胸部単純撮影は放射線科医にとって基本中の基本の画像診断だが、その件数の多さ故に日常診療の大きな負担の一つになっている。読影能力の向上にかなりの経験を求められること、肺尖部や肺門、心陰影や横隔膜陰影との重なり部など、見落としがちな死角の存在も若い医師の悩みの一因になっており、CADへの期待が大きい領域である。
毎年撮影するような経過観察時の病変検出において、経時的差分画像の有用性は明らかだが、初回の検査ではこの手法は使えない。撮影機種に依存するDual-energy subtraction(DE差分画像)は以前の勤務先で経験がありその威力は実感していたが、機器の更新で使えなくなって大変残念に思った記憶がある。ところが、最近になってDE差分画像に匹敵する、後処理で同等の処理ができるソフトウェアが開発されたとのこと。今回の発表ではその有用性を示されていた。経験の浅い医師の結節影の指摘に関する感度を随分改善していること、熟練医でも問題となる疲労時の見落としを改善している点がROC解析で示され印象的だった。また、結節影候補の自動抽出機能は以前と比べかなり改善されているとのことだった。ソフトウェア差分の限界のデータも一部示されてはいたが、撮影機種依存性がないシステムの特性は好ましく、人手不足に悩む医 療機関で導入を検討されるべきテクノロジーであると感じた。