さらに速く、さらに見やすい撮影へ
東芝メディカルシステムズ(株)は、11月11日(土)、「最前線CTセミナー2017 in首都圏」をベルサール東京日本橋(東京都中央区)で開催した。セミナーでは同社CTの最新の臨床応用について講演を行った。
ユーザー講演は、座長は田中 功氏(東京女子医科大学病院)のもとで開催された。
始めに藤島優平氏(医療法人慈光会甲府城南病院)が「GENESIS使用経験」と題して、Aquilion64から更新されたAquilion ONE/GENESIS Editionの性能を、更新前後の比較を交えながら紹介した。Volume HelicalやvHPの使用による撮影時間の大幅な短縮や診断能の向上、また新たな画像再構成技術であるFIRSTの使用により画質向上と被曝線量低減を両立できることが大きな魅力とした。
「生きている脳細胞も、30分経てば半分死んでしまう」と、来院から治療開始までの時間短縮の重要性について話したのは石田和史氏(社会医療法人財団石心会川崎幸病院)だ。氏は「発症4時間以内の片麻痺患者に対する4D Volume Scanの活用」と題した講演の中で、病院にて行っている、急性脳卒中の中でも発症4時間以内の片麻痺患者に対する専用のプロトコールを紹介。4D Volume Scanを用いた検査における、時間短縮と効率のバランスを考えた取り組みについて説明した(図1)。
図1 急性期の患者のためのプロトコール
福田幸太郎氏(東京女子医科大学八千代医療センター)は、「頭部領域におけるDEの活用」というテーマで、「Dual Energy CTでの撮影では脳におけるヨード造影剤の抽出精度向上が可能になった。出血か造影剤漏出かの状況を迅速に提供でき、術後管理において早期に反映できる可能性がある。同時に、同製品がそうした治療戦略の決定に寄与する情報を提供するためには、導入施設での一連のシステム環境を整備する必要がある」と述べた。
舘林正樹氏(AIC八重洲クリニック)は「CT-FFR使用報告」として、Vitrea Workstationを用いたCT-FFRの解析について、SF timeの4VolumeとFIRSTを用いることでFFR値の低下が抑制され、血管径約2mmを下限として良好な解析値が得られると述べた。虚血判定で得られているWire FFRとの相関がより良いものになる可能性もあるという。一方で要望として、解析速度と自動処理精度の向上が挙げられていた。
続いての特別講演は、赤羽正章氏(国際医療福祉大学三田病院放射線診断センター)のもとで開催。
まずは町田治彦氏(杏林大学医学部放射線医学教室)が「Precision の臨床と運用」と題し、「高精細CTであるAquilion Precisionを用いた撮影は、肺や骨における微細な構造の評価や病変の診断に有用である。ノイズの増加も懸念されるが、特に脳や腹部などの低コントラスト領域ではFIRSTの併用でこれも抑制が可能であり、高い空間分解能の恩恵は十全に受けられる」と話した(図2)。
図2 Aquilion Precisionによる頭部CTA
最後に船曵知弘氏(社会福祉法人恩賜財団済生会横浜市東部病院)が「救急での2room Angio-CT使用経験」をテーマに、部屋をまたいでCTガントリーが自走する2room Angio-CTを、メリットとデメリットの双方から紹介(図3)。CT中の急変への対応にすぐ移れたり、発生した問題の原因検索に透視を利用できたりと、ガントリーを隣室に移動できることによる柔軟性が高く評価されていた。その分大きいコストとスペースの確保は必要になるものの、日毎の撮影件数を増やすなどしてCTとAngio各々の稼働率を上げれば採算は取れるそうだ。
図3 2 Room Hybrid ER