2012年9月8日~9日、鹿児島で開催された第4回PACS Innovation研究会の参加報告を、向井まさみ先生にご執筆いただきました!
第4回PACS Innovation研究会見聞記
(独)放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター 医療情報室
向井まさみ
医用画像データ管理システム(PACS)が医療情報システムの1つとして一般的なものとなって10年以上が経過した。当初は、Archiving and Communicationの名前通り、多種多様な検査機器の画像が1つのサーバに集約・格納され、同じViewingシステムで参照可能であることで、画像データの可用性向上等十分なメリットを生み出した。数度の診療報酬改定の影響もあり、画像データのデジタル化が進んだ2012年の現在ではフィルムレスの運用も珍しいことではなくなっている。この間、PACSのユーザである医療機関は数度のシステム更新を経験し、増大する画像データの運用管理に課題をかかえる一方、モバイル、無線LAN等の基盤インフラが整い、タブレットデバイスの登場がPACSとどのように関係していくのか(関係させていくのか)、実際にどれほどのことができているのか、実際の診療現場で利用可能なものなのか、評価はどうなのか、さらに2011年3月に発生した東日本大震災から得た教訓でBCP(business continuity plan)の確立なども話題になるようになった。このようなタイミングで、報告者は「鹿児島で“PACS Innovation研究会”という会が5名の診療放射線技師の方を世話人として開催されている。参加して最新の情報を収集してきなさい」と上司からの命令を大喜びで受けて、この第4回PACS Innovation研究会へ参加させていただくこととなった。研究会の会場は鹿児島市内から車で30分ほど離れた場所にある錦江高原ホテル。主催者の手配による専用シャトルバスで会場に到着した際には、企業展示の準備真っ最中で、これからはじまる研究会への期待が倍増したことはいうまでもない。
1日目のプログラム概要
初日は、ヴイエムウェア株式会社の「仮想化とは?~仮想化の基本と提案~」、トレンドマイクロ株式会社の「仮想環境におけるセキュリティ課題と対策の考え方」の講演からはじまった。仮想化技術の考え方、サーバの仮想化、仮想デスクトップ、セキュリティ対策を含めた最新のsolution、それぞれの導入のメリットついて、的確な説明がされた。特に印象的だったのは、仮想サーバの導入にあたっては、まずはきちんと現行の物理サーバの利用状況を含めたアセスメントを実施し、コストメリットが出るよう配置計画をたてることが重要であると明確に言われたこと、それが実現できた場合は高可用性のほか、省電力も期待できるとの点であった。従来、ネットワークシステムが部門ごとにバラバラに導入・敷設されていて混乱していたものが、仮想ネットワークのような技術が出現し、施設の基盤インフラとして導入・運用されるようになったのと同様に、サーバ機能も仮想化技術を利用して、基盤インフラとして提供・運用される時代がやってきたことを実感した。システムを運用する側としては、なにか問題が発生した際の切り分けが、どのくらいリーズナブルに実施できるか等新しい課題を抱えることにもなろう。今後は運用事例や導入経験などの情報を含めた報告を期待したい。
第Ⅱ部では、「スマートデバイスシステム提案『タブレットとアプリケーションの進化』」と題して、10社からタブレットをキーワードに、昨年第2回PACS Innovation研究会からのUPDATEや初参加の企業の製品の説明やデモンストレーションが発表された。この1年の間に提供されるスマートデバイス上で稼働するアプリケーションは確かに進歩していた。特に、モバイル環境のみを前提に稼働しているソフトウェアだったものがローカルデバイスに画像データをDOWNLOADする機能を付加してネットワーク環境が不安定な状態でも画像参照を可能にする仕組みの提案や、今後の開発予定としてMIP/MPR、3D表示など表示機能の充実、デバイス間で同じ画像データを参照しリモート環境でのカンファレンスを実現する仕組みなどの発表が興味深かった。今後、ユーザとメーカで一緒に検討・整理していかなければならないのは、これらのスマートデバイスをどのような場面で、どのように利用するかという点かもしれない。提供される技術の方が進んでしまい、運用側がそれに十分に対応できていない印象を持った。
※続きは「Rad Fan2012年11月号」(2012年10月末発売)にてご覧下さい。