(株)フィリップス エレクトロニクス ジャパン(以下 フィリップス)は、6 月20 日より、大動脈瘤(大動脈の膨張)などの動脈血管疾患患者の低侵襲治療をサポートする、ライブ3D カテーテルナビゲーションにおける新アプリケーションツール「VesselNavigator」の販売を開始することを発表した。この新しいカテーテルナビゲーションサポートツールは、フィリップスのX 線血管撮影装置のイメージガイダンス機能として開発設計され、ステント留置の精密さと正確さを向上させると同時に、造影剤の使用量を大幅に低減させる*1。その結果、インターベンション手技の恩恵をこれまで受けることのできなかった患者へも、この最新イメージガイダンスを応用した低侵襲治療の適応を広げることを目指した。
中: 腹部大動脈瘤治療臨床症例2*3 右:VesselNavigator オペレーション画面の一例
*1 出典:Pubmed: Tacher et al; J Vasc Interv Radiol. 2013 Nov;24(11):1698-706
*2 出典:Prof. Dr. M. Schermerhorn, BIDMC, Boston, USA, Fenestrated Endovascular Aortic Aneurysm Repair
*3 出典:Prof. Dr. M. Schermerhorn, BIDMC, Boston, USA, Endovascular Repair of Juxtarenal Abdominal Aortic Aneurysm
ケルン大学病院(ドイツ)およびゲント大学病院(ベルギー)などとの共同研究により開発された「VesselNavigator」は、血管内治療およびハイブリッド手術の領域においてフィリップスの最新イメージガイダンス機能をさらに補強する最新ツールで、血管疾患の治療は開腹手術から低侵襲治療へと大きく転換しつつあり、低侵襲治療は近年大幅に増加している中、本製品はカテーテル治療における3D ライブイメージガイダンスへの高まるニーズへ対応する。
血管内治療術では、罹患した血管壁再建のためにステント等を目的部位へ配置挿入するために、イメージガイダンスを利用して主幹動脈または静脈を通してカテーテル治療を実施する。従来の2D X 線イメージガイドを用いた場合、臨床医はこのような治療の際に、しばしば可視化された血管構造を3 次元的に認識することが難しいため、処置の複雑さを増大させている。治療対象である血管部位を直接触れて視認できる従来の開腹手術がより馴染みが深いのは当然だが、「VesselNavigator」は、開腹手術と同様に3 次元構造を十分に把握したうえで治療を実施することを目指したものであるという。
「VesselNavigator」はあらゆる血管内治療に利用できるが、その主要な応用のひとつは、治療せずに放置すると大量出血などの重篤な合併症に至る大動脈瘤の治療時のナビゲーション支援である。動脈瘤のある部位には、しばしば腎臓動脈などの大動脈から分岐している様々な動脈がある。そのため多くの場合、開口部等が個別に設計されたステントが作られる。大動脈を治療時に他の腹部器官への重要な血流を維持するため、開口部はそのような栄養血管の位置に正確に合わせる必要がある。
従来のX 線血管撮影を用いてステントを正確に位置づけるのは非常に難度の高い作業で、大動脈瘤の血管内治療術はきわめて複雑な処置であり、成功させるためには、所要時間が増え、またX 線透視や撮影のための造影剤使用量も増加する。
「VesselNavigator」はライブX 線透視画像と、予め取得した患者様の血管構造の3D MRI 画像またはCT 画像を融合する。その結果得られる色分けされた3D 血管像により、リアルタイムの画像ナビゲーションが改善され、造影剤を使用してのX 線造影像を頻繁に取得する必要が減り、複雑な血管走行に沿ったカテーテル操作もよりスムーズに実施することが可能になる。「VesselNavigator」により造影剤の使用量を70%*4、処置時間を18%*5 低減するとの最近の研究論の発表もあり、これまで以上に患者に優しく効率的で対費用効果の高い血管疾患治療に寄与することが明らかにされている。
「VesselNavigator」の希望販売価格は、2,000 万円で(税込、仕様により異なる)、国内初年度の販売台数は約30 台を見込んでいる。
*4 出典:Pubmed: Tacher et al; J Vasc Interv Radiol. 2013 Nov;24(11):1698-706
*5 出典:Pubmed: Sailer et al; Eur J Vasc Endovasc Surg. 2014 Apr;47(4):349-56
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