島津製作所、第95回レントゲン祭開催

2018.02.20
伊藤邦昌氏
陣崎雅弘氏
 島津製作所は2月9日(金)、同社三条工場(京都市中央区)にて第95回レントゲン祭を開催した。ヴィルヘルム・レントゲン氏への哀悼の意を示すと共に、本年は画像診断の進歩に関する記念講演会が行われた。

 まず、伊藤邦昌氏(島津製作所常務執行役員医用機器事業部長)より式辞が述べられ、同社製品についてAIやディープラーニングを活用し、問診形式での推論に用いるなどしたいと、注目を集める技術への意欲が語られた。
 上田輝久氏(同社代表取締役社長)による弔辞と献花の後は陣崎雅弘氏(慶応義塾大学)によって「放射線医学の今後の方向性」と題した記念講演が行われた。
 画像診断技術はレントゲン氏による1895年のX線発見に始まり、以降様々なモダリティが生まれ、各々に進化を遂げてきた。陣崎氏はこれからの画像診断におけるキーワードに「定量化」と「シミュレーション」を挙げる。
 氏によると、CTの更なる多列化と検出能、性状診断能の向上は定量化の時代をもたらしたという。SPECTなど高コストを要する検査を、サブトラクション処理によってCTでも安価に行えるようになった。これは定量化の功績であるという。
 シミュレーションの1例として、氏はFFRCTに触れた。FFRCTは心臓のCTデータから血流動態を再現し、冠動脈各部におけるFFRを算出するもので、従来とは違う低侵襲の検査が行えるようになった。
これからのCTについて、昨年、慶應義塾大学病院に世界第1号機が導入された立位CTが紹介された。臥位では見つけづらい病変を見つけられることができるほか、立位での機能診断も行うことができる。ロコモティブシンドローム、COPD、変形性関節症などの病変が見つけやすくなることが期待される。
 このように検査の質がよくなる一方、必然的に扱うデータ量も膨大になる。氏はそのために人工知能の自動診断は必須であるとも述べた。病変検出と典型例の診断をAIが、非典型例の診断や最終的な診断の確定は放射線科医が担うといったように、AIによる読影支援がなされれば作業の効率化や負担の軽減も図れ、放射線科医の不足や検査数の増加にも対応できる。
 核医学の分野ではアミロイドイメージングによる認知症の早期診断が可能になった。これについて氏は2月1日公開の、島津製作所と国際長寿医療研究センターの共同研究により確立された、血液0.5mlから脳内のアミロイド異常蓄積の有無を推定する検査法(https://www.shimadzu.co.jp/news/press/n00kbc000000f09d.html)を取り上げた。また同社に対しては、これからは効率よくスクリーニングする手段が求められており、その開発を期待するとした。

弔辞の様子