8月31日、メルパルク京都で開催された第9回椎体形成術研究会の参加レポートを医仁会武田総合病院の横山邦生先生にご執筆いただきました!
第9回椎体形成術研究会報告
医仁会武田総合病院脳神経外科 横山邦生
はじめに
平成25年8月31日にメルパルク京都で開催された椎体形成術研究会について報告する。
小生の本研究会への参加は2009年より5回目となった。2011年にBalloonを用いた椎体形成術が保険収載されたこともありBalloon Kyphoplastyに関する演題が年々増加傾向にある。その一方で、2009年にNew England journal of medicineに掲載されたRandomized studyの報告で椎体骨折に対する椎体形成術で得られる除痛効果は骨セメントを注入しないプラセボ治療と差は無いと結論付けられたのを踏まえ、骨セメントを使用しない椎体骨穿孔術等の有用性も注目されるようになり、骨セメントの使用に関する妥当性についての見直しが求められるようになった。疼痛性椎体圧迫骨折に対する外科治療法は多岐にわたり放射線科、整形外科、麻酔科、脳外科を含む多部門の専門医が各々の施設の治療法についてざっくばらんに意見交換ができる印象を受けた。
1.Percutaneous vertebroplasty(PVP)とBalloon Kyphoplasty(BKP)
従来のPVPはballoonを使用せず椎体内に穿刺を行い粘度の低い骨セメントを高圧下に注入してきたのに対し、BKPはballoonを拡張したことで得られるスペースに骨セメントを低圧下に注入する為、PVPに比べ椎体高を復元するのみでなく骨セメントの椎体外への漏出やそれに伴う術後の隣接椎体の新規骨折も予防できるというのがBKPの狙いである。我々もBKPを2011年より導入し、その治療成績をPVPと比較して本研究会で発表した。本来セメント治療の対象となる症例は偽関節を伴う不安定性症例であり、それらの症例は体位により罹患椎体高は変化する。椎体高の復元効果という点においては従来のPVPでも手術の際にとられる体位(腹臥位)のみでBalloonを使用しなくとも椎体高は充分に復元される為Balloon使用による椎体高復元効果はそれほどないものと考えている。一方、安全面においてBKPの利点として骨セメントの過剰な拡散を予防できることにある。骨セメントの注入はBalloon拡張により形成された腔に制限されるため、骨セメントの椎体外への漏出を防ぐことができる。骨セメントの漏出は術後の隣接椎体の新規骨折の危険因子とされており、実際我々の施設でも、BKPを導入してから術後の新規骨折の頻度は著明に減少した。安全面においては確かにBKPに軍配が上がるのではないかと考える。
しかしながら従来、高齢者に発症しやすい骨粗鬆症性椎体骨折に対するセメント治療の利点はその低侵襲性に求められる。PVPは確かに局所麻酔下に13Gの穿刺針を挿入し骨セメントを注入するという非常にシンプルに15分程度で終了できる手技であるため、80代から90代の高齢者にもさほどの負担なく施行できる。一方、BKPはPVPよりも径の太い穿刺針を使用し、手術手技もPVPより煩雑で時間を要するため局所麻酔での施行は困難である。全身合併疾患を有する高齢者症例においてBKPは断念せざるを得ない場合も多い。故に今後症例に応じてPVP及びBKPの選択的適応を検討していく必要がある。
続きは「RadFan」11月号(2013年10月末日発売)にてご高覧ください。