静岡ファルマバレーセンターは2014年8月26日、JPタワー(東京都千代田区)にて、静岡ファルマバレープロジェクトの最新の成果と新拠点整備について説明会を開催した。
同プロジェクトは静岡県が推進しており、静岡県東部を中心に医療・健康産業の振興と集積を図ることが目的で静岡がんセンターを核とした産業クラスターを形成し、地域の活性化を目的としている。
第1部のプロジェクトの成果発表では、久永隆治氏(富士フイルムメディカル(株))が、「『SYNAPSE Case Match』は、独自の人工知能技術を用いて画像診断をサポートする類似症例検索システムで、画像診断における課題であった検査機器の高性能化と普及によるや「検査画像数の増加」による診断医の「画像検査量の増加」に対して、画像情報を再活用し、医師の思考を助けるシステム。これまで肺がんの診断において実用化されていたが、静岡がんセンターのデータを活用することにより、肝臓がんの分野でも同システムの使用が可能となった」と語った。同システムについて、共同開発を行った遠藤正浩氏(静岡がんセンター画像診断科)がその有用性について「同システムは画像診断医にとって重要な、『イメージと知識のマッチング』を行う上で非常に重要である。今後肺がん、肝臓がんだけでなく、より対象疾患を増やしていきたい」と述べた。
さらに、臨床医の立場から伊藤貴明氏(同センター肝胆膵外科)がシステムを試用してみた上で「同システムは、専門医が過去の類似画像を確認できるだけでなく、非専門医にとっても直感的(視覚的)に類似症例を参照できる。」また、「研修医にとっても多くの症例に触れることができ、同システムへの期待が膨らむ」と話した。
第2部では、楠原正俊氏(同センター研究所地域資源研究部部長)が同センターが取り組む最先端の遺伝子研究「プロジェクトHOPE」について、これまでの解析結果と今後の目標を述べた。同氏は「『HOPE』は、がんの性質を、遺伝子解析やRNA解析、蛋白質解析、代謝物解析などを統合したマルチオミクス解析によって明らかにしようとするもの」と説明し、これまでの解析結果について報告を行った。今後の「HOPE」の目標として、「『がんの特性解明による個別化医療の推進、未病医学の実践、それにまつわる研究開発』を掲げ、同センターが中心となって今後もプロジェクトを推進する」と述べた。
第3部では、赤池義明氏(テルモ(株)上席執行役員)からファルマバレープロジェクトの新拠点整備について、同社の事業を支える「生体計測関連商品や輸液ポンプ関連商品、システムME商品を研究開発するMEセンターをファルマバレーに移転する」との発表がなされた。同氏は、「共同研究や人材育成から地域に貢献していきたい」と展望を述べた。