11月6日(月)、東京都の第一ホテル東京にて、株式会社フィリップス・ジャパン、NPO法人日本呼吸器障害者情報センター共催の「COPD啓発プロジェクト第一弾 COPDレシピ」の記者発表会が開催された。
まず、開会の挨拶として堤 浩幸氏(株式会社フィリップス・ジャパン代表取締役社長)が登壇した。フィリップスのもつ「常にイノベーションする・社会の役に立つ」というビジョンを提示し、「2025年までに35億人を健やかにする」との目標を語った上で、本プロジェクトに関する説明をした。COPDに関して、500万人の潜在患者がありながらも実際に治療を受けているのは一部であるという現状を示し、「予防」に重点を置いた企業であるフィリップスは今回のプロジェクトを通じてCOPDの周知を図り、健康な社会づくりのお手伝いをしたいと述べた。
次に遠山和子氏(NPO法人日本呼吸器障害者情報センター理事長)が、「COPD患者と家族が抱える食生活における課題」と題した講演を行った。COPDについて同氏は、自身の夫が咳や痰などの症状を重篤な病気と思わずに見過ごした結果COPDと診断され、在宅酸素療法となったという実例を挙げ、COPDに関する情報不足や認知度の低さを問題点として指摘した。その対策として同氏はNPO法人J-BREATHを立ち上げ、COPD患者からの電話相談やJ-BREATH機関紙・ハンドブック作成といった疾患情報提供、疾患啓発活動としてのウォーキングイベントの毎年開催といった活動を行っている。
それらの活動からみえてきた問題として、医師からCOPD患者への療養指導のうち栄養指導が十分に行われていない点を指摘し、呼吸リハビリテーションの指導だけではなく、ていねいな栄養指導の実施を医療者に期待すると述べた。
続いて桂 秀樹氏(東京女子医科大学八千代医療センター内科部長/呼吸器内科教授)が、「COPDの病態と栄養療法の重要性」と題した講演を行った。同氏は、病因の9割が煙草の煙である点を挙げた上で「これまで別のものとして分けられていた慢性気管支炎と肺気腫の2つを同一にした疾患がCOPDである」と定義した。COPDに関してインターネットで実施したアンケートによると、「COPDを知らない」と答えた割合は75%との結果が示され、日本における認知度の低さが浮き彫りとなった。
同氏は、薬物療法と非薬物療法をペアとして行う治療方法などを説明しながら、そのうち1つに栄養療法があると述べた。COPD患者は健常者と比べて筋肉量が低下しており、疲労感の訴えがよくみられる。さらに、日本のCOPD患者には主にやせ型が多くその予後は寿命が短いというデータがあることからも、COPD患者には栄養療法が欠かせず、高エネルギー食を摂取することで健康維持を図ることが重要であると論じた。
最後に田中弥生氏(駒沢女子大学人間健康学部健康栄養学科教授/日本栄養士会常任理事)が、「COPDを“食”からケア COPD患者さんのおうちごはんのポイント」と題した講演を行った。田中氏の講演の中では、実際のレシピを再現した食事が振る舞われた。
同氏は、COPD患者は重症化するにつれて筋量や栄養状態が低下し、痩せていくといった病状を挙げ、虚弱状態にまで至る前に、医療や介護と連携した早期からの予防が必要であると述べた。
COPD患者は、呼吸に使われるエネルギー量が健常者に比べて大きいため必要エネルギー量が高くなる。そのエネルギーを実際に補おうとするとかなりの食事量が必須となるが、COPD患者に多くみられる嚥下筋の委縮や疾患によるうつ状態を要因として、食事を摂ることがまず困難である場合が多い。そのような患者のエネルギー量摂取のために、「なるべく手間をかけず、かつ普段の食事に何をどのようにプラスしたら良いか?」をわかりやすくしたのが、今回のプロジェクトで開発された「COPD患者さんのおうちごはん」である。田中氏は、「カロリーアップとわからないような、油を取り入れた調理がポイント」と述べた。その他にも、卵やバターなどの乳製品や脂身の多い魚といったエネルギーの高い食材の積極的な利用や、MCTオイルの活用などが調理の工夫の要点であるとした。たとえば白ごはんを、鶏肉を使った醤油仕立ての炊き込みご飯にするだけで、101kcalのエネルギー量がアップできる。このような、COPD患者にとってもその家族にとっても手軽で、食事を楽しめるようなレシピ作りが今回のコンセプトである。
最後に田中氏はこれからの栄養指導について、地域の認定「栄養ケア・ステーション」のような取り組みが普及していくことを期待した。