株式会社アゼモトメディカルは2018年3月10日(土)、WTCコンファレンスセンター(東京都港区)にて被ばく線量管理に関するセミナーを開催した。
畦元将吾氏(株式会社アゼモトメディカル代表取締役)が登壇し、開会の挨拶を述べた。
近年話題となっている医療被ばく量。事実、日本の医療被ばくは世界平均と比べてもかなり高い数値となっており、医療現場での管理の要求が予想される。
同社の新製品である「DOORS WEB」は、医療被ばくの情報管理システムだ。自施設の検査状況管理、患者毎の被ばく線量管理、他施設との撮影条件の比較参照を行うことができる。平成30年度の診療報酬改正による画像診断管理加算3の追加もあり、同製品の需要は益々大きくなると予想される。
最初に、井田義宏氏(藤田保健衛生大学病院放射線部副部長)は、被ばく線量管理システムの重要性と将来性について「個人被ばく線量について厳しい昨今、線量の最適化や線量による被検者へのリスクを考えて線量評価が重要視されている。被ばく線量管理システムが導入される前までは最適化ツールを使用し各設定を行っていたが、この最適化ツールでは標準体重(成人50~60kg)を用いているため標準体重以外の被検者には最適であるとは言い難い。またこれにより施設ごとに決められている検査プロトコルの線量にばらつきが出てしまい、最適化ツールのみでは自施設内での線量の条件設定が難しい。これらを解決に導くのが被ばく線量管理システムである。サーバーを介して他施設と情報を共有することで標準体重以外の被検者への設定も容易になる。またそれだけでなく自施設内の個人線量管理も可能であり、今後被ばく線量管理システムがさらに広がっていけば被検者への被ばく線量は間違いなく低減し、国民全体の健康管理にも繋がっていくだろう」と述べた。
続いて西田 崇氏(大阪府立急性期・総合医療センター)は医療被ばく情報管理システム「DOORS WEB」の使用経験について、「医療被ばく管理については各施設独自に記録を残している場合が多い。同製品はクラウド型情報システムであるため他施設との線量等の比較・参照ができる。自施設の線量の適正化が可能となることで施設間の差が小さくなり、検査の妥当性・客観性を高めつつ自施設内の線量管理も容易に行える。またDOORS WEB特有のTagging機能を用いることで検査名の統一が可能となりデータの集積が簡単に行えるようになった。従来まではデータ収集方法やモダリティごとにPC別で管理を行っていたため線量管理が非常に困難で推進されてこなかった。だがこれからは診療報酬改定も踏まえて低コストで施設全体の線量管理を行い、ソート機能を利用しモダリティごとに他施設と比較することで適切な管理ができ統計的な解析が可能となる」と語った。
最後に、横田 浩氏(日本放射線技師会理事)が「医療被ばくに関する本会の事業について」の特別講演を行った。
「日本放射線技師会では、被ばく評価ソフトの実践的な習得のため、定期的な実践医療被ばく線量評価セミナーを実施している。同会は医療被ばく低減施設認定事業も行っており、必須項目には、検査・治療ごとのガイドラインとの比較検討や被ばく情報の記録、同会の制度によって認定された放射線管理士・放射線機器管理士の在籍などが挙げられる。 診断参考レベル(DRLs2015)の周知にも努めており、各地域での講演会や、被ばく線量適正化講習会を開催している。前出の医療被ばく低減施設の認定に関しても、DRLs2015との比較を取り入れている。その他にも、被ばく相談員の育成にも尽力しており、一般の方々への放射線知識の伝達に努めている」と話した。