特定非営利活動法人大阪先端画像医学研究機構、低被ばくCTセミナーを開催

2012.02.03


富山憲幸氏
村上卓道氏
Special Report!

低被ばくCTセミナー

日時:2012年1月7日(土)
場所:ブリーゼプラザ
主催:特定非営利活動法人 大阪先端画像医学研究機構

 特定非営利活動法人 大阪先端画像医学研究機構は1月7日、ブリーゼプラザ小ホール(大阪府大阪市)にて「低被ばくCTセミナー」を開催した。
 開会に先立ち、中村仁信氏(医療法人友紘会彩都友紘会病院)が「最近では東日本大震災で起きた原発事故による被ばく問題に絡めてCT検査の被ばくが大きく取り上げられている。CT検査の被ばくの影響は人体に問題がなく、さらに機器の進歩に伴い被ばく線量は減っているということをご理解いただく機会にして欲しい」と述べた。
 本会は、4部構成となっており、第1部・第2部は富山憲幸氏(大阪大学)が、第3部・第4部は村上卓道氏(近畿大学)が座長を務めた。
 低線量被ばくの安全性を説いた中村氏の基調講演を始め、近年主流となっている逐次近似画像再構成法(Iterative Reco-nstruction)をテーマとした教育講演や、「IRIS/SAFIRE」「AIDR/AIDR3D」「iDose4」「ASiR」といった逐次近似画像再構成法の応用で低被ばく線量を実現している代表的な各社製品の使用経験についても講演が行われた。また、100%のRawデータを使用して逐次近似再構成を行い画像を得るGE社製「Veo」を取り上げた特別講演も行われ、高い注目を集めていた。
 閉会の挨拶では村上氏が、「逐次近似は、今後ルーチンとして搭載されていくべきだ。今後も放射線医学の研究とレベル向上に努力していきたい」と述べ、200人近い来場者を集めて盛況だった会を終えた。




中村仁信氏
第1部 基調講演

医療における低線量被ばく
医療法人友紘会 彩都友紘会病院
中村仁信氏

 医療における低線量被ばく、特にCTによりがんのリスクは増大するのかという問いに対しては、様々な意見がある。ICRPは被ばくが50mSvを超えるとリスクがあるとしているが、5mSv、10mSvという意見もある。CTによる被ばくと原爆による被ばくを同じに捉えることに私は多いに疑問がある。原爆による被ばくというのは瞬時の全身に対する被ばくであり、CTによる被ばくは局所の被ばくである。多くの動物実験などから全身照射に比べて部分照射では発がんのしきい値が10倍程度高いという論文もある。
  では、CTの被ばくによるリスクを考えるために、他の被ばくによる発がんリスクと比較してみたい。
 昔使われていたトロトラストによる部分被ばくで生じる肝臓がん、1900年代初頭、医師や診療放射線技師に多発した皮膚がん、ダイヤルペインター(ラジウム入り蛍光塗料を時計文字盤に塗る女工)に発生した骨肉腫、いずれのがんの発生にもしきい値がある。また、放射線治療後の二次発がんでは、Araiらの報告–子宮頸がん11,855例の検討によると、照射野内(50Gy以上照射された臓器)で、直腸がん、膀胱がん、子宮がん、白血病が誘発されたが、10年以降で頻度は1%以下に減少し、照射野外(数Gy被ばくした臓器)では、有意の発生は見られなかった。さらに乳がん放射線治療後の二次発がんでは、15~19Gyを超えると増加するが、明らかなしきい値がある。このように、局所的な放射線
被ばくによる発がんにはしきい値があり、それは高線量であるといえる。
 次に、全身被ばくによる発がんでは、1900年代前半、アメリカ放射線科医の白血病死亡率は他科の約10倍であった。原爆の白血病を見てみると原爆後5年で急増した。しかし200mSv以下では有意の増加は見られないまた、甲状腺がんは10年程度、乳がん、肺がんは15年程度、胃がん、大腸がんは20年程度経ってから、原爆で被爆していない人たちに比べて増加した。これら原爆被爆者の高齢化により増加した固形がんは、生活習慣や加齢によるリスク増加など複合的な影響の可能性があり、しきい値が明らかにならない。つまり、発がんリスクは放射線被ばくだけによるものとは考えられない。
 またICRPでは、100mSv以下は発がんリスクは不明であり、微量の放射線による発がんリスクを直線しきい値なし(LNT)モデルに基づいて多くの人数に適用し、発がんやがん死亡等を論ずることは妥当ではないとしている。




