東芝メディカルシステムズ(株)は、「Global Standard CT Symposium 2013」を8月10日、ANAインターコンチネンタルホテル東京(東京都港区)にて開催した。
開会にあたり、綱川氏は「日本におけるCTによる医療被ばくを一気に半減したい。Aquilionシリーズ全ての現行販売機種に搭載されたAIDR 3Dなど、当社の低被ばく技術にこれからも期待して欲しい」と挨拶をした。
続いて、風間正博氏(同社CT開発部)による講演「Aquilion ONE ViSION Editionの開発」ではViSION Editionのスペックの解説や、新たなアプリケーションが紹介された。金属アーチファクト低減処理のための「Single Energy Metal Artifact Reduction(SEMAR)」、肺や骨などのSubtraction Technology、そして生データベースDual EnergyがViSION Editionから搭載される新アプリケーションである。
シンポジウム前半では「Technology of Area Detector CT」というテーマの下、座長に原田雅史氏(徳島大学大学院)を迎え、講演が行われた。
神山久信氏(神戸大学大学院)による「胸部領域におけるAIDR 3Dを用いた被ばく低減」では、AIDR 3Dの登場により胸部領域における被ばくの低減と画質の維持/向上が両立可能となっている同院の臨床データを発表。また、「定性評価のみならず機能画像などの定量評価にもAIDR 3Dは有用であり、今後エビデンスの確立とそれに応じた被ばく低減が必要だ」と語った。
山城恒雄氏(琉球大学)による「Aquilion ONEを用いた胸部CT共同研究:‘ACTIve Study’の挑戦」では、同製品を最初期に導入した7施設による共同研究の紹介について講演。ADCTのStep and shoot法であるWide Volume Scanではヘリカル法と比べアーチファクトの抑制につながり、肺野内の構造物の描出性能も劣らない。また、AIDR 3Dによる画質の改善効果は低線量の場合ほど顕著である、といった研究内容が紹介された。
立神史稔氏(広島大学)は「Dual Energy技術の現状と今後の可能性」を講演。画像ベースと生データベースの2つのDual Energy画像解析法について、ファントムにより検証したデータを紹介しながら解説した。「生データベースではよりアーチファクトを軽減、ビームハードニング効果も低減が可能。また、より正確な電子密度画像の作成は線量分布図の作成など、今後臨床応用が期待される」と語った。
久野博文氏(国立がん研究センター東病院)による「頭頸部領域におけるAquilion ONE」では、ADCTによるSubtractionと「SEMAR」について講演。「骨Subtraction画像を頭頸部癌や下歯肉癌などに活用することで、これまで困難であった骨髄腔や骨周辺組織への腫瘍浸潤が評価可能となる。外科治療の術式選択における画像情報として有用である」と語った。SEMARによる金属アーチファクトの低減については、「画質を低下させることなく、ある程度まで低減できる。MRI禁忌の患者さんには必須のアプリケーションとなる可能性もある」と述べた。さらに「頭頸部はADCTによる160mm Volume Scanの利点を最大限活用することができるため、さらなる臨床応用が期待される」と同製品への期待を見せた。
後半のテーマ「Clinical of Aquilion ONE ViSION Edition」では座長に片田和広氏(藤田保健衛生大学)を迎え、4つの講演が行われた。
樋渡昭雄氏(九州大学病院)による「頭部領域の臨床応用」では「CT Perfusionデータに基づく脳血管CTAにおける動静脈分離の至適撮影タイミングの検討」を発表。動脈の造影剤到達を正確に捉えることで、至適撮影タイミングを決定できると発表した。
稲本陽子氏(藤田保健衛生大学)による「嚥下領域の臨床応用」では、ADCTにより嚥下運動の動的生体計測(定量)が実現し、嚥下障害メカニズム理解が促進したと発表。「基礎的/臨床的データベースの構築によって、さらに研究が進んでいくことを期待する」と語った。
宇都宮大輔氏(熊本大学大学院)は「循環器領域の臨床応用」について講演。臨床のメリットとして、「本製品の音声ROIを併用した高速Scanにより安定して高画質な心臓CTを得ることができる。また、日本人の半数程度は100kVPで撮影が可能であり、状態に応じて適切なScanを選択することで被ばく低減に繋がる」と発表した。
新槇 剛氏(静岡県立がんセンター)による「IVR領域の臨床応用(IVR-ADCT)」では、「ADCTでは4列CTと比較して造影剤や被ばく線量の低減が可能である。また、Volume ScanとHelical Scanを比較した場合、Volume Scanの方が被ばく線量は低い」と同院の検討結果を発表。さらに、「ADCTは心血管領域や脳神経領域のみならず、腹部領域においても有用である。今後はIVR-ADCTによるリアルタイムな穿刺ガイドなど、さらなる臨床応用が期待される」と語った。