSDKのクラウドプラットフォームである。このプラットフォームでは、音声をテキスト化する機能や音声入力機能、さらには音声感情分析機能を簡単にアプリケーションに組み込むことができる。音声データの正確なテキスト化は、診断支援システムの精度向上や医療データの効率的な管理・分析に寄与する。今後、生成AIを活用するための正確なテキストデータが医療AIの開発・発展に貢献する。

第6位 医療クラウドサービス(富士フイルムメディカル)

 富士フイルムの医療クラウドサービスは、医療画像データの管理と活用を革新するクラウドサービスである。このサービスは、セキュリティが強化された環境でのデータ保存、共有、アクセスを実現する。クラウドサービスと医療AIサービスの普及が進むなか、このプラットフォームは個人情報保護の枠組み内で、AIモデル作成のための医療画像データの活用を可能にし、医療AI開発を加速させる。さまざまな画像診断支援機能が利用できる「SAI viewer画像解析クラウド」、SYNAPSE VINCENT Cloudは災害医療での医療支援でも役立つ。

第7位 Kada-View(フォトロン)

 「Kada-View」は、アンギオ装置やIVUS、超音波、CT、MRIなどのDICOMデータを、表示するためのDICOM動画ビューワ。特に優れているのは操作性だ。当社独自のKadaインターフェースにより、直感的な操作を可能にしていて、評価が高い。
 また豊富なファイル変換機能により、発表用資料の作成も強力にサポートしている。
 BMP、JPEG、JPEG2000、TIFF、AVI、MPEG形式への変換もスムーズだ。
 さらにオプションの「Kada-Serve」には、ネットワーク上の端末でKada-Viewの画像が閲覧できる「Kada-View Web」が搭載されていて、院内端末のどこでも動画像を参照できるのも嬉しい。

第8位 SX-Pro Neo(シーマン)

 SX-Pro Neoは「鯖江メガネ」で有名な日本製眼鏡の聖地、福井県鯖江市で作られた完全国産のX線防護眼鏡である。
 本製品の最大な特長は、防護性能の高さだ。
 正面と側面・下面の各鉛当量が0.75mmPbの重装タイプの防護眼鏡であり、手元術野から反射したX線もしっかりと防護する。
 また、着用した際の密着度やフィット感、着け心地も考えられた設計で、ノーズパッドは体温で軟化して着用者の鼻に合うよう変形し、フロント部分の可動部の角度を変えることで、本品と頬の隙間を調節することが可能である。

第9位 LXプレミアム(日本電気硝子)

 非常に優れた放射線遮へい性能と可視光透過率をもつ鉛ガラスと、特殊カバーガラスを貼り合わせた放射線遮へい用ガラスだ。多層構造のため、水拭きに強く、衝撃安全性に優れているのも特長。ガラスの表面に薬品の飛散や水拭きなどによるくもり(ヤケ)が発生しないので、メンテナンスフリーといえる。
 LXプレミアムの最大寸法は、1,200×2,600mmと大きい。操作窓に大型サイズのLXプレミアムを使うことにより、視野が広がり、操作性の向上に役立つ。
 さらに衝撃安全性に優れ、ガラスが割れても飛散を防止する構造になっている。

第10位 DOSE(東陽テクニカ)

 DOSEは、線量管理を引っ張る、ヨーロッパで開発された線量管理システムだ。患者のための線量管理を標榜して開発されたもので、分析機能や撮影装置の品質管理機能も備え、医療現場の線量管理を支えている。DRLs2020ではモダリティ毎にDRLが定められているが、DLP[mGy.cm]、CTDI[mGy]、面積線量[dGy.cm2]、実投与量[MBq]といったような専門的な単位が使用されている。
 DOSEにはこれらの値を自動的に実効線量(ミリシーベルト)に変換する機能がある。シーベルトは一般的に耳にするものであり、単位を揃えることで複数のモダリティをまたいだ患者毎の累積線量を計算することができる。また、患者向けの説明用レポート機能もあり、被ばく相談対応時に使用したい文章や通知したい線量の情報などを決めて病院毎にカスタマイズすることができる。誰が説明しても患者が安心できる院内体制の構築をサポートする。