斎藤 聡氏
川内章裕氏
3月25日(土)、東医健保会館(東京都新宿区)にて、第41回超音波ドプラ・新技術研究会が行われた。研究会の名称が変わってから初めての開催となった本会では、約250名と多くの参加者が集った。
開会の挨拶では、当番世話人の斎藤 聡氏(虎の門病院)が表紙について語り、「超音波ドプラの『ドプラ』と桃が『ドップラ』と流れてくる様子をかけています」と桃太郎が描かれている表紙を片手に説明した。
一般演題では、丸山紀史氏(千葉大学)と平山雄一氏(新百合ヶ丘総合病院)が座長をつとめ、8演題が発表された。
梅原さや香氏(総合南東北病院)は「Aixplorer(Ver10)を用いたShearWave Elastographyの初期使用経験」について、まずAixplorer(Ver10)の改良点を4つ挙げた。①プローブ、②SWEのフレームレイトの向上、③モーションアーチファクトの低減、④Stability Index(SI)の搭載、以上の4点が改良点。SIとは、時間方向の安定性を検討し、数値化した値で、呼吸や拍動の影響を評価、SWE計測の安定性を数値表示する。梅原氏は「同装置は、フレームレイトが増加し、よりよいカラーマップが得られ、皮下厚が大きい症例でも安定したカラーマップが得られる。また、検者のSWE値ばらつき軽減も期待できる」と述べた。
大久保裕直氏(順天堂大学練馬病院)は、「稀な限局性脂肪肝の2症例」を呈示。40歳代女性の症例では、乳癌術後約2年タモキシフェン20mgを服用しており、肝S5表面に15mm大の高エコー腫瘤が認められ、MRIではT1 in-phaseで等信号、out of phaseで低信号を呈した。腫瘤肝生検を施行し、区域性に大滴性の脂肪沈着が見られた。タモキシフェン中止により高エコー腫瘤は消失。限局性に脂肪沈着をきたす報告は一例のみであるが、時に肝転移との鑑別を要する症例が存在すると、大久保氏は説明した。
教育講演では、座長を斎藤 聡氏(虎の門病院)がつとめ、川村祐介氏(虎の門病院)、坂元亨宇氏(慶應義塾大学医学部病理学)、國分茂博氏(新百合ヶ丘総合病院肝疾患低侵襲治療センター)が講演された。
坂元氏は、「NASHの病理診断」について、脂肪肝の中でも、NASHは肝硬変・肝細胞癌を合併する可能性のある進行性の疾患であり、早期発見と診断および治療介入がポイントであるとし、中でも線維化進展をきたしているハイリスク症例を早期発見することが重要であると述べた。今後、肝生検によらず非侵襲的に線維化進展度を評価する方法の確立が望まれていく。
國分氏は、「MRエラストグラフィーの現況」として、まずMREの歴史や原理について説明。MREが肝線維化に対して有用であることは証明されているが、MREと肝腫瘍診断に関する報告は少数で、肝細胞癌治療後変化の報告はこれまでになく、肝細胞癌治療後(特にRFA後)にMREによる肝硬度がどのように変化するかを検討する必要があると同氏は述べた。肝癌治療後は、肝硬度が低下するが、残存腫瘍では肝硬度が低下しないためその差を利用して、治療効果判定を行うことができる可能性が示されたが、肝硬度がRFA直後に上昇し、その後低下し硬変肝以下となるときはNecrobiosisをきたし、凝固壊死に至る過程を表している可能性もあるという。今後、NASH、B、Cなどの疾患別硬度の探索に限らず、欧米のBavenoⅥに対抗すべく国内多施設による門脈圧亢進症におけるMREの臨床研究が計画されている。
パネルディスカッションでは、住野泰清氏(東邦大学)と斎藤 聡氏(虎の門病院)座長のもと、7名が講演を行い、会場全体でディスカッションが行われた。
シンポジウムでは「超音波の新技術とその臨床応用」の題で、沼田和司氏(横浜市立大学)、和久井紀貴氏(東邦大学)が座長をつとめた。
小泉憲裕氏(電気通信大学)は、「ロボットビジョン技術が実現する肝線維化および肝硬変の定量評価」について発表。小泉らは、人工知能およびロボットビジョン技術を医療に展開し、医デジ化技術により専門家の世界観を共有できるよう進めている。肝線維化や肝硬変などの肝疾患をロバストかつ高精度に定量評価するシステムの開発を行っており、今回、肝臓超音波Bモード画像におけるアーチファクトと肝実質を約80%で分離できることと、血管構造の解析が可能になったことを報告した。
最後に代表世話人である川内章裕氏(昭和大学消化器・一般外科、池袋病院)が閉会の挨拶を述べた。次回の第42回超音波ドプラ・新技術研究会は、9月16日(土)に同会場で平山雄一氏(新百合ヶ丘総合病院)が当番世話人をつとめ、開催される。
開会の挨拶では、当番世話人の斎藤 聡氏(虎の門病院)が表紙について語り、「超音波ドプラの『ドプラ』と桃が『ドップラ』と流れてくる様子をかけています」と桃太郎が描かれている表紙を片手に説明した。
一般演題では、丸山紀史氏(千葉大学)と平山雄一氏(新百合ヶ丘総合病院)が座長をつとめ、8演題が発表された。
梅原さや香氏(総合南東北病院)は「Aixplorer(Ver10)を用いたShearWave Elastographyの初期使用経験」について、まずAixplorer(Ver10)の改良点を4つ挙げた。①プローブ、②SWEのフレームレイトの向上、③モーションアーチファクトの低減、④Stability Index(SI)の搭載、以上の4点が改良点。SIとは、時間方向の安定性を検討し、数値化した値で、呼吸や拍動の影響を評価、SWE計測の安定性を数値表示する。梅原氏は「同装置は、フレームレイトが増加し、よりよいカラーマップが得られ、皮下厚が大きい症例でも安定したカラーマップが得られる。また、検者のSWE値ばらつき軽減も期待できる」と述べた。
大久保裕直氏(順天堂大学練馬病院)は、「稀な限局性脂肪肝の2症例」を呈示。40歳代女性の症例では、乳癌術後約2年タモキシフェン20mgを服用しており、肝S5表面に15mm大の高エコー腫瘤が認められ、MRIではT1 in-phaseで等信号、out of phaseで低信号を呈した。腫瘤肝生検を施行し、区域性に大滴性の脂肪沈着が見られた。タモキシフェン中止により高エコー腫瘤は消失。限局性に脂肪沈着をきたす報告は一例のみであるが、時に肝転移との鑑別を要する症例が存在すると、大久保氏は説明した。
教育講演では、座長を斎藤 聡氏(虎の門病院)がつとめ、川村祐介氏(虎の門病院)、坂元亨宇氏(慶應義塾大学医学部病理学)、國分茂博氏(新百合ヶ丘総合病院肝疾患低侵襲治療センター)が講演された。
坂元氏は、「NASHの病理診断」について、脂肪肝の中でも、NASHは肝硬変・肝細胞癌を合併する可能性のある進行性の疾患であり、早期発見と診断および治療介入がポイントであるとし、中でも線維化進展をきたしているハイリスク症例を早期発見することが重要であると述べた。今後、肝生検によらず非侵襲的に線維化進展度を評価する方法の確立が望まれていく。
國分氏は、「MRエラストグラフィーの現況」として、まずMREの歴史や原理について説明。MREが肝線維化に対して有用であることは証明されているが、MREと肝腫瘍診断に関する報告は少数で、肝細胞癌治療後変化の報告はこれまでになく、肝細胞癌治療後(特にRFA後)にMREによる肝硬度がどのように変化するかを検討する必要があると同氏は述べた。肝癌治療後は、肝硬度が低下するが、残存腫瘍では肝硬度が低下しないためその差を利用して、治療効果判定を行うことができる可能性が示されたが、肝硬度がRFA直後に上昇し、その後低下し硬変肝以下となるときはNecrobiosisをきたし、凝固壊死に至る過程を表している可能性もあるという。今後、NASH、B、Cなどの疾患別硬度の探索に限らず、欧米のBavenoⅥに対抗すべく国内多施設による門脈圧亢進症におけるMREの臨床研究が計画されている。
パネルディスカッションでは、住野泰清氏(東邦大学)と斎藤 聡氏(虎の門病院)座長のもと、7名が講演を行い、会場全体でディスカッションが行われた。
シンポジウムでは「超音波の新技術とその臨床応用」の題で、沼田和司氏(横浜市立大学)、和久井紀貴氏(東邦大学)が座長をつとめた。
小泉憲裕氏(電気通信大学)は、「ロボットビジョン技術が実現する肝線維化および肝硬変の定量評価」について発表。小泉らは、人工知能およびロボットビジョン技術を医療に展開し、医デジ化技術により専門家の世界観を共有できるよう進めている。肝線維化や肝硬変などの肝疾患をロバストかつ高精度に定量評価するシステムの開発を行っており、今回、肝臓超音波Bモード画像におけるアーチファクトと肝実質を約80%で分離できることと、血管構造の解析が可能になったことを報告した。
最後に代表世話人である川内章裕氏(昭和大学消化器・一般外科、池袋病院)が閉会の挨拶を述べた。次回の第42回超音波ドプラ・新技術研究会は、9月16日(土)に同会場で平山雄一氏(新百合ヶ丘総合病院)が当番世話人をつとめ、開催される。
会場風景
パネルディスカッションの様子