開会の挨拶は黒川貴史氏(GEヘルスケア・ジャパンクリニカルケア・ソリューション本部長)。
近年アジアを中心に、世界的に肝疾患(肝硬変、肝内炎症、肝線維化、肝臓がんなど)が増えている。現状、肝疾患の発見には肝生検が主流であるが、肝臓に直接針を刺すため身体的負担があり、繰り返し行うのがためらわれる。医師・患者両者の負担軽減のため、より簡便な肝検査が行える超音波診断装置の需要が見込まれる。
同社の超音波診断装置である「LOGIQ S8 FS」は日本主導で製品企画・開発が行われた。同製品は、日本で特に要望があった「肝硬度の測定装置と超音波診断装置を一つで診断したい」という声を取り入れている。中でも大きなメリットは”省スペース”。本来であれば2台の装置が必要なところ、1台で検査可能なため、肝疾患連携拠点病院や肝臓専門医のいるクリニックなどの比較的小規模な施設でも導入の検討ができるだろう。
続いて、泉 並木氏(武蔵野赤十字病院院長)が「肝疾患の最新情報」について語った。
2008年以降増えているという、脂肪肝を成因とする肝硬変患者。肝生検以外で患者予備軍を診断する方法として、血液検査、超音波エラストグラフィ―(TE)、MRIエラストグラフィ―(MRE)があるが、肝硬変の成因によって診断方法が違う場合があるそうだ。例えば、C型B型肝炎が要因の場合は血液検査で見つけだすことができるが、NASHの基準値は検討中のため判断が難しい。非侵襲的な診断方法は多く存在するが、患者に合わせた選択が必要だ。泉氏は「より効率的に患者予備軍を見つけ出す方法を模索していくべきだ」と締めくくった。
次に、飯島尋子氏(兵庫医科大学病院超音波センターセンター長)。「超音波による肝硬度測定は、血液検査よりもはるかに診断率が高いという報告が2005年の論文でなされているが、問題点も存在する。肝炎症や腹水がある場合に正しく測定ができないことだ。また、脂肪肝の場合も超音波測定では診断できない。」「しかし、SWE(Share Wave Elastography)を利用すれば、腹水がある場合も正しく診断可能であり、FibroScan付加機能であるCAP(Controlled Attenuation Parameter)を使用すれば肝脂肪化の測定も可能だ。NASHの場合、脂肪肝と線維肝どちらも診断する必要があるため、SWEとCAPの2つが搭載された超音波測定装置は有用である。」
さらに「NASH予備軍を見つけ出すには、超音波エラストグラフィ―が活用できるだろう」と期待をにじませた。
続いて建石良介氏(東京大学医学部附属病院消化器内科)は、脂肪肝の重要性の背景と、患者予備軍拾い上げの提案について語った。
90年代から00年代にかけて肥満人口が急増し、それに伴い、肝細胞がんの原因となる糖尿病・脂肪性肝疾患が増加している。非アルコール性脂肪肝のうちNASHは、進行により肝硬変や肝がんを発症する。そのため、早い段階での治療を要する。
建石氏が提案した具体的な肝検診は次のようなものだ。FibroScanを用いて肝硬度と肝脂肪率を測定し、脂肪肝と認められた人にはCAP測定を続けて生活指導を行う。肝硬変と診断された人にはがんの可能性もあるため、より詳しい検査を実施する。
建石氏は「がんの発生を未然に防ぐためにも、人間ドッグなどの検診で多くの方を診断する必要がある」と、強く訴えた。
最後に、中島 淳氏(横浜市立大学付属病院肝胆膵消化器病学主任教授)。「10数年前、NASHは日本ではあまり重要視されていなかったが、糖尿病患者の肝硬変や肝臓がんの発生が問題を受け診断の必要性がでてきた。NASH/NAFLDは、線維化の重症度が高いほど予後が悪いという結果が出ている。NASHかNASHでないかよりも、線維化の重症度を診る必要がある。」
また、肝生検施行上の問題としてサンプリングエラー、医師による診断の不一致、合併症を挙げ、「肝生検に変わって注目されているエラストグラフィ―へシフトするためには、国際標準化が必要だ。そのために、BMIや人種、施設による違いなどの問題点を取り除くことが今後の課題である。」と締めくくった。
パネルディスカッションにおいても、「超音波測定装置による肝診断を健康診断に取り入れて欲しい」と、各先生から強い要望があり、実際に導入するまでには、機材の購入や保険の適用、他にも様々な障害があるが、それらの早期解決が望まれることは言を俟たない。