アルニラム、RNA干渉療法の治験薬パティシランが遺伝性ATTRアミロイドーシスの症状を軽減 熊本大学での国際シンポジウムでAPOLLO第Ⅲ相試験結果を発表

2018.03.26

  RNA干渉治療薬の開発をリードするアルニラム製薬は、遺伝性ATTRアミロイドーシスの治療に用いる治験薬、パティシランのAPOLLO第III相試験で追加的に得られた結果を、2018年3月26日から熊本大学で開かれている「第16回アミロイドーシス国際シンポジウム」で発表する。同疾病の治療のために皮下投与するRNAi治療の治験薬であるALN-TTRsc02の第I相試験で得られた新たなデータも、併せて発表する。

  これについて、アルニラム社の副会長兼TTRプログラムジェネラルマネージャーであるエリック・グリーンは、「hATTRアミロイドーシスは徐々に身体が消耗する希少疾患で、これまで効果的な治療法がありませんでしたが、この病気がもたらす神経、心臓、自律神経系の症状をパティシランが軽減できるということが、今回のISAのシンポジウムで発表するデータで明らかになりました。このシンポジウムでは関連する9つの発表を行いますが、パティシランの臨床試験で追加的に得られた安全性、有効性のデータが報告され、この中にはトランスサイレチンのノックダウンと臨床有効性との関連性および心症状に対するパティシランの作用を示すデータも含まれています。また当社は今後、ALN-TTRsc02に関する追加的臨床データの公表も予定しており、2018年末に第III相試験に移行する準備を進めています」と述べている。

  ISAでの発表はすべて2018年3月28日(水)午後1~2時に行われ、その内容は以下のとおりである。

  • 「トランスサイレチン型家族性アミロイドーシス患者のためのRNAi治験薬であるパティシラン:第III相APOLLO試験における日本人患者のサブ解析」
          (発表者:熊本大学大学院医学教育部神経内科 山下太郎先生)
  • 「トランスサイレチン型家族性アミロイドーシス患者へのRNAi治験薬パティシランの長期投与:患者背景および多国間非盲検延長試験の予備データ」
          (発表者:Ole Suhr, Department of Public Health and Clinical Medicine, スウェーデン・ウメオ大学)
  • 「トランスサイレチン型家族性アミロイドーシス患者のためのRNAi治験薬であるパティシラン:第III相APOLLO試験における日本人患者のサブ解析」
          (発表者:熊本大学大学院医学教育部神経内科 山下太郎先生)
  • 「トランスサイレチン型家族性アミロイドーシス患者へのRNAi治験薬パティシランの長期投与:患者背景および多国間非盲検延長試験の予備データ」
          (発表者:Ole Suhr, Department of Public Health and Clinical Medicine, スウェーデン・ウメオ大学)
  • 「トランスサイレチン型家族性アミロイドーシス患者のためのRNAi治験薬であるパティシラン:APOLLO試験の地域および遺伝子型サブグループ解析」
          (発表者:Teresa Coelho, ポルトガル・サンアントニオ病院)
  • 「トランスサイレチン型家族性アミロイドーシスの治療薬パティシランの第III相試験であるAPOLLO試験:心病変を有する患者サブグループにおける18ヶ月後の安全性および有効性」
          (発表者:Arnt Kristen, ドイツ・ハイデルベルグ大学病院)
  • 「トランスサイレチンのノックダウンとmNIS+7の変化の関連性:トランスサイレチン型家族性アミロイドーシス患者を対象としたパティシランの第II相非盲検延長試験およびAPOLLO第III相試験で得られた知見」
          (発表者:Michael Polydefkis, 米ジョンズホプキンス大学ベイビューメディカルセンター)
  • 「RNAi治験薬パティシランの投与後にトランスサイレチン型家族性アミロイドーシス患者にみられたニューロパチーの病期の変化」
          (発表者:Alejandra Gonzalez-Duarte, メキシコ・Instituto Nacional de Ciencias Médicas y Nutrición)
  • 「トランスサイレチン型家族性アミロイドーシス患者によるRNAi治験薬パティシランの自宅投与:安全性と遵守度の分析」
          (発表者:Julian Gillmore, 英ロンドン大学医学部)
  • 「トランスサイレチン型家族性アミロイドーシスがもたらす日常生活および労働生産性への影響:APOLLO試験の投与前成績」
          (発表者:John Berk, 米ボストン大学)
  • 「トランスサイレチン型家族性アミロイドーシスがもたらす保健サービス利用度への影響:APOLLO試験の分析」
          (発表者:Hartmut Schmidt, ドイツ・ミュンスター大学病院)
  • 「トランスサイレチン型アミロイドーシスの治療のための皮下投与用RNAi治験薬、ALN-TTRsc02の第I相試験」
          (発表者:John Vest, アルニラム社)

