ウェスタン・オンタリオ大学の神経科学者たち、実験で患者の経験を解読 16年間植物状態の患者がヒッチコック映画に反応を示す!

2014.09.26
MRIスキャンを待つ研究の参加者
同じ映画を見ている健常者と植物状態の患者の脳の動き
カナダ・オンタリオ州にあるウェスタン・オンタリオ大学(University of Western Ontario)の脳神経科学の研究者たちは、画期的な脳スキャン技術を使って、植物状態の患者がヒッチコックの映画に健常者と同じような脳の動きを示すことを明らかにした。このカナダ人患者は16年間全く何の反応も示さなかったのが、今回の研究によって、実際に意識があり映画の筋書きを追うことができるということが分かったと発表した。この研究結果は9月15日付の学会誌「米国科学アカデミー紀要(The Proceedings of the National Academy of the USA)」に発表された。
同大学の機能代謝写像センター(Centre for Functional and Metabolic Mapping)で行われた同研究は、12人の健常者と脳損傷で身体的な反応がない植物状態の患者2人に、3T(テスラー)高磁場MRI内部でサスペンス映画の巨匠、アフレッド・ヒッチコックの『ヒッチコック劇場』(Alfred Hitchcock Presents)から短く編集したものを見てもらい、それぞれの脳活動を観察・分析した。
映画を見た参加者たちは脳の同期活動に共通パターンを示した。長年反応を示さなかった患者の脳の動きも、同じ映画を見ている間、健常者の参加者と非常に似たものになった。これは、同患者は実際に意識があったということだけではなく、映画を理解していたと考えられる。同研究は、人間には共通の神経コードがあることを示唆し、その神経コードを使って身体的な反応を伴わない意識的経験の解読が可能であることを意味する。
「意識レベルが不明の患者が健常者と同じように、置かれた環境から情報をモニターし、分析することができるということを私たちは初めて示したのです。このような患者の5人に1人は意識がないという誤った診断がなされていることは既に知っていますが、この新しい診断技術によって誤診された人がさらに多くいることが明らかになるでしょう」と同大学の脳神経研究所(Brain and Mind Institute)に所属する研究リーダーのロリナ・ナシ(Lorina Naci)博士は語っている。
「この手法は、患者の意識の有無を検知するだけでなく、患者が何を考えているのかを見抜くことも可能です。この発見は患者のケアや生活の質において、実用的かつ倫理的な観点から重要な意味を持っています」と同研究のメンバーであるエードリアン・オーウェン(Adrian Owen)博士は説明している。
研究者たちは、この斬新な手法が意識不明と誤診される可能性のある身体的な反応がない患者のさらなる理解と、彼らの生活を改善に役に立つことを期待している。

・研究のデモンストレーションおよび研究者のインタビュー動画(英語)
http://www.youtube.com/watch?v=KAJobk1lFPs
・「米国科学アカデミー紀要」に発表された同研究の概要(英語)
http://www.pnas.org/content/early/2014/09/11/1407007111

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