歯科技工領域のワークフローを変える CAD/CAMシステム「Dental Wings」「WorkNC Dental」 ~データ・デザイン~

2015.01.22

歯科技工領域のワークフローを変える
CAD/CAMシステム「Dental Wings」「WorkNC Dental」
~データ・デザイン~

 
 

株式会社データ・デザイン
セールスユニット ヘルスケアG
瓜生博伺氏
 株式会社データ・デザインは、これまで工業分野を中心にCAD(computer aided design) およびCAM(computer aided manufacturing)のソリューションを提供し、さまざまな加工現場のデジタル化を支援してきた。近年では、歯科技工分野において従来手作業で行われてきた歯冠(銀歯などの被せもの)やインプラント(人工歯根)などの補綴物の加工へのCAD/CAMシステムの導入を支援している。
 今回は、歯型の3Dスキャンを行い仕上りの歯冠や歯根をデザインする「Dental Wings」およびそのデザインに基づいて加工機への実行命令を作成するための「WorkNC Dental」という2種類のソフトウエアの特長や性能と、それを支える「HP ZBook Mobile Workstation」の強み、また、医療分野をはじめ幅広い用途と可能性を持つ非接触ハンディタイプの「Artec 3Dカラースキャナ」について、同社セールスユニットヘルスケアGの瓜生博伺氏にお話を伺った。
 
 

■目的・アプローチ
・「WorkNC Dental」および「Artec 3D」の高度な計算処理を
ストレスなく実行できるハードウェアとして
、HP ZBook Mobile Workstationを採用

■システムの効果

・ハイスペックなワークステーションを用いることにより、
CAMシステムの処理時間を大幅に低減
・抜群の安定性により、歯科技工業務を遅滞なく推進

■ビジネスへの効果
・歯科技工所のワークフローを劇的に変化させ、効率化をはかれる
・デジタル技術の導入により、歯科技工士の労働環境が改善され、
若手や女性も働きやすい場を提供できる

図1 WorkNC Dental
さまざまな素材に対応し、加工機の能力を最大限に生かす
加工用プログラミング作成を支援するCAMシステム「WorkNC Dental」

 ここ10年ほどで、歯科医療においてデジタル化の波が押し寄せており、補綴物を3Dデジタルで設計し、加工機を用いて最終仕上げの一歩手前まで加工する「デジタルデンティストリー」という概念が生み出された。データ・デザイン社が提供する「Dental Wings」は、最大5軸までの駆動軸を用いて歯型の石膏をラインレーザーにより3Dスキャンし、そのデータを元にさまざまな補綴物を簡便かつ短時間にデザインすることを支援するCADシステムである。
 また、「WorkNC Dental」は、CADシステムでデザインされた補綴物の加工プロセスに進める際の詳細な加工プログラムを作成し、加工機に実行命令をするためのCAMシステムである。WorkNC Dentalでもオープンシステムが採用されており、加工機の性能に合わせてアプリケーションが最適化され、ユーザが使用する切削バーの形状・太さ・長さ、加工する補綴物のサイズ・素材などに応じてカスタマイズされたテンプレートが作成された状態でユーザの手元に納入されるのが同社の提供するサービスの特長だ。さらに、歯科技工士の資格を持つスタッフが導入時のトレーニングおよび保守を担当するため、ユーザからの信頼感も厚い。
 WorkNC Dentalでは、デザインされた補綴物の形状を、どのような切削バーを使って、どのくらいの回転速度で、どういうルートをたどって切削していくかなどについて高度な計算を実行し、プログラムを作成するアプリケーションであり、ここでHP社のモバイルワークステーションが活躍している(図1)
 瓜生氏によれば、一連のデジタルデンティストリーのワークフローの中で加工機の性能を最大限に引き出すための加工プログラムの作成が非常に重要であり、そこでCAMソフトによる高度な計算が必要とされるがゆえに高性能のコンピュータが求められるのだという。
 CAD/CAMシステムが確立されたことにより、2014年4月の歯科診療報酬改定において小臼歯へのCAD/CAM冠が保険適応となった。従来は金属冠のみが保険診療の対象であったが、CAD/CAMシステムを使うことでジルコニアなどの白い素材で補綴物を作製することが可能となった。ジルコニアは手作業では切削することができない硬い素材で、加工機とCAD/CAMシステムの進歩により加工が可能になったものである。これは、なるべく体内に金属を留置しないメタルフリーの考え方とも一致する。

