富士フイルム、和光純薬工業を買収
武田薬品工業と株式公開買付けの応募に関する契約を締結

2016.12.16

 富士フイルム(株)は、本日開催の取締役会において、総合試薬メーカーの和光純薬工業(株)(以下 和光純薬)の買収を決議した。
 富士フイルムは、武田薬品工業(株)(以下 武田薬品)との間で、同社グループ*1が公開買付け開始日において所有する和光純薬の普通株式のすべてを本公開買付けに応募する旨の契約を本日締結した。本公開買付けは、競争法上要求される手続きの完了を含む一定の前提が満たされていることを条件として、2017年2月27日より開始する予定である。なお、本公開買付けに要する資金総額は、約1,547億円を予定している。

 今回、富士フイルムは和光純薬を買収し、両社の高度な技術力、競争力のある製品などを活用して、事業拡大を進めていきく。写真フィルムなどで培った化学合成技術やナノテクノロジー、生産技術などを和光純薬の事業にも活用することで、注力するヘルスケア事業や高機能材料事業において大きなシナジー創出が可能だ。なかでもヘルスケア事業では、将来高い市場性が見込める再生医療分野をはじめ、体外診断分野、医薬品の開発製造受託(CDMO)*2分野で大きなシナジーを見込んでいる。今回の買収は、今後の大きな事業成長に向けた重要なマイルストーンになる。

*1 武田薬品と日本製薬(株)で、和光純薬の株式を71.2%保有(2016年12月15日現在)。
*2 Contract Development and Manufacturing Organizationの略。

【本買収で実現可能なシナジー】

<ヘルスケア事業>
再生医療事業

 富士フイルムグループには、iPS細胞の開発・製造のリーディングカンパニーであるセルラー・ダイナミクス・インターナショナル(CDI)、国内で最初に再生医療製品を上市したジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)がある。iPS細胞作製などに関する主要特許や細胞の開発・製造ノウハウ、さらに細胞培養に必要な足場材(リコンビナントペプチド)、一定条件生産技術や微小環境でのコントロール技術など、再生医療に必要な技術やノウハウを持っている。今回、これらに和光純薬の培地を加えることで、再生医療に必要な主要要素すべてを自社グループで保有することになる。今後、和光純薬が試薬メーカーとして培った少量多品種生産の技術を活かし、各種細胞の培養に最適な高機能カスタマイズ培地の開発を進め、さらにCDI、J-TECとの連携により、再生医療事業を加速させていく。

体外診断分野(メディカルシステム事業)
 富士フイルムは、血液中の化学成分を正確かつ高精度に測定できる臨床化学分析システムやインフルエンザウイルスを高感度で検出できる免疫診断システムなど体外診断システムを展開し、同システムの売上を年率10%以上で伸長させている。今回、和光純薬が持つ免疫分析装置や生化学分析試薬などの製品群を加えることで、クリニックから大病院までのニーズに対応できる製品ラインアップを拡大。さらに院内検査を実施している国内のほぼすべての施設にアクセスできる和光純薬の営業網と、画像診断装置をはじめとした医療機器や医療ITシステムなどの販売を通じて構築した富士フイルムの海外ネットワークを活かして、それぞれのルートで相互に製品を拡販していく。

医薬品の開発製造受託(CDMO)分野(医薬品事業)
 富士フイルムグループは、FUJIFILM Diosynth Biotechnologies(FDB)でバイオ医薬品の開発製造受託を行っており、また富士フイルムファインケミカルズでは低分子医薬品の開発製造受託を展開している。今回、和光純薬の化学合成技術や培地の生産技術などと、富士フイルムグループが持つ低分子医薬の化学合成技術やバイオ医薬品の生産技術などを活用して、医薬品のCDMOビジネスを拡大させていく。

<高機能材料事業>
電子材料事業

 富士フイルムは、フォトレジストやイメージセンサー用材料、CMPスラリーなどの半導体材料製品をラインアップし、なかでも最先端の半導体材料分野で競争力の高い製品を供給することで、年率10%以上の売上成長を実現していく。今回、和光純薬が持つ、半導体の生産プロセスで使用される洗浄剤などを加えて、さらなる事業成長を図る。

産業機材事業
 富士フイルムが写真フィルムなどで培ってきた20万種の化合物ライブラリを試薬ビジネスに展開していく。さらに、高度な化学合成技術を駆使して、新規高機能試薬、高い競争力を持つ和光純薬の重合開始剤の次世代品などの開発を進めるとともに、富士フイルムの海外ネットワークを活用して、化成品ビジネスをグローバルに拡大していく。
 和光純薬は、1922年に武田薬品の化学薬品部門を母体として設立されて以来、最先端分野の研究ニーズに応える総合試薬メーカーとして高品位の製品を開発・製造してきた。現在、試薬、臨床検査薬および化成品の製造・販売を主な事業領域とし、いずれの事業領域においても国内での強固な事業基盤により、高い収益性を維持しながら成長を続けている。試薬事業では、少量多品種に対応した製品開発力や生産体制、日本全国を網羅した強靭な販売網などを活かしてビジネスを拡大。今後大きな市場成長が予想される再生医療分野でも、細胞培養に必要な培地などを開発している。また臨床検査薬事業では、世界最速で測定できる全自動化学発光免疫装置など優位性のある機器・検査薬の開発・販売を通じて事業を拡大させている。さらに化成品事業では、試薬製造で培った化学合成技術を活かし、半導体プロセス材料や、ポリマー製造に用いられる重合開始剤など競争力の高い製品を開発し、グローバルにビジネス展開している。
 富士フイルムは、1960年に和光純薬と資本提携し、現在和光純薬の普通株式所有割合9.7%の第2位株主である。これまで長年にわたり、写真感光材料の生産に必要な発色剤などの化成品の供給を受けてきた。現在では写真感光材料だけではなく、半導体材料をはじめとする高機能材料などの製品に和光純薬の製品を活用するなど、事業面でも強固な関係を築いている。また、写真フィルムなどの研究開発で培ってきた、高度な化学合成技術やナノテクノロジー、画像診断技術、コラーゲンなどの高機能素材の作製技術、精緻な品質管理を可能とする生産技術などを保有しており、これらの技術を化粧品・サプリメント、医薬品、再生医療などの新しい分野に活用し、事業拡大を図っている。
 富士フイルムグループは、6つの重点事業分野(ヘルスケア、高機能材料、ドキュメント、グラフィックシステム、デジタルイメージング、光学デバイス)の中でも、特に高い成長が期待できる、ヘルスケア、高機能材料、ドキュメントに経営資源を集中投入し、事業を拡大させている。今後、和光純薬とのシナジー創出により、既存ビジネスの最大化、競争力の高い新規製品の開発・提供などを通じて、ヘルスケア、高機能材料のさらなる事業成長を図っていく。

富士フイルム
 本公開買付けが成立した場合には、和光純薬は富士フイルムホールディングスの連結子会社となるが、本公開買付けの決済の開始日は2017年4月21日を予定しているため、富士フイルムホールディングスの2016年度の連結業績に与える影響はありません。2017年度(来年度)の連結業績に与える影響については、詳細が確定次第、お知らせする。

(添付資料)
和光純薬工業株式会社株券に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ(PDF:438KB)

●お問い合わせ
富士フイルム(株)
URL:http://fujifilm.jp/