前立腺癌マネジメントセミナーが開催

2015.04.23

 前立腺癌マネジメントセミナーが、2015年4月17日(金)、スウェーデン大使館アルフレッド・ノーベル講堂(東京都港区)にて開催された。
 
 BSI(Bone Scan Index)は1997年に米国メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターから報告され、その後スウェーデンのEXINI Diagnostics AB社がBSIの自動計算ソフトEXINIboneBSIを開発した。日本では、EXINIboneBSIをベースにした骨シンチ診断支援ソフトBONENAVIが2011年から富士フイルムRIファーマ社より供給されている。前立腺癌のマネジメントをしていくうえでのBSIの有用性と可能性についてまとめる。
 

河上一公氏
Lecture 1
画像バイオマーカーによる病態評価の重要性
河上一公氏(富士フイルムRIファーマ(株))

 
 近年、新薬の開発においてコストの増加から生産性の向上が大きな課題となっている。その課題を解決する方法として、特にがん領域では標的分子の特定やバイオマーカーの開発が期待されている。前立腺癌の治療効果判定においては、CT(RECIST)やPSAなどの指標と骨シンチ所見には乖離がみられることが少なくない。BONENAVIは、骨シンチ(bone scan)画像において高集積部位を検出し、転移の可能性を0~1までの範囲で数値化したANN(Artificial Neural Network)値に基づいて異常(転移)リスクを低(青色)、高(赤色)に分類して表示する。さらに骨転移の広がりを百分率で表したBSIにより、前立腺癌における骨転移の評価において一定の役割を果たすことができると考える。患者の負担は全く変わらず、プラスアルファの検査結果を提供できる利点もあり、現在、日本国内の骨シンチ検査実施施設の約7割でBONENAVIが導入されている。
中嶋憲一氏
Lecture 2
骨転移の臨床におけるBSI定量への期待
中嶋憲一氏(金沢大学大学院医薬保健学総合研究科がん医科学専攻准教授)

 
 骨転移が多い前立腺癌や乳癌のマネジメントをするうえで、骨転移の状況をbone scan画像の推移から評価する際に、従来の濃度、数、大きさに基づいた主観的な判断だけではうまく差を表現できない場合もある。BSIを用いると、主観的には差を表現しにくい画像でも、客観的な数値として評価することが可能である。日本での導入にあたっては、1,532例の骨転移症例のデータベースを用いて既存のソフトをブラッシュアップさせ、BONENAVIを用いた乳がんおよび前立腺癌における骨転移診断の感度・特異度がさらに改善されている。BSIは特定の部位について骨転移か否かという評価をするというよりも、むしろ骨全体での骨転移の割合を数値化することで、診断支援、治療効果の評価、予後予測に有用である。また客観的に評価できる指標であることから、多施設共同試験などでも有効利用できるだろう。
Professor. Anders Bjartell
Special Lecture
Bone Scan Index in the Evaluation of New Treatments for Castration-Resistant Prostate Cancer
Professor. Anders Bjartell(Skane University Hospital)

 
 前立腺がんの診断時には約5%の患者に骨転移が存在するが、10~20%の患者は5年以内に転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)に進展し、mCRPC診断時には約80%の患者に骨転移がみられる。欧米のガイドラインでは、骨転移の評価にはbone scanがゴールドスタンダードとされている。BSIに関しては、1990年代後半には前立腺がん患者の臨床評価における有用性が示されていたが、さらに自動計算可能なソフトの登場により臨床で普及し始め、近年の報告ではCRPC患者の予後を予測するうえでBSIはPSAよりも優れたバイオマーカーであることが示された。治療法別の検討でも、アンドロゲン遮断療法(ADT)あるいは化学療法の治療効果の評価において、BSIは良いマーカーになる可能性が示されている。現在も引き続き骨転移の定量化の意義を検証する研究が多数進行中である。