第8回椎体形成術研究会のレポートを、赤嶺智教先生(長野赤十字病院第1麻酔科)よりお送り頂きました!
長野赤十字病院第1麻酔科
赤嶺智教
はじめに
平成24年8月25日に例年と同じ会場(メルパルク京都)で開催された第8回椎体形成術研究会について報告する。
今年も例年に違わず、一般演題13演題中、脳神経外科4演題、麻酔科4演題、整形外科3演題、放射線科2演題、特別講演が1演題という内容で、本研究会の幅の広さを感じた。また、発表内容も各施設で症例が集積されたことにより、椎体骨折を一括りにしたものではなく、不安定性や高度扁平化のある椎体に対する椎体形成術(PVP)の効果といった、より詳細な検討、討議がなされた。会終了後の個別の意見交換会では、研究会で一定の椎体骨折の分類を示し、それに沿って各施設の治療の評価を行い発表、集積していくべきではないかとの意見が多数出た。将来的には本研究会発の分類が誕生するかもしれない。
1. 遅発性神経麻痺に対してのPVPと観血的治療の併用
遅発性神経麻痺に対して、PVPと観血的治療を併用した報告が3施設からあった。PVPの充填物にはハイドロキシアパタイトブロック(HAブロック)、polymethylmethacrylate (PMMA)、HAブロックとリン酸カルシウム骨セメント(CPC)を併用したものと多彩であった。また、併用した観血的治療では、後方固定術2施設、椎弓切除術1施設であった。椎体骨折後の遅発性神経麻痺の治療の困難さを感じる一方で、遅発性運動麻痺に対してPVP単独の治療による良好な成績の報告もある。遅発性神経麻痺の発生率が低いため、今後とも多施設から症例を提示集積し、個々の症例に応じた最適な治療が提供できるようにしていく必要性を感じた。
2. 高度に扁平化したクレフトが存在する椎体に対するPVPの有用性
毎年、BKPでも行ったかのような綺麗なPMMA充填のPVP術後の画像を提示される聖路加国際病院放射線科からは、高度に扁平化しクレフトが存在する椎体に対してPVPが有効であった症例が小林信雄先生から報告された。高度圧壊椎体に関しては、針留置が困難であるとの理由で相対禁忌としているガイドラインもある。今回も、わずかなクレフト部にPMMAが必要十分に充填された術後X線像を提示されていた。適切な椎体穿刺、PMMA注入を行うには、術前CTがMRI以上にクレフト同定には有用であるとした。 PVPと一口に言っても、PMMAの充填量、椎体内分布などの拘りの違いが大きいため、今後はPVPの中でも細分化し、治療効果を検証する必要性を感じた。質疑では、最近1年半の同院でのPVP施行症例の後ろ向き検討では、クレフトを伴う高度圧壊椎体が30椎体あり、9割で十分な効果を認めたと答えておられた。また、報告症例で画像上の骨折椎体と痛みの部位が大きく乖離していることへの答えとして、PVP施行椎体の決定に難渋することは多々あるとし、本症例では画像所見に基づいた施行により、結果的に症状が改善したとした。
3. 骨折予防を目的とした骨粗鬆症治療戦略
一般演題を挟み、国立病院機構徳島病院整形外科・リハビリテーション科の髙田信二郎先生が「骨折予防を目的とした骨粗鬆症治療戦略」と題して、特別講演を行った。講演内容は、骨粗鬆症の疫学から、病理像、薬物治療、治癒過程、さらにはリハビリテーションにまでおよび、実に幅広く、示唆に富んだ内容であった。特に、リハビリテーションでは、徳島と言えば阿波踊りということで、多様な病態に対応した阿波踊りバージョンのリハビリDVDを作成されておられた。
4. 各科による課題演題
新しい試みとして、当番世話人の和歌山県立医科大学脳神経外科の西岡和哉先生の提案で、各科(放射線科、麻酔科、整形外科、脳神経外科)による課題演題が報告された。
放射線科を代表して、関西医科大学放射線科の米虫 敦先生は、透視下手技における医療スタッフの被曝防護について、わかりやすい資料(国内外の放射線防護関連資料、福島第一原発関連資料)を用いて、実務に即した術者被曝の防護について述べられた。特に、被曝を実感するために、福島第一原発作業現場の線量を示し比較されたことには、会場から多くの感銘の声があった。質疑では、個々の透視装置による線量などの違いはあるが、被曝防護を考えた遮蔽板や術者位置といったセッティングの重要性を強調されていた。また、個人被曝をデジタル線量計によりリアルタイムに近い状態で知ることが、被曝防護のモチベーションの向上や維持に大切であると述べられた。
麻酔科ペインクリニックを代表して、NTT東日本関東病院ペインクリニック科の安部洋一郎先生は、ペインクリニック科における痛みの評価、治療方針について述べられた。特に、椎体の痛みに関しては、その発生場所や要因に基づいて、ペインクリニック科の特徴である診断的治療手段となる各種神経ブロックについて、説明されていた。また、適時適切な治療効果の再評価が重要であると強調されていた。
※続きは「Rad Fan」2012年 10月号(2012年9月末発売)にてご覧下さい。