パティシランについて
  パティシランは、トランスサイレチン型家族性アミロイドーシスの治療のたに開発中のトランスサイレチンを標的とする静脈投与用RNA干渉治療の治験薬だ。特定のメッセンジャーRNAを標的とし、ノックダウンするためにつくられており、TTRタンパク質の産生を未然に遮断できる可能性をもっている。これは末梢組織に沈着したTTRアミロイドを除去し、これらの組織の機能を回復させる助けとなる可能性がある。パティシランの安全性および有効性は、これまでに米国医薬品局やその他の国の保健当局による評価を受けていない。

ALN-TTRsc02について
  LN-TTRsc02は、ATTRアミロイドーシスの治療のために開発中のトランスサイレチンを標的とする皮下投与用RNAi治験薬だ。特定のメッセンジャーRNAを標的とし、抑制するためにつくられており、TTRタンパク質の産生を未然に遮断できる可能性がある。これは末梢組織に沈着したTTRアミロイドを除去し、これらの組織の機能を回復させる助けとなる可能性がある。パティシランの安全性および有効性は、これまでに米国医薬品局やその他の国の保健当局による評価を受けていない。ALN-TTRsc02は、アルニラム社のESC-GalNAc-siRNA抱合技術を利用して、力価および持続性の高い皮下投与を可能にしたものだ。この技術の有意性については調査中である。

APOLLO第III相試験について
  APOLLO第Ⅲ相試験は、多発末梢神経障害をきたしたhATTRアミロイドーシス患者におけるパティシランの有効性、安全性を評価するためにつくられた無作為化二重盲検プラセボ対照多国間試験だ。本試験は2017年8月に終了し、詳細な試験成績が2017年11月2日の第1回「患者と医師のための欧州ATTRアミロイドーシス会議」で発表された。APOLLO第III相試験を終了したすべての患者は、多国間非盲検延長試験のための選別で適格とされ、パティシランの継続投与を受ける機会を得た。

hATTRアミロイドーシスについて
  トランスサイレチン型家族性アミロイドーシスとは、遺伝性で徐々に身体を消耗させ、死に至ることの多い疾患で、TTR遺伝子の変異によって引き起こされる。TTRタンパク質は主として肝臓で生成され、通常はビタミンAの担体となる。TTRの変異により異常なアミロイドタンパク質が蓄積し、末梢神経や心臓といった臓器および組織に損傷を与え、難治性の末梢感覚神経障害、自律神経障害や心筋症の発症に至る。hATTRアミロイドーシスは罹患率、死亡率が高く、世界中で50,000人が罹患しているが、有効な治療法がみつかっていない。生存期間中央値は診断後4.7年で、心筋症をきたした患者の生存期間はより短い3~4年だ。承認済みの治療選択肢は、疾患初期の肝移植およびタファミジスのみだ。hATTRアミロイドーシス患者の治療に役立つ新薬に対しては、大きなニーズが存在している。

LNPテクノロジーについて
  アルニラム社は、LNPテクノロジーをRNA干渉療法の製品に使用するにあたり、アルブータス・バイオファーマ社から脂質ナノ粒子の知的財産権に関するライセンスを受けている。

