「いかに長く生きるか」から「いかに健やかに老いるか」へ
国立大学法人弘前大学とGEヘルスケア・ジャパン(株)(以下、同社)は、アルツハイマー病を中心とする脳疾患の予兆発見および予防法創出のための仕組み構築に向けた共同研究契約を締結し、このほど調印に至った。
この共同研究は、文部科学省と独立行政法人科学技術振興機構が主導する全国12拠点でのセンターオブイノベーション(COI)プログラム*1の一拠点として採択された「脳科学研究とビッグデータ解析の融合による画期的な疾患予兆発見の仕組み構築と予防法の開発」プロジェクト*2に同社が参画するもので、両者は共同で脳疾患予兆法の開発に挑む。同プロジェクトは、マルマンコンピュータサービス(株)の工藤寿彦常務がプロジェクトマネージャーを務めており、同社はマルマンコンピュータサービス(株)や他の参画機関、青森県と共に、弘前大学のイノベーション創出活動を推進していく。
超高齢社会を迎えた日本では、高齢者の健康増進および医療費の削減が社会的課題となっている。青森県は日本で最も多くの医療課題を抱えた地域のひとつとして、「青森ライフイノベーション戦略」のもと、医療・健康・福祉産業分野を、次世代経済けん引のための重要な産業の柱として育成するとともに、健康で豊かな県民の生活実現を目指すプロジェクトに取り組んできた。そのような中、弘前大学は認知症などの脳疾患をターゲットとし、青森県の「短命県返上」をキーワードに、「日本全国または世界の人々の健康寿命延長」を見据え、10年後の平均寿命の飛躍的延伸を目指すイノベーションに取り組んでいる。一方、超高齢社会における医療課題の解決を目指すヘルシーマジネーション戦略*3を2009年より推進しているGEヘルスケア・ジャパンは、2012年より青森県と共同で、青森県東通村等を拠点に、国内初となる、多機能小型車両を活用した保健・医療・福祉包括ケアの提供に向けた「ヘルスプロモーションカーモデル実証プロジェクト」を推進している。このような中、ヘルシーマジネーション戦略を具現化する重要な位置づけである超高齢社会の課題解決への取り組みとして、弘前大学との共同研究契約および弊社社員の出向契約が締結される運びとなった。
同プロジェクトでは、弘前大学が行ってきた「岩木健康増進プロジェクト*4」による過去9年にわたるコホート研究データ(延べ10,000名、健康情報360項目)に、本年の住民検診から得たデータ(約1,200件、600項目)が加えられたビッグデータの解析を同社が担い、認知症を中心とする脳疾患の予兆を発見するためのアルゴリズム・ソフトウェア開発を行う。これまでに、住民の生活データ、健康データ、医療データ、ゲノムデータを組み合わせた、ここまで多岐にわたり、しかも長期間に及ぶデータは世界にも類を見ないもので、認知症研究への可能性が大いに期待されている。弘前大学、青森県および同社は、急激な高齢化が進む中、「いかに長く生きるか」から「いかに健やかに老いるか」への考え方のシフトによる、高齢者の活力ある生活のための社会づくりを、課題先進国としての日本が率先して取り組むべき課題の一つととらえ、疾患の早期発見・早期介入の実現をめざす。
共同研究の概要
1.テーマ: 「脳科学研究とビッグデータ解析の融合による画期的な疾患予兆発見の仕組みと構築予防法の開発」
2.ゴール: 予兆発見アルゴリズムの開発により、脳疾患の予兆把握、未病状態での早期介入による「リスク回避型予防医療」の実現を目指す
3.期間: 2014年6月より2016年3月末
*1: COIプログラム: 『10年後、どのように「人が変わる」のか、「社会が変わる」のか、その目指すべき社会像を見据えたビジョン主導型の研究開発プログラム』であり、既存の概念を打破し、これまでにない革新的なイノベーションを創出するイノベーションプラットフォームを我が国に整備することを目的とするもの。http://www.jst.go.jp/pr/announce/20131030/index.html
*2: COIプログラムにて採択された12の本拠点の一つ。日本が超高齢化社会を迎え、医療費増大が社会的問題となる中、「疾患後のニーズに応じた高度医療」から「リスク回避型医療」へ転換して健康寿命延伸を実現するため、強固な産官学連携体制の下、青森県住民のコホート研究による膨大な健康情報を新たに開発するソフトウェアで解析し、画期的な脳疾患予兆法を開発する。参画機関は、マルマンコンピュータサービス株式会社(株)、弘前大学、GEヘルスケア・ジャパン(株)、東北化学薬品(株)、(株)クラーロ、青森県、弘前市、青森県産業技術センター。
*3 GEのヘルシーマジネーション戦略:世界が直面する深刻な医療問題の真の解決を目指して、2009年5月にGEが策定したヘルスケアに関する戦略。イノベーションで環境課題の克服を図る「エコマジネーション」(2005年5月導入)に続く中核戦略で、2015年までに60億ドルを投じて、100種類のイノベーションを実現し、15%の医療コストの削減、15%の医療アクセスの拡大、ならびに15%の医療の質向上を実現することを目指している。詳細はwww.healthymagination.comを参照。
*4「岩木健康増進プロジェクト」は弘前大学、弘前市(旧岩木町)、青森県総合健診センター等の連携の下、弘前市岩木地区住民の生活習慣病予防と健康の維持・増進、寿命の延長を目指して企画された。2005年に始まり、以後10年間にわたる健康調査・推進活動は、青森県で初めての大規模なプロジェクトとなっている。
青森県とGEグループとの協働事業について
青森県は、平均寿命が男女共に最下位の短命県であり、高齢化率は既に27%、2040年には40%を超えると見られている。また、医療サービスが十分に届かない地域も多い。課題先進県の「青森県」だからこそ、それを克服する知恵や独自の技術は今後、日本全国、世界に展開することができると考え、青森県はGEグループとの協働事業に取り組んでいる。
●お問い合わせ
弘前大学COI研究推進機構
機構戦略支援室村下
TEL:0172-39-5530
URL:http://coi.hirosaki-u.ac.jp/
青森県商工労働部新産業創造課
医療・健康福祉産業創出グループ境谷
TEL:017-734-9420
GEヘルスケア・ジャパン株式会社
コミュニケーション本部松井/ブランチャード
TEL: 0120-202-021
URL:http://www3.gehealthcare.co.jp/