デジタルデンティストリーの普及により生み出された
歯科技工士という職業の新たな魅力

 同社の「Dental Wings」や「WorkNCDental」などのサービスの主な顧客は歯科技工所である。一般的に、歯科医院で型をとった補綴物の作製は歯科技工所に委託されることが多い。これまではまさに職人技をもった歯科技工士が歯科技工所を運営していたが、デジタルデンティストリーの普及によりワークフローが大きく変化し、歯科技工士の働き方も変わりつつある。
 「分業も進みつつあるので、たとえばスキャナとCADシステムを用いて補綴物のデザインを行うことに特化した歯科技工所やCADデータを受け取ってCAMシステムにより加工プログラムを作成して実際の加工を行うことに特化した歯科技工所がますます増加する可能性があります。歯科医師と比べると歯科技工士の数は不足していると言われています。かつては厳しい労働環境から若い歯科技工士が数年で離職してしまうことが大きな問題となっていましたが、デジタル化による新しいワークフローを知り、歯科技工士という職業に新たな魅力を感じて、戻ってきてもらいたいという思いもあります。労働環境の改善から、女性にも働きやすい職場を実現できると思います」(瓜生氏)。
 

図2 HP ZBook 15 Mobile Workstation
(15インチモデル)
ワークフローの大きな変化とストレスフリーなデータ処理が
高い顧客満足を生み出す

 デジタルデンティストリーにおいてワークフローの大きな変化を支えているのが、複雑な計算処理を高速で行うワークステーションの存在だろう。データ・デザイン社では顧客のCAD/CAMシステム導入にあたり、「コンピュータも高性能のものを選んでください」と勧めているという。同社で採用しているワークステーションはHP ZBook 15 Mobile workstation。使いやすさから主に15インチモデルを顧客に推奨している。「低スペックのPCを使用した場合、処理時間が長くなり、作業効率に大きく影響します。また、複雑な処理の場合、途中で止まってしまうこともあります。歯科技工所の限られた設置スペースや機動性などの観点からノート型ワークステーションをお勧めしています。ノート型ということで処理能力を心配される方もいらっしゃいますが、使用されるとパフォーマンスの良さを実感していただけます。今のところワークステーションのシステムトラブルは発生していません」と瓜生氏のHP Workstationへの信頼は厚い(図2)
 顧客サポートにおいては、同社では、リモートで画面共有しながら、サポートを提供することがあるが、ワークステーションはリモートで接続した場合も動作パフォーマンスに問題がないのでスムーズにサポートできる。HP Workstationは、厳しい米軍の調達基準(MIL規格)をクリアしている。瓜生氏によれば、歯科技工所は一般的に粉塵が多い環境だ。HP Workstation にはそのような過酷な環境でも十分使用可能な安心感がある。
 加えて、HP社のユーザ向けサポートは電話オペレーターが日本人であり、実機が置かれた環境で技術スタッフがまず対応するという面での安心感もあるだろう。データ・デザイン社が提供するサービスおよびソフトウエアと、それを動かすワークステーションの相互作用により高い顧客満足が生み出されている。
図3 Artec 3Dカラースキャナと
HP Z820 Workstation
簡単に素早く3Dスキャンが可能な
非接触ハンディタイプの「Artec 3Dカラースキャナ」

 また同社では、歯科技工領域のソリューションだけでなく、医療分野をはじめ幅広い用途と可能性を持つ非接触ハンディタイプの3Dカラースキャナ「Artec 3Dカラースキャナ」の販売および導入トレーニングも行っている。Artecは被写体にマーカーを貼付する必要がなく、簡単なボタン操作で3Dスキャンを実施し、形状データと色情報を取得することが可能である。ユーザの用途は幅広く、工業デザインや介護機器・装具向けの計測、メディアコンテンツ用のコンピュータ・グラフィックス、建造物のデジタルアーカイブなどさまざまな領域で活用されている。
 Artecによりスキャニングされたデータはリアルタイムでモニタ上に表示される。取得した3Dデータおよび色情報をもとに、付属のデータ処理ソフトArtec Studioでノイズ除去、自動位置合わせ、スムージング、自動穴埋め処理などを実施し、色情報との統合処理をして対象物の3Dデータが生成される。撮影は簡単に行えるが、三次元データを構築するための処理時間がかかると待ち時間が長くなる。そのため高性能なワークステーションが必要となる(図3)
 医療分野では、すでに人体・臓器模型の製作、欠損部の再建、装具の製作など多方面でArtecが利用されているが、今後さらに幅広い領域で活用されるようになるだろう。
 「歯科領域では、日本にも口腔内3Dスキャナが導入されると、現在のように石膏の模型を作る必要がなくなる可能性があります。そうなると、さらにワークフローが変わりますし、エコにもつながります。そして3Dデータを快適に処理するためのワークステーションの必要性も高まりますし、一度は離職した歯科技工士の方でも以前とは違った関わり方で復職できるチャンスが広がると思います。私も歯科技工士の一人として、歯科技工士が働きやすい環境を構築できるようなサービスを提供していきたいと考えています」と瓜生氏は話す。
 HP Workstationに支えられ、知識・技術・経験を伴った歯科技工士のスタッフを中心としたデータ・デザイン社にしかできないきめ細かなサービスは、今後歯科技工領域にとどまらず多方面に展開していく。