佐藤和彦氏
第2部 教育講演

各社の新再構成法を正しく理解する
大阪大学医学部附属病院 医療技術部 放射線部門
佐藤和彦氏

 CT画像再構成法にはフィルタ補正逆投影法(filtered back projection:FBP)および逐次近似画像再構成法(iterative reconstruction:IR)がある。従来はFBP法が主流であったが、最近ではアーチファクトや画像ノイズ除去のためにIR法が用いられるようになってきた。FBP法が秒単位の計算時間で処理を行うのに対してIR法は数十分の時間を要する。また、FBP法はアーチファクトが出やすくIR法はアーチファクト低減効果が高い。加えて、FBP法は低線量撮影のノイズに対して弱いがIR法は非常に強いという特徴がある。今後、低被ばく化のためにIR法を応用した画像再構成法あるいは完全なIR法が普及していくものと考えられる。
 そこで今回、各社のIR法を応用した画像再構成法について比較した。AIDR 3D(東芝・Aquilion ONE)、ASiRおよびCViR(GE・Discovery CT750 HD)、iDose4(フィリップス・Brilliance iCT)、SAFIRE(シーメンス・Definition AS)であり、それぞれ生データ領域、画像データ領域で施される処理が異なっている。IR画像は現在統一された評価法がないため、ノイズ測定(SD)、コントラスト測定(CNR)、高コントラスト分解能の視覚評価、の3つの方法で評価した。
 ノイズ測定は、均一な水ファントム内に設けた5か所のROIのCT値のばらつきによって評価した。SD(standard deviation:CT値のばらつき)が小さいほどノイズが少ないといえる。コントラスト測 定は、低コントラスト信号を埋め込んだファントム内で信号と背景にROIを設け、CT値の差を背景のSDで割ることにより得られるCNR(contrast noise ratio)の値によって比較した。CNRが高いとコントラストが良く、信 号が見えやすいといえる。例えば、背景がSD10のレベルで、信号のCT値差が10のときにはCNRは1、背景が10でCT値差が20のときには2となる。高コントラスト分解能については、IR応用画像再構成によって劣化がみられるか、チャートを視覚評価した。ファントムは、ノイズ測定、低コントラスト測 定 、高コントラスト測 定のための各モデュールが組み込まれた当院のCatphanファントムを用 いた。
 評価方法として、現状では横軸にmA(管電流)、縦軸にSDをとり、mAとSDの関係をみることが多いが、異なる装置間では、線質、付加フィルタなど、さまざまな要因によって同じmAでも被ばく量が異なるため、今回はmAではなく「共通言語」であるCTDIvolという線量指標を用いて比較した。これは、患者の被ばく線量を評価する指標ではなくファントムのデータを用いて出された値であり、どの装置も撮影後にレポートとして表示されるのでその値を用いた。
 頭部の撮影プロトコルは、スライス厚を各機種5mmとし、関数は各社推奨の関数、あるいは使用施設での標準の関数とし、管電流を10mAから500mAまで変化させてデータを収集。体幹部についても同様の方法で行った。実際の画像を見ると、SDの評価では、FBP画像のざらつき感がIR応用再構成画像では改善されていた。またCNR の評価でも、FBP画像よりIR応用再構成画像で信号がより明瞭に描出されていた。
 頭部のヘリカルスキャンにおけるFBPの比較では、低線量域においては、検出器の素材、管球-検出器間距離、DAS(データ収集システム)、X線実効エネルギー、画像再構成アルゴリズム、実効スライス厚などによりSD5あるいはCNR2を得るのに必要な線量は各装置間に大きなばらつきがあった。FBPとIR応用処理を施した結果を比較すると、各装置とも率は異なるものの線量低減が達成されており、IR応用処理によりいずれも40mGy以下に収まる値で所定の画質を得ることができている。したがって、IR応用処理によって少ない線量で一定レベルの画質が得られるという効果があることがわかる。体幹部のデータについても、SD10を得るのに必要な線量、CNR2を得るのに必要な線量は、IR応用処理によって同様に低減されている。高コントラストチャートの変化については、各装置ともIR応用処理において劣化はなく、臨床で用いるレベルでは各装置とも大きな変化は及ぼさないということがわかった。
 ここで、完全なIR処理を行うVeo(GE)について簡単に紹介する。従来のFBPは、焦点、ボクセル、検出器を点として仮定した計算方式で、それによって非常に高速な計算を行うことができたが、仮定のポイントなので実際の画像に比べ少しゆがみが生じる。これに対して、統計学的なノイズを考慮した処理による改善を加えたものがIR応用法で、完全なるIR法はさらに、焦点、ボクセル、検出器を一定の面積を持った有限サイズのものとして計算する方式で、計算時間は長くなるものの本来の画像を表現できるようになった。すなわち、線量変化に対するノイズの変化がかなり抑えられることから、超低線量領域において非常に強いシステムであるということができる。
 以上、同一の画質を得るためには装置間で線量の違いがみられた。FBPにおいては、ある装置間で2倍以上の線量差があったのでパーセント低減率のみでの表現では誤解を招く恐れがあるとした。しかしながら、IR法を応用した画像処理により被ばく線量が大きく低減でき、CT検査における被ばく線量のばらつきは収束方向に向かい、どの施設でも一定のレベルの画質が得られるようになることが期待できると考える。なお今回は、ボケ、のっぺり感、違和感などさまざまな表現がなされるIR応用画像そのものの評価には言及していない。その物理評価は今後の検討課題である。



白神伸之氏
第3部 新しい被ばく低減画像再構成法の使用経験

「IRIS/SAFIRE」使用経験
東邦大学医療センター大森病院放射線科
白神伸之氏

 シーメンスの画像再構成、IRISとSAFIREについて述べる。
 IRISはイメージデータ領域内だけでIRを行う、逐次近似を応用した再構成である。そのためRawデータを用いる逐次近似再構成よりも短時間で処理が可能であり、通常目にする画像に近い画像が得られる。ただし、Rawデータを用いる逐次近似再構成よりもアーチファクト低減効果は少ない。IRISはノイズ低減効果に優れているが、見かけ上エッジ効果がやや低下するため、濃度差の大きいものについて適応である。CTA、肺野については低線量撮影、高画質化ともに効果が高い。腹部臓器についてはあまり線量を下げない方が良いが、低電圧撮影を加えるとより効果が高いと思われる。3D再構成でなめらかな再構成画像を得られる。
 当院では現在、Definition FlashとDefinition AS+では全例SAFIREを使用している。SAFIREは、Rawデータ上でまず逐次近似を行って、その画像上でさらに逐次近似を行うという独立した逐次近似を行っている。差分して出たアーチファクト部分をサブトラクションし、イメージ上で逐次近似を行ってノイズをなくしている。SAFIREではレベルがStrength 1~5まであり、Strengthを1上げるごとにSDが5%程度ずつ減るが、少々めりはりに欠ける画像になっていく。
 IRISとSAFIREはDual Energyにも使用できる。例えば胃癌の症例で、80kVと140kVで撮影した画像があり、80kVの画像で造影剤を強調してもなめらかな画像が得られて、腫瘍の部分の濃染効果がよく分かる。
 なお、痩せた患者では太った患者よりも画像が見えにくく見落としの危険もある。読影の際、WWをWL変えるなど工夫することで画像が見やすくなる。




大野良治氏
「AIDR/AIDR3」使用経験
神戸大学大学院 医学研究科 内科系講座放射線医学分野 機能・画像診断
大野良治氏

 東芝の画像再構成法、AIDRとAIDR 3Dの使用経験について述べる。
 IRではノイズの低減、アーチファクトの低減、低線量撮影、空間分解能維持というメリットを得ることができるが、再構成時間が膨大となる問題がある。東芝の逐次再構成AIDRでは再構成時間を短縮したが、充分な画質が得られなかった。そこで逐次近似を応用した再構成AIDR 3Dが開発され、短い画像再構成時間でアーチファクト低減、低線量撮影、高分解能維持を実現し臨床に使用できるようになった。
 AIDR3DではStatistical modelとScanner modelでCTシステムや撮影条件ごとに異なる複数種のノイズを考慮して収集した投影データ上でノイズやアーチファクトを除去し、その後にAnatomical modelを用いてノイズ低減した画像を作成する。SDの低減は平均50%、最大で75%低減可能と言われている。
 臨床画像を見ても、胸部で50mAsの画像と25mAsでAIDR3Dを使用した画像を比較すると、25mAsの画像でも充分に150mAsの画像の代用として診断可能であり、ほぼ同等の画質を有していると言える。しかし、胸部では、間質影を見るには50mAs程度が限界かもしれないが、診断精度を加味して考えれば、25mAsでも可能かもしれない。腹部においても、AIDR3Dを使用し75mAsで撮影した肝転移の症例において病巣をきちんと描出しており、アーチファクトも抑えている。Perfusionなど多層撮影をする際に、被ばく低減の技術は重要になると考える。
 AIDRおよびAIDR3Dは胸腹部におけるCT検査の被ばく低減に有用であるだけでなく、通常線量の画質改善にも応用可能であるので、今後様々な場面で臨床応用していくことが必要だと考えられる。



小山靖史氏
「iDose4」使用経験

桜橋渡辺病院 心臓血管センター 循環器科/画像診断科/放射線科
小山靖史氏

 当院では、2009年にフィリップスのBrilliance iCT(256列)を導入し、2011年4月4日にiDose4が導入された。CT検査は250~300件/月、実施している。
 心臓CTは、造影なしの場合や、石灰化スコアや内臓脂肪、血液検査などを使ってメタボリックシンドローム等の診断や、症状の有る患者への冠動脈狭窄の有無、プラークの判定、機能判定などの際に行っている。
 iDose4では、RawデータにIRを行い、ノイズモデルに対しても再度IRという2本立てで画像が作成される。iDose4では、補正の度合いをLevel 1~7まで選ぶことができる。
 検査ごとにiDose4が使用できるかどうかを確認した。石灰化スコアや内臓脂肪は経年的に患者を診るため、従来のエビデンスを利用したい。そこで、ボリュームが1になるように撮影して比較することになるが、iDose4のLV5~7を使って撮影をすれば従来のデータを使って比較できそうだということがわかった。線量は従来の1mSvが、0.2~0.4mSvと
なる。
 さらに冠動脈評価とステント評価について、空間分解能を上げてステントなどを見たい場合に使用するCDというフィルターがあるが、ノイズ成分も一緒に高くなって使えなかった。そこでiDose4を使うと通常はざらつく画像もLV7を使うことでステントも描出できるようになった。
 形態評価だけをするならiDose4とLow kVの撮影が適している。実際に撮影した画像では、内腔の評価だけであれば0.4mSv、0.9mSvといった低線量で、さらに造影剤は24mL程度と非常に少量で撮影が可能であった。
 また、iDose4使用時でも64列CTよりも高速な画像再構成で、心臓CT検査を円滑に行うことが可能である。




梁川雅弘氏
「ASiR」使用経験

大阪大学大学院 医学系研究科 放射線医学講座
梁川雅弘氏

 GEのDiscovery CT750HDでは、素早いデータ処理が可能となっている。ただし画像のクオリティは向上するが、画像ノイズは50%増加する。このノイズを低減するために開発されたのが逐次近似法を応用した画像再構成法ASiRである。
 ASiRは、Rawデータを用いた再構成技術であり、CT値や空間分解能を損なわずノイズのみをReductionすることができる。そのため従来と同等の線量で高画質の画像を得ることができ、低線量で従来と同等のノイズの画像を得ることができる。またASiRは従来のFBP法に様々な程度(0~100%)を加えることが可能である。
 伸展固定肺を用いた画質評価を行った結果、通常線量(160mAs)ではASiRの%を上げるほど画質は向上し、超低線量(4mAs)ではASiRの%を上げるほどノイズの低減に有利だが、末梢構造物の検出には違和感があるという結果が得られた。
 さらに、臨床画像での適正ASiR%と線量低減率について検討した。結果、ASiRを用いることで40mAsの低線量画像でも診断能に影響を与えない画質を保つことが可能であった。日本人の体格であれば、胸腹部CTにおける適正ASiR率は30~40%程度、線量低減率は30~50%程度である。
 また、ASiRの胸部領域における臨床応用では、びまん性肺疾患や心臓CTAにおける報告があり、ASiRの使用はノイズを有意に低減させることで画質向上に役立つ。
 最後にASiRがコンピュータにどういった影響を与えるかについて、CADを使用して検討した。ASiRを加えれば加えるほど検出感度が向上し、人間の視覚的にもコンピュータの検出感度的にもASiRは好影響を与えるという可能性が示唆された。
 新たな検出器素材(Gemstone)による画質向上においてCT技術は進歩し、新たな画像再構成法の一つであるASiRにより、分解能向上による被ばくやノイズ増加への対応が可能となったと言える。




本多 修氏
第4部 特別講演

一般レントゲンレベルの被ばく線量CT撮影を実現したVeo

大阪大学大学院 医学系研究科 放射線医学講座
本多 修氏

 GEの逐次近似再構成Veoについて、ASiR、FBPと比較しながら解説する。
 観測画像から数学的に繰り返し計算を行って修復画像を作成し、元画像に近づけるというのが逐次近似の考え方である。FBPでは点と線で構成されていてノイズはないという仮定で画像を作るが、ASiRはノイズを考慮してそれを減らすような画像再構成を行う。Veoはさらに現実的に立体的なものとノイズを考慮して画像を作成している。
 Lungファントムを使い、FBP、ASiR 10%~100%、Veoの画像でノイズと空気のCTを測定し比較した。4mAs(10mA×0.4s/r)においては、FBPではノイズが多く、ASiRで減らすことができ、Veoではさらに減らすことができた。空気のCT値もFBPでは高く、Veoでは-1000に近づけることができた。低線量CTではVeoで再構成するのが望ましいと思われる。
 続いて10mAs(10mA×1s/r)で同様に撮影すると、X線量が先ほどより増えるため 、全体的にアーチファクトが減った。Veoでは4mAs(10mA×0.4s/r)の際とノイズとCT値にあまり差がないことが分かった。10mAs(10mA×1s/r)と10mAs(20mA×0.5s/r)を比較すると、同じ10mAでのVeoの再構成においてノイズは管球回転時間にあまり影響を受けないが、モーションアーチファクトを考えれば、管球の回転時間を短縮すべきと考えられた。
 今度は管電流を変えて実験した。FBPでは線量を上げるにつれノイズが大きく減る、ASiRはFBPよりもノイズが低い、Veoは線量を上げてもあまり大きな変化がない。高線量より低線量で、Veoのノイズ減少効果が強いと言える。
 次は伸展固定肺での実験結果。80mAs(200mA、0.4s/r)で撮影。FBPはノイズ13.0、Veoはノイズ1.0で、Veoでアーチファクトは改善されている。8mAs(20mA、0.4s/r)の撮影でも、ノイズはFBPよりもASiR、さらにVeoと減っていく。
 しかし、Veoの4mAs(10mA×0.4s/r)とFBPの80mAs(200mA×0.4s/r)を比較するとノイズはVeoで3.6、FBPで13.0とFBPの高線量でノイズが高いが、画質としては人によってFBPの方が見やすいと感じるだろう。ただノイズを下げさえすれば良いということではないのである。
 さて、X線単純撮影における医療被ばくガイドライン2006や放射線医学総合研究所ホームページを参考にすると、胸部(正面+側面)は1.1mGy、実効線量は0.24mSv程度となる。以下のような3回の撮影を行った。1回目はAuto mA・noise index10(通常臨床での線量)、2回目の撮影は50mA、さらに10mAに落として3回目を撮影。実効線量(mSv)はEDLP×DLPで求める。通常では11mSv、50mA一定では1.1mSv程度、10mAでは0.22mSv程度で、胸の正面側面を単純X線で撮影したのと同程度の被ばく線量になる。高線量で撮るとFBPとVeoの画質の差はあまり分からないが、低線量になればなるほど違いが分かる。
 RSNAでは近年放射線量低減が定番のセッションになりつつあるが、RSNA2011ではVeoに関する演題が韓国と日本から1演題ずつ発表されていた。三重大学はVeoによる胸部CT:ASiRとの比較について発表。低線量CTにおけるノイズ・画質はFBP・ASiRよりもVeoが良い、ノイズ・画質を損なうことなく70%の線量低減が可能、という報告がなされていた。
 Veoの特徴をまとめると、ノイズ低減に優れる、密度分解能がとても高い、空間分解能が高い、被ばく量を低減できる(一般撮影レベルの被曝線量まで下げられる可能性もある)、画像再構成関数(bone、standardなど)が不要というメリットがある。反面、再構成時間が長い、機械室が必要、現行はNon-high resolution modeのみ可能といった課題もある。

会場風景