磁気共鳴塾、キヤノンメディカルシステムズと「磁気共鳴塾2018」を共催

2018.03.07
松島孝昌氏
重森景子氏
守屋 勝氏
高橋沙奈江氏
似鳥俊明氏
水村 直氏
 2018年2月24日(土)、AP東京八重洲通り(東京都中央区)にて、磁気共鳴塾はキヤノンメディカルシステムズ(株)と「磁気共鳴塾 2018」を共催した。
 開会の挨拶は代表世話人の似鳥俊明氏(杏林大学医学部最先端医学研究講座)、副代表世話人の小林邦典氏(杏林大学保健学部診療放射線技術学科)、当番幹事の松島孝昌氏(社会医療法人社団慈生会等潤病院放射線科)が務め、昨年までの「東芝磁気共鳴塾」から名前を変更したことに触れ、世話人会の主導で地域・全国ともに学びの場を作っていく意向を語った。
 松島孝昌氏が座長を務めた講演会では、始めに重森景子氏(大日本印刷)がVSRADの処理フローの概略と、最新のVSRAD advance 2について説明した。VSRAD Advance 2の関心領域はこれまでの内側側頭部に背側脳幹が追加、これによって従来は困難だったアルツハイマー型認知症(以下AD)とレビー小体型認知症(以下DLB)の鑑別が行えるようになっている。同ソフトウェアは単体で鑑別診断を行うことを目的とはしておらず、臨床的にAD或いはDLBが疑わしい症例において、関心領域の萎縮を解析し診断を支持する所見とするためのものである。
 続いて守屋 勝氏(松戸市立福祉医療センター東松戸病院放射線科)が、Titan 1.5TによるVSRADとMRSを併用した5年間の認知症撮像経験を語った。松戸市では認知症患者にやさしい地域づくりを目指して、認知症について正しく理解し自分の出来る範囲で患者やその家族を応援する「認知症サポーター」の養成講座を開くなどの取り組みがされており、氏も「認知症患者の特性をよく理解し検査を進めることでよりよい画質を得ることができ、患者に有用な検査を行うことができる」という。また取り上げた症例から、MRSによる脳内物質の機能的解析とVSRADによる海馬萎縮の形態的評価を併用したMRI検査は、早期AD及びAD予備群のスクリーニングに有用であるとした。
 高橋沙奈江氏(杏林大学医学部附属病院放射線部)は「最近の3D事情~頭部におけるメリット~」と題して頭部3D撮像画像と撮像法ごとの特長を解説。3D画像の利点について、2D画像に比べ薄いスライス厚で撮像でき微小病変の検出に役立つことや、任意の方向からMPR再構成が可能であり、+αでVR画像を作成することで診断支援の向上に繋がることであると話した。特に3D T1 MPVは全脳ないし限局した範囲に高いblack blood効果が得られることから頭蓋内血管壁の描出に有効であり、3D FLAIR MPVはvolume全域にIRパルスを励起するためCSFフローアーチファクトの影響を受けずに撮像できると氏は強調する。
 特別講演は似鳥俊明氏が座長を務め、VSRADの開発に携わった水村 直氏(東邦大学医療センター大森病院放射線科)から、同ソフトウェアの画像処理におけるチェックポイントが紹介された。氏は注目すべき点として組織分割と大脳皮質厚、統計画像上での萎縮分布、全体の萎縮に対する海馬萎縮の選択性を挙げ、最後に「マルチモダリティの時代となっているものの、検査1つ1つが独立して行われるために、放射線科内でさえ日常検査を一括管理するシステムが求められる。また複合的な画像処理及び後解析のできる画像管理体制が望まれており、これによるモダリティ間の垣根の解消に期待したい」と結んだ。