2017年2月27日メディアセミナー「急性期脳梗塞に対する血管内治療の現状と課題、発症後8時間との闘い一人でも多くの患者さんを救うために」がフクラシア東京ステーションで開催された。
まず、吉村紳一氏(兵庫医科大学脳神経外科学講座)から脳梗塞の分類から説明があった。
「ラクナ梗塞」細動脈硬化に起因する1.5cm以下の穿通枝領域の小梗塞。「アテローム血栓性脳梗塞」主幹脳動脈の狭窄が50%以上もしくは閉塞による皮質枝領域梗塞が典型であり、小脳梗塞や脳幹梗塞も含まれる。「心原性脳梗塞」 塞栓源として、心房細動、急性心筋梗塞、拡張型心筋症、人工弁などを基礎疾患とし、左心耳、左心房、左心室に壁在血栓であり、皮質を含んだ大梗塞を生じる。
これらが主な分類であるが、脳梗塞は、血流低下部の早い時期であれば助けられるので、1秒でも早く治療を開始する必要がある。
今では、血栓回収療法のエビデンスは確立し、血管内治療の効果が証明された為、命が助かるようになった。血管内治療とは、血管の内側からアプローチする新しい手術法で、脳卒中治療の最前線の頭を切らずに治す治療法である。しかし、治療を受けられない患者がたくさんいる。脳梗塞による死亡件数は年間6万6,058人に対し、治療している件数は1万6,000~7,000例と死亡数に対し治療数が圧倒的に足りていない。なぜ、治療件数が不足しているかというと、専門医がいないエリアが多いからである。東京都で見てみると、東京23区に集中しており、西部には一人も専門医がいない。また、全国的に見ても都心部に集中しており、その他の地域に一人もいなく、地方都市では専門医自体が少ないというのが現状である。大阪府では、専門医の数が多いが全域でカバーされていない。石川県、鳥取県では専門医の人数は多くないが連携が取れ、しっかりカバーされている。
では、どのようにすれば連携を取ることができるのか。それは、3つのアクションプランがある。「調査と公表」血栓回収療法が受けられないエリアを正確に調べ、その情報を公表する。「啓発」この治療が有効であることを全国に知らせる(治療が受けられないエリアにも)。「実践」この治療をできるだけ多くの患者に行うために支援をし、専門医を増やす。
これらのアクションプランを実効し、実際にどのように連携をしていくのかというと、ドリップ、シップ、リトリーブ療法を行うことである。
「ドリップ」転送の病院で点滴「シップ」脳卒中センターに輸送「リトリーブ」血栓をカテーテルで取る。
t-pa静注療法後、専門医のいる施設に患者を輸送し、血栓回収の両方を行えるので、血栓回収療法の普及率向上が期待することができる。しかし、直接搬入に比べ、輸送は余分に時間がかかるが、院内準備の時間短縮で再開通までの時間の差がなくなり、直接搬入群と転院群では、転帰良好例の割合に差がなく、院内死亡は転送群で少ない傾向となった。
この連携システムが適応されれば、より多くの患者がカテーテル治療を受けることができる。
重症脳梗塞患者を救う体制を出来るだけ早く実現し、脳卒中になっても困らない国を目指して行くことがこれからの目標になる。