社会医療法人博愛会 相良病院とシーメンスヘルスケアは、8月8日、ゲートシティ大崎シーメンス・フォーラム・ジャパン(東京都品川区)で、最新のがん検診に関するプレスセミナーを開催した。
まず、戸﨑光宏氏(同院附属ブレストセンター放射線科部長)が、乳がん検診の現状・トレンドに関して語った。「日本の女性の約8割がデンスブレストであり、マンモグラフィだけではがんを見つけにくい。米国ではマンモグラフィでがんを見つけにくい乳房をもつ女性へ、超音波など別の画像検査を行うことが必要であることを周知させ、かつ法制度など社会的枠組みを作り上げる活動が行われている。日本では、米国よりも明らかに乳腺濃度が高く、わが国でも受診者に乳腺濃度を知らせる活動や法制定が急務である」とし、個別化診断の重要性を強調した。
次に、井村千明氏(同社ダイアグノスティックイメージング事業本部MR事業部)は、「Biograph mMRは、MRIとPETの同時収集が可能となっている。MRIの体動補正技術を組み合わせることで、PETの画像情報の精度が大幅に向上した。また、MRIはCTよりも軟部組織のコントラストに優れ、さらに画像コントラストの種類も豊富である。さらに、被ばくなしに全身の検査を行うことが可能であるところに利点がある。」と語った。その後、実際の画像を示し、PET/CTに対するMR-PETの軟部組織コントラストの優位性や、膀胱において時間的、空間的に同時に収集することで蓄尿による形態変化の影響を受けないので、正確なフュージョン画像が得られるメリットなどを紹介した。
続いて、相良吉昭氏(同院理事長)が、「相良病院とシーメンスヘルスケアは今後も協力し、日本から世界へ女性医療のモデルケースを発信していく」と発表。その一環となる、今後の取り組みを紹介した。まず、1つめのトピックスとしては、2016年4月よりはじめた「乳腺濃度を結果表で受診者に通知」することである。セミナーの冒頭で戸﨑氏が語ったように、日本では乳腺濃度が高い女性が多いため、個別の検査を行うためにも受信者に乳腺濃度を通知するという。
また、2つめのトピックスは、「マンモグラフィ・超音波装置の両方を搭載した検診車の導入」である。今までマンモグラフィと超音波装置を個別に搭載した診断者はあったものの、両方を兼ね備えた検診車の導入は鹿児島県下でも初めてだという。さらに同院では、乳がん卵巣がん遺伝相談外来を開設しており、2008年から受診者は徐々に増加していたが、臨床試験が始まった2015年には遺伝カウンセリングを受ける人数が急増し、乳がん・卵巣がんのハイリスク者にも対応している。
そして、3つめのトピックスとしては、「MR-PET Biograph mMRの導入」である。9月に納入され10月から乳がん検診・診療を開始予定で、今回の導入は女性専門の医療機関としては国内初となる。世界的に見ても乳がん領域をメインとしたBiograph mMRの活用が少ないこともあり、同院での今後の臨床実績をはじめ、両者の共同研究の成果などに世界からの期待が寄せられている。