富士フイルム、被写体の構造をより正確に認識する人工知能※1を用いた画像処理技術を新開発
乳がん検査用デジタルX線撮影装置「AMULET Innovality」用ソフトウェアを発売
高精細なマンモ3D画像を実現し、撮影線量の大幅な低減に貢献
富士フイルム(株)は、乳がん検査用デジタル X 線撮影装置「AMULET Innovality(アミュレット イノバリティ)」用ソフトウェア「トモシンセシス撮影用ソフトExcellent(エクセレント)」を富士フイルムメディカル(株)を通じて平成28年7月1日より発売する。本ソフトウェアは、新画像処理技術によって、トモシンセシス撮影において従来比約4割の低線量化を実現したもので、本技術により、粒状性が良い高精細なX線画像の提供を実現し、撮影線量の大幅な低減にも貢献する。
なお、同社は6月16日から18日まで東京ビックサイトにて開催される「第24回日本乳癌学会学術総会併設展示会」で本技術を発表する。
乳がんの早期発見や診断のために広く利用されているマンモグラフィ検査では、2次元の撮影画像で病変や乳腺構造を確認する。しかし、病変や乳腺構造が重なって写っていると視認しにくいため、高度な読影技術が求められる。近年は、異なる角度から複数枚撮影した乳房の画像を再構成して、乳房内の断層像を生成するトモシンセシス検査の普及が進んでいる。トモシンセシス検査では、腫瘤(しゅりゅう)と乳腺などの重なりを分離して観察できるので、乳がん検査の精度向上に寄与している。同社は平成25年5月に、独自開発のFPD※2を搭載し高精細な診断画像を提供する、トモシンセシス撮影対応の「AMULET Innovality」を発売。乳がんの早期発見に貢献してきた。
今回発売する「トモシンセシス撮影用ソフトExcellent」は、人工知能を用いた画像処理を行っている。X線で撮影したあらゆる乳房の構造情報が登録されたデータベースを元に、撮影した画像を独自のアルゴリズムで分析。乳房構造のパターンに当てはまらないものをノイズとして認識し、画像から取り除く。石灰化や乳腺構造が重なって見える領域であっても、画像全体を劣化させることなく、ノイズだけを認識できるため、これまで見分けにくかったノイズと微小な石灰化が見分けやすくなるなど、診断に適した粒状性が良い高精細な画像の提供を実現する。
また、本ソフトは、撮影した複数枚の2次元の画像を再構成し、乳房の断層像を推定する際に、逐次近似法※3を用いて被写体の構造の位置情報をより正確に抽出する作業を繰り返し行うため、乳腺や石灰化など乳房の立体構造を高精度に認識することができる。逐次近似法は、位置情報の抽出作業を繰り返し行うことから、一般的には処理に時間がかかるが、同社は独自のアルゴリズムを用いることで、スピーディに被写体の正確な構造を認識することを可能とした。さらに、断層像を再構成する際に活用する画像の情報量を従来比約4倍に増やし、乳房の微細構造を、より精細に復元して、読影しやすい画像を生成する。
「トモシンセシス撮影用ソフトExcellent」によって、これまでと同等の高画質でありながら、従来比最大約4割※4の低線量化が可能。
同社は、X線画像診断分野において長年に亘って培ってきた医療現場に求められる診断画像や、その解析情報、X線特有の傾向といった知見と技術をさらに発展させ、今まで以上により詳細な被写体の構造を認識できる画像処理技術の開発に成功した。この技術は、今後同社の DR(Digital Radiography)や CR(Computed Radiography)にも活用していく予定だ。
富士フイルムは、今後も独自技術を生かした幅広い製品、サービスの提供を通じて、医療現場の多様なニーズにお応えし、乳がんの早期発見と医療の質の向上に貢献していく。
記
1.発売日:平成28年7月1日
2.品 名:「トモシンセシス撮影用ソフトExcellent」
(販売名:デジタル式乳房用 X 線診断装置 FDR MS-3500/認証番号:224ABBZX00182000 のオプション)
3.標準ユーザー渡し価格(税別):26,900,000 円(※)
※トモシンセスシス撮影キットおよび「トモシンセシス撮影用ソフトExcellent」(ソフトウェア、オプションキーソフト)
4.主な特長:
(1)人工知能を用いた画像処理により、粒状性が良い高精細な画像を提供
人工知能が、X 線で撮影した各種部位の構造情報が登録されたデータベースを元に、撮影した画像を独自のアルゴリズムで分析。乳房構造のパターンに当てはまらないものをノイズとして認識し、画像から取り除く。これまで見分けにくかったノイズと微小な石灰化が見分けやすくなるなど、診断に適した粒状性が良い高精細な画像の提供を実現する。
(2)高精度・高精細な画像をスピーディに提供
撮影した複数枚の 2 次元の画像を再構成し、乳房の断層像を推定する際に、逐次近似法※3を用いて被写体の構造の位置情報をより正確に抽出する作業を繰り返し実施。乳腺や石灰化など乳房の立体構造を高精度に認識することができる。逐次近似法は、位置情報の抽出作業を繰り返し行うことから、一般的には処理に時間がかかるが、独自のアルゴリズムを用いることで、スピーディに被写体の正確な構造を認識することを可能とした。
(3)乳房の微細構造を復元し、読影しやすい画像を生成
断層像を再構成する際に活用する画像の情報量を従来比約4倍に増やし、乳房の微細構造を、より精細に復元して、読影しやすい画像を生成する。
(4)トモシンセシス撮影時の X 線量を大幅に低減
上記(1)(2)(3)により、従来比最大約4割の低線量化が可能。
※1 人工的にコンピュータ上などで人間と同様の知能を実現させるための一連の基礎技術のこと。同社は、X線画像の画像処理において、人工知能に活用されている画像認識技術を使用している。
※2 Flat Panel Detectorの略。平板上のX線画像平面検出器。
※3 方程式を解くにあたって、まず1つの近似解を推定し、次にこの近似解を用いてさらに精度が高い近似解を求め、逐次この操作を繰り返して近似の精度を高める方法。
※4 医師の協力のもと行った評価では、撮影線量を4割低減したトモシンセシス画像でも、現在の画像処理による従来線量の画像を使った場合と同様の診断を行う事ができるというコメントを得ている。
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