02……藤田保健衛生大学病院
GCA-9300Rが
脳血流シンチの新たなステージを拓く
2013年9月、核医学診断用検出器回転型SPECT装置として、デジタルガンマカメラGCA-9300Rが東芝メディカルシステムズ株式会社から発売された。
この高画質・短時間検査の両立を可能にする3検出器型SPECT装置を導入した藤田保健衛生大学病院の生の声をお届けする。
■専用機GCA-9300Rならではのポイント
脳血流シンチに最適なファンビームコリメータ。感度と分解能を同時に向上
高画質な検査結果を提供するうえでは、使用するトレーサーに適したコリメータを選択することが重要である。コリメータについては、一般的には分解能が高ければより高精細な画像が得られる一方で、感度が低下するため撮影時間が長くなってしまう。同病院ではGCA-9300R導入に際して、高分解能はそのままに、感度を向上させることができるファンビームコリメータを採用した。「ファンビームコリメータは、その特殊な形状ゆえに、有効視野は少し狭く、遍在性の疾患の検査にはあまり適さないが、脳のように3検出器の軌道の中心に位置するような局所臓器の検査には適している」と石黒氏は言う。GCA-9300Rに用意されているファンビームコリメータは、高分解能タイプと超高分解能タイプの2種類があるが、同病院では現在脳血流シンチにはトレーサーとして123I製剤を用いており、それに合わせて高分解能のコリメータを採用している。今後は99mTc製剤を用いた検査も予定しており、その場合には超高分解能のファンビームコリメータを採用するという。
最新の画像処理による定量性の向上と、高分解能画像が与える臨床へのインパクト
体内から放出される放射線が検出器に到達するまでの減弱、散乱といった問題は、定量的な解析を行う際に大きな問題となる。昨今、核医学ではさまざまな補正技術が実装されてきている一方で、その特性や副作用として生じるアーチファクトについても理解して使用することが重要となる。「目的に応じて画像補正の選択・方法は異なると思いますが、減弱補正、コリメータ開口補正などを適宜用いながら読影しやすい画像を提供できるようにしていきたい」と石黒氏は話す。
GCA-9300Rと同じく2013年9月に発表され新たな脳疾患診断薬として話題となった放射性医薬品「ダットスキャンR静注」も年明け以降供給が始まった。同病院でも実臨床開始に向け、GCA-9300R での撮像条件の検討を進めているが、汎用機と比較すると、特に分解能の良さが確認できたそうだ。ダットスキャンR静注は、脳の線条体に特異的に集積するドパミントランスポーターの分布を反映するものであることから、脳全体をどのように表示させるかが課題だという。線条体は非常に複雑な形態をしており、GCA-9300Rであれば、線条体のより細かい評価が行える画像が得られる。脳の微細な部位の特定が可能になれば、新たな診断方法にも結びつく可能性がある。そのためには、分解能が優れている装置で結果を提供していくことが重要だろう。
■GCA-9300R Imaging -藤田保健衛生大学病院での症例
努力を惜しまずより良い検査結果を提供する
同病院では、GCA-9300Rは現在頭部専用機として稼働しているが、「心臓検査での活用についても検討の余地はある」と石黒氏は話す。通常の心筋SPECT検査はもちろん、123I-MIBGを用いた心・縦隔比率計算へのニーズもある中で、GCA-9300Rは中視野検出器のため、180cmを越える長身の受診者の場合には有効視野が足りないことも想定されるが、「この場合は、2回に分けて撮像し、RIの時間減衰を計算して画像処理をすれば十分対応可能ではないか」と考えている。
藤田保健衛生大学病院では、GCA- 9300Rの導入に際してトレーサーとコリメータの組み合わせを試行錯誤しながら物理実験を行い、装置の物理特性を把握したうえで運用を開始し、より良い検査結果を提供するための努力を惜しまない。臨床医からの検査オーダーにレスポンス良く応えていくことが核医学検査を増やす秘訣だという考えが根底にあるからだ。細かな改良のポイントは少しずつ出てきているが、「使用経験を積んで撮影条件の工夫など自分たちでできるところは改善しながらより良い運用を考えていきたい」と豊田氏は話す。石黒氏も「画質、検査時間ともにGCA-9300R は汎用機を凌駕している。今後脳血流シンチはすべてGCA-9300Rで行っていきたい」と大きな信頼を寄せていた。
(本記事は、RadFan2014年11月号付録からの転載です)