第41回リザーバー研究会の参加レポートを吉野裕紀先生(手稲渓仁会病院放射線診断科)にご寄稿頂きました!
はじめに
2016年8月5日〜6日に岡山コンベンションセンターで開催された第41回リザーバー研究会に参加した。参加印象記を執筆させて頂く。まず、簡単に自己紹介をさせて頂く。私は卒後7年目のIVR医であり、リザーバー研究会への参加は昨年に続き2度目である。長い歴史と伝統を持つ本会であるが、伝え聞くかつての栄光とは対照的に近年では閉塞感著しい会となっていることは隠しようがない。本会に参加した印象、印象に残った演題、そして感じた問題点について、新参者の内でしか許されないであろう批判的吟味の立場から参加印象記を執筆させて頂こうと思う。
さて、「すべてがアツイ!」と銘打たれた本会のプログラム(図1)は、一般演題が33演題、内訳は動注リザーバーの技術・合併症 4題、リザーバー動注化学療法の治療成績 8題、リザーバー動注の症例報告 2題、CVポート留の技術 5題、CVポートの合併症 6題、CVポートからの造影CT 1題、看護 6題と隙のない布陣であり、さらにランチョンセミナー2本、特別講演、特別企画 2本、イブニングセミナー、教育講演そしてシンポジウムが2日間にわたって休まず走り続ける充実のプログラムであった。会場となる岡山コンベンションセンターは来年のIVR総会でも使用される会場である。岡山駅からは立体通路で徒歩5分で直結されて、真夏の暑い岡山であっても会場まで快適に辿り着ける優れた立地であった。
一般演題① リザーバー
一般演題② 肝転移1
1日目午前のセッションのトップバッターとなったのは静岡県静岡がんセンター・IVR科の新槇 剛先生の「骨盤領域整形外科悪性疾患に対するリザーバーを用いた局所動注療法」であった。肝動注化学療法から発展した動脈リザーバー留置の技術を駆使し、左胸肩峰動脈や対側下腹壁動脈からのアプローチで患側の内腸骨動脈に側孔型のリザーバーシステムを留置する技術は見事であり、さらにその長期予後に関して詳細に検討され、本会の開幕に相応しい発表といえた。ただ、最後に他施設共同前向き試験が必要と結んでおられたが、残念ながらそこへの道筋が示されることはなかった。標準療法として化学療法のエビデンスがある組織型とそうでないもの、遠隔転移のあるものとないもの、症例ごとにmodifyされるレジメン、RTを併用するかすら一定でない、リザーバー動注か反復ワンショット動注かの棲み分けも定かでない、これらが雑多に混ざった集団でどのようなプロトコールが作成可能か、よしんばstudyを走らせたとしてどれだけ臨床に外挿できるデータが得られると考えているのか、新槇先生ほどの先生であればそこの展望を示して頂きたかった。 その後も主にがんセンター系の施設からの演題が続き、動注化学療法がまだ現役であることが訴えられた。がん研有明病院・肝胆膵内科の高野浩一先生は「強力な全身化学療法の適応とならない切除不能大腸癌肝転移にに対する動注療法」として、多発肝転移による肝機能不良のためFOLFOX等の標準療法導入が困難とキャンサーボードで判断された症例に対し、bridging therapyとして動注化学療法を行うことで強力な化学療法を導入しえたと発表された。局所奏功率は高いが予後延長エビデンスのない肝転移に対する動注化学療法の生き残る道の一つが示唆されたように思えた。
一般演題③
CVポート1
1日目午後にはCVポート留置技術の工夫に関するセッションがあった。「すべてがアツイ!」という今回の大会テーマそのままに「皮下がアツイ」症例への対策が自然と重要なテーマになっていた。手前味噌になるが、私の演題である「経皮的前胸部橈側皮静脈穿刺法によるCVポート留置術」も肥満患者への対策が狙いの一つである。個人的に最も印象に残った演題は愛知がんセンター中央病院・放射線診断科 村田慎一先生の発表された「肥満患者へのCVポート」、"methoD for Excess BMI patients"、その名もD-E-B portである。思わずニヤリとなるようなネーミングであり、通常の鎖骨下CVポートでdevice dropが問題となった肥満症例に対し、内頸アプローチで、ポートを鎖骨上に乗せて留置することで脱落を防ぐ工夫であった。特に、聴衆を惹きつけるプレゼンテーションが秀逸であり、参加者に強く印象を与えたことだろうと思う。
★続きはRadFan2016年10月号にてご覧ください!