書評 「これ1冊でわかる! 大腸CT プロフェッショナル 100のレシピ」 荒井保明(国立がん研究センター中央病院)

2015.10.13

大腸CTについて、これほど過不足なく、要領よく、
そして判り易く教えてくれる本は初めて!!

 
荒井保明
国立がん研究センター中央病院長放射線診断科長
 
 すでに「話題」というよりは「当たり前」になってしまった感のある大腸CTであるが、この「これ1冊でわかる! 大腸CTプロフェッショナル 100のレシピ」は実によく書かれた書である。
 画像診断系の本というと、とかく職種別、すなわち診療放射線技師、初学者の医師、中級以上の医師などと対象が限定されるものが多く、これを対象外の者が読むと判りにくいものが多い。逆に網羅的な書もあるが、その類いはやたらと分厚く、辞書のようで、とても読む気になれない。本書は、約200頁と手頃な厚さで、字も大きく、ひとつのレシピについて概ね見開きの形で簡潔に実に判り易く記されているため、ついつい次の項目に目が行ってしまい、100のレシピが記述されているにも関わらず、いつの間にか読み進ませられてしまう。これは案外、著者らの作戦なのかもしれない。そもそも、レシピ(recipe)というと料理の調理法が頭に浮かぶが、この言葉には「秘訣」、「秘伝」といった意味もあり、当然、この書におけるレシピは「秘訣」の意味であろう。ただし、「秘訣」とは言っても、決して著者らの個人的意見に偏ることなく、その記述はあくまでフェアであり、エビデンス重視の姿勢が貫かれている点は秀逸である。
 100のレシピは「概念」、「検診目的の場合」、「内視鏡困難例の場合」、「術前検査の場合」、「大腸CTに対する専門家の評価」、「説明文書や同意書の例」の6つのチャプターに分けられている。特に「検診目的の場合」のチャプターには多くの頁が割かれており、ここでは、基本事項から始まり、前処置、カテーテルの挿入と腸管の膨らませ方、撮影条件、画像再構成法、読影テクニック、読影のコツ、そしてレポートの書き方と、およそ検診の大腸CTに関わるあらゆる情報が詰め込まれている。ひとつの画像診断手法について、大切な100の項目を過不足なく挙げるのは決して簡単な作業ではなく、このバランスのとれたレシピの取り上げ方からは、著者らの本書に対する並々ならぬ意気込みが感じられる。大腸CTについて、これほど過不足なく、要領よく、そして判り易く教えてくれる本は初めてである。
 初学者にとっては、正しくステップアップしていくための入門書として、中級者には、これまでの知識を整理するとともに不完全な部分を補う書として、そして上級者には、これまでの知識を整理するとともに、そのエビデンスレベルを確認する書として、大きく役立つこと請け合いである。
 久々にお目にかかった、絶対お奨めの一書である。
 
 
これ1冊でわかる! 大腸CTプロフェッショナル 100のレシピ
 
監修:杉本英治(自治医科大学)
編集:永田浩一(国立がん研究センターがん予防・検診研究センター、自治医科大学)
発売元:メディカルアイ
サイズ:B5判
頁数:216ページ
定価:本体4,500円+税
発行年月:2015年09月25日
ISBN-10: 4862911315
ISBN-13: 978-4862911315

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