RNAiについて
  RNAiとは、遺伝子サイレンシングという自然な細胞内プロセスで、今日の生物学および新薬開発において最も有望かつ急速に進歩している研究の最前線の一つである。この発見は「科学における10年に1度の大発見」とも報じられ、2006年のノーベル生理学・医学賞の受賞によって広く知られるようになった。この細胞内で生じる自然のプロセスであるRNAiを利用した新クラス薬剤としてRNA干渉治療薬が開発されつつある。アルニラム社のRNAi治療プラットフォームを包含したRNAiを媒介する分子である低分子干渉RNAは、疾患の原因となるタンパク質をコード化する遺伝子の前駆体のメッセンジャーRNAを強力に抑制することにより、既存の医薬品が作用する段階よりも上流でその機能を発揮し、それらのタンパク質が作られるのを予防する。これは遺伝疾患やその他の疾患をきたした患者の治療に変革をもたらす可能性のある新たなアプローチだ。

アルニラム社とサノフィジェンザイム社との提携について
  2014年1月、アルニラム社とサノフィのスペシャリティケア・グローバルビジネス・ユニットであるサノフィジェンザイム社は、世界各地の遺伝性希少疾患の患者にとって革新的な新クラス薬剤となる可能性があるRNA干渉療法の研究開発を加速させるために提携契約を締結した。この契約は、サノフィジェンザイム社にアルニラム社の新規RNA干渉技術を加えて、希少疾患分野のパイプラインを拡大することを可能にし、アルニラム社の研究開発部門へのアクセスを与える一方、アルニラム社は新薬開発後期を推進し、市販後はこれら有望な遺伝子製剤の市場アクセスを加速させるため、サノフィジェンザイム社が持つ国際的ネットワークの恩恵を受けることになる。

  2018年1月、アルニラム社とサノフィジェンザイム社は契約を締結し直し、アルニラム社には治験薬パティシランおよびALN-TTRsc02を含めたATTRアミロイドーシスの治療製品の開発および反対のすべての権利を、サノフィジェンザイム社には血友病およびその他の希少出血疾患を治療するRNAi治験薬フィツシランの開発、販売のすべての権利を与えた。サノフィジェンザイム社は、今後もグローバルライセンスの1ケ所での権利だけでなく、米国、カナダ、西欧以外の地域における開発および販売のためのアルニラム社のほかの希少遺伝性疾患プログラムに登録する権利を引き続き保有する。

アルニラム社について
  アルニラム社は、RNA干渉技術を、希少な遺伝性、心代謝性および肝感染性疾患をきたした患者を対象とした新しいクラスの革新的医薬品に応用するリーディング企業だ。ノーベル賞を受賞した知見に基づき開発されたRNA干渉療法は、多岐にわたる重症の消耗性疾患に対する臨床現場で検証された強力なアプローチである。アルニラム社は、2002年の創立以来、科学の可能性を実現するという大胆なビジョンのもと、現在開発後期にある4候補製品を含め、治験薬の強固な創薬プラットフォームと充実したパイプラインを有している。アルニラム社は今後も「アルニラム2020」戦略を実行し、治療選択肢が限られているか十分でない患者のニーズに対応するため、持続可能なRNA干渉療法のパイプラインを保有し、複数の製品を販売するバイオ医薬品企業となるために前進している。アルニラム社は米国マサチューセッツ州ケンブリッジに本社を置き、米国および欧州で700人を超える社員を擁している。詳細は以下のアルニラム社広報窓口へ。

●お問い合わせ先
Alnylam Pharmaceuticals, Inc.
広報・IR担当:Christine Regan Lindenboom
TEL:+1 617 682 4340 (米国)
URL:http://www.alnylam.com/

日本における広報窓口
株式会社コスモ・ピーアール
担当:有滝、高橋
TEL:03-5561-2915