~再狭窄を防ぐ薬剤放出調整能力と耐久性の向上により患者のQOL向上に貢献~
ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社は、末梢動脈疾患(PAD)に対する薬剤溶出型ステントで本邦初となる、生体適合性材料のフルオロポリマーを搭載した自己拡張型ナイチノールステント「ELUVIA™ステント」を発売した。
末梢動脈疾患(PAD)の治療法の一つである血管内治療では、術後再狭窄が課題とされてきた。ELUVIA™ステントは、生体適合性材料のフルオロポリマー(冠動脈ステントとして全世界で1000万例以上留置されている)の搭載により、薬剤(パクリタキセル)の持続的な放出と、耐久性の向上を実現することで、ステント留置後の再狭窄を予防し、再治療のリスクを低減させる。
東邦大学医療センター 大橋病院 循環器内科 中村 正人 先生は「PADは、症状が進行すると痛みや歩行困難を起こし、患者さんのQOLを大きく損なう疾患です。治療にあたり、カテーテル治療は外科的治療に比べ低侵襲で患者さんの負担が少ない治療ですが、再狭窄、再閉塞が起き、再治療が必要になることも多かったのが課題でした。ELUVIA™ステントの国内承認によって、再治療の減少と患者さんの症状改善に期待ができ、患者さんのQOL向上に貢献ができることをうれしく思っています」とコメントしている。
■臨床試験結果について
84名の日本人を含む465名の患者を対象に、浅大腿動脈(superficial femoral artery :SFA)を対象にした初の薬剤溶出型ステント直接比較試験であるIMPERIAL試験では、有効性と安全性の主要評価項目が証明された。本試験において、ELUVIA™ステント治療群の患者さんにおける12ヵ月後の一次開存率がカプランマイヤー推定値で88.5%と、他の薬剤溶出型ステント治療群の患者さんの79.5%と比較すると有意な結果となった(p=0.0119)。さらに、他の薬剤溶出型ステント治療た群の患者さんで観察された12ヵ月時点の標的病変の血行再建実施率9.0%と比較すると、ELUVIA™ステント治療群の患者さんはその半分の4.5%であった。 本試験結果は、今年9月に米国で開催された心臓血管カテーテル学会議(TCT)やポルトガルで開催された欧州IVR学会(CIRSE)でも発表された。また、50名の患者さんを対象に、病変の部位が長い症例に限定したIMPERIAL Long Lesionサブスタディ においても、12か月の一次開存率のカプランマイヤー推定値で87.9%と良好な成績が示された。
■製品特長
再狭窄が最も起こりやすい時期まで持続的に薬剤を放出
PADの治療を行う浅大腿動脈(SFA)は、再狭窄が持続して進行し、約12ヶ月後にピークを迎えます(グラフ①)。本製品は、ポリマーを搭載することで最も再狭窄が起こりやすい時期を超えて長期間薬剤の放出が維持されるように設計されている(グラフ②)。
グラフ①SFA再狭窄のクリニカルヒストリー*1 グラフ②持続的薬剤放出調整能*2
浅大腿動脈(SFA)の力学的ストレスにあわせた最適な強度、柔軟性およびステント断裂を防ぐ耐性(フラクチヤー耐性)
末梢動脈疾患の治療の際に本製品が留置されるSFAは、延伸、収縮といった強い力学的ストレスが発生し、再狭窄に強い影響を及ぼす。安定性と均一性を持たせるクローズドセルと、柔軟性とフラクチヤー耐性をもたらすオープンセルを組み合わせたハイブリッドステント構造など、製品設計を最適化すると共に、ポリマーの搭載による高い耐久性と、小さな力でステントを展開できる展開能を実現している。
■末梢動脈疾患(PAD)について
末梢動脈疾患(PAD)は、動脈硬化により足や手などの血管が詰まる疾患で、糖尿病や高脂血症、高血圧といった疾患と強い因果関係がある。はじめは無症状だが、次第に痛みや腫れが起き、生活の質(QOL)の低下をもたらす。血流が再開・維持されず、重症化すると患肢の切断に至る場合もある。運動機能に影響を与えることから、生活習慣病をさらに悪化させ、心筋梗塞などを引き起こすリスクもある。患者数は年々増加し、国内の潜在患者数は約300~400万人と推測されており*1、特に、腎不全など他の疾患を併発した複雑病変の方が多いといわれている。治療には運動療法や薬物療法もあるが、さらに改善が求められる場合には、バルーンカテーテルによる拡張やステント留置が行われるが、手術後にも再狭窄、再閉塞が起きるリスクが高く、再治療が必要となることが課題とされている。症状が重症化した場合には、外科的なバイパス手術が行われることもある。
*1: (出典)Iida, O et al. Catheterization and Cardiovascular Interventions, 2011; 78: 611-617
*2: (出典)前臨床薬物動態解析、ボストン・サイエンティフィック社内資料、および