第31回超音波ドプラ研究会が3月10日、東京慈恵会医科大学1号館階講堂(東京都港区)にて開催された。今回は中田典生氏(東京慈恵会医科大学放射線医学講座)が当番幹事を務め、腹部を中心とした超音波診断の最新情報等について発表が行われた。
まずシンポジウム「ポータブル超音波の臨床応用」では中田氏が「キーノートスピーチ:ポータブル超音波の近未来を考える」と題して講演。同氏が平成23年4月から約11ヶ月間院内でポータブル超音波診断装置にて検査を行った82例を分析し、POC(point of care:超音波室の外、患者の元で検査を行うこと)超音波が必要な場合に、ポータブル超音波診断装置が有用であったことを述べた。
パネルディスカッション「マルチモダリティによるフュージョンイメージング超音波診断」では、日立アロカメディカル(株)、GEヘルスケア・ジャパン(株)、東芝メディカルシステムズ(株)より各社のフュージョンイメージング技術の紹介が行われた。続いて沼田和司氏(横浜市立大学附属市民総合医療センター・消化器病センター)が「EOB MRI肝細胞相もしくは造影CTとUSのFusion画像の臨床応用」と題して発表し、US画像をCTやMRI画像とフュージョンすることで、USの長所を引き出すことができ有用だと述べた。今井康晴氏(東京医科大学消化器内科)は「Raal-time Virtual Sonographyにおける位置合わせの工夫」について発表。日立アロカメディカル(株)のRVSは他社のフュージョン技術と異なり断面による位置合わせが必要であること、その合わせ方の工夫を紹介し、RVSが今後さらに改善されることを期待すると述べた。
特別講演では、鍛 利幸氏(京都大学医学部乳腺外科)が「乳腺における光超音波について」の題で講演を行った。氏は、組織内ヘモグロビン濃度や酸素飽和度を画像化でき、分子イメージングを描出できる光超音波を用いた光超音波マンモグラフィ(PAM)を用いて、京都大学で行われた26例の乳癌および乳腺腫瘍への検査結果を示した。PAMでは20病変で腫瘍の同定が可能で、MRIの所見や病理結果と比較可能であったという。また腫瘍組織内酸素飽和度が、乳癌の個別化や治療効果判定に役立つ可能性があるという。機能的画像としての利点を持つ光超音波イメージングは、超音波画像との融合で今後有用な画像診断方法となり得るもので、化学療法の早期判定への応用、抗体を用いた分子イメージング等への発展が期待されるという。
本会の主な発表内容は、「Rad Fan」2012年12月号(11月末刊行予定)にて掲載予定である。