9月19~21日にアステイとくしまで開催された第41回日本磁気共鳴医学大会の参加レポートを栗原市栗原中央病院放射線科 吉田 礼先生にご執筆頂きました!
栗原市栗原中央病院放射線科 吉田 礼
第41回日本磁気共鳴医学会大会が9/19(木)~9/21(土)に徳島県徳島市「アスティとくしま」で開催された。
会期中は、大会開催の前週に発生した台風18号による荒天から一転、カラッとした秋晴れに恵まれた。初日から多くの方々が大会に参加され、さっそく会場が熱気に包まれていた。
大会の内容は、大まかに特別講演・ワークショップ・教育講演・シンポジウム・一般研究発表と分かれるが、その中でいくつかトピックスがあったので紹介する。
特別講演「MRIを用いたt-PA静注療法」
特別講演として川崎医科大学の木村和美先生による「MRIを用いたt-PA静注療法」が行われた。t-PA(アルテプラーゼ)は周知のとおり超急性期脳梗塞治療に有効な薬剤として使用されているが、主な内容として、FLAIRで異常信号がない(FLAIR-negative)症例の患者にt-PAを使用した場合には、症候性出血など大きな問題は起こっていない、さらに発症時間不明の脳梗塞に対しFLAIRで無信号の場合は、発症3時間以内と看做してt-PA治療できる可能性について言及があった。発症後4.5時間のDWI-positive症例のうちFLAIRで91%がnegativeであり、T2*WIで小出血がある場合は出血性梗塞、異所性出血のリスクが明らかに増えるという報告がされた。
「磁化率強調画像」
また、本大会では位相画像情報を用いた「磁化率強調画像」についての発表・講演も多かった。磁化率強調画像としてSWIがすでに実用化されているが、特定の組織がある程度一定の位相値を示すことを利用しその組織のコントラストを強調する「PADRE」や、として、脳の循環代謝の重要なパラメーターである酸素摂取率(OEF)を求めるためにSWIではなく定量的磁化率画像(QSM)を用いてOEFマップを作成する「酸素代謝イメージング」により、結果、PET-OEFと良好な相関が認められることが報告された。MRIで今まで絶対値表示することにより直接利用しなかった位相画像情報が今後注目されるであろう。
「Compressed sensing(圧縮センシング)」
また現在、高速化技術として注目されている「Compressed sensing(圧縮センシング)」であるが、国内でも、臨床画像を使用した発表が行われるようになった。また、その開発者であるMichael Lustigが直接講演を行った。圧縮センシングとは、「適当な変換のもとで『疎』(まばら)な構造を持つ対象はランダムに間引き収集したデータから再生可能である」という性質を利用して、少数の収集データから像再生を行う技術であり、k空間でのランダム収集が可能なMRIは、その良い適用となっているとのことである。特に、対象とする血管系が実空間でまばらな構造を持つMRAの再生画像は良好で、早期の臨床装置への実装が望まれている。
「Small FOV」
撮影技術分野では、通常と異なる選択励起によるSmall FOV撮影の報告があった。空間分解能の向上、折り返しアーチファクトが発生しない、位相エンコード数を減らすことが可能なために撮影時間の短縮やブラーリングの減少などいろいろな利点を有するため、今後の評価が楽しみである。
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