単回医療機器再製造推進協議会、発足―一度のみ使用可能な医療機器の再利用へ―

2018.02.07
松本謙一氏
武藤正樹氏
上塚芳郎氏

 「単回医療機器再製造推進協議会発足」についての記者発表が2月2日(金)、日本ライフサイエンスビルディング(東京都中央区)にて行われた。
 単回医療機器とは、1回限り使用が可能とされる医療機器であり、EPカテーテルや電気メス等がこれにあたるが、その使用に関しては以前より環境面や金銭面の観点から、高価な医療機器を使い捨て使用とする事への疑問の声が上がっていた。そこで今回は、使用済みの単回医療機器を製造販売業者等が回収、分解、洗浄、再組立、滅菌等を行い、再度使用可能とする「再製造」に焦点があてられた。
 はじめに、松本謙一氏(一般財団法人松本財団)が、「再製造」の現状、課題として「医療資源の有効活用」「安全管理」「環境保全」「経済性」がある事に加え、同協議会への期待を述べた。
 一方、武藤正樹氏(国際医療福祉大学大学院)は、諸外国と日本の現状について次のような実態があるという。
 アメリカでは既に単回医療機器の再製造が広く普及しており、その安全性もデータにより広く認知されている。ドイツやEUといった各国も再製造について議論・検討を行っており、日本でも昨年7月、厚生労働省より新制度創設の通知が出され、現在は法整備が進められている。
そうした現状を踏まえた上で、上塚芳郎氏(東京女子医科大学)は「再製造」の難しさを指摘する。
単回医療機器は種類も多く、造りの単純なものから複雑なものまで様々存在する。EPカテーテルといった比較的容易に再製造が可能なものに対し、腹腔鏡手術等に用いる腹腔鏡については、その機能の複雑さもあり、再製造には相当の知識や技術が必要となるといった点から、全ての単回医療機器を再製造する事は現状難しい。また、日本の医療費請求方法では、出来高の包括支払方式が採用されている事もあり、請求額の詳細がみえづらい等の事から、単回医療機器を再製造する事でコストダウンするという考え方は、あまり表出してこなかったという。加えて再製造への衛生面や安全面への不安の声も存在し、日本国内では議論が伸び悩んでいた。
こうした背景から、単回医療機器再製造に関する事業や技術を、広く普及させるため、同協議会は発足した。同協議会は団体のみでは無く、「再製造」にあたる個々の企業や事業者、個人等から結成されており、こうした特徴を活かし、個々の声をより正確な形で全体に伝え、共有していく事で、国民医療への貢献を行う事が出来るのではと期待される。
各国での普及が進むにつれ、その安全性も証明されつつある今、単回医療機器再製造については、未だスタート地点に立ったばかりとも言える日本だが、同協議会は行政機関との意見調整も積極的に行っていく姿勢を見せており、活動を通じた単回医療機器再製造の普及・発展に期待が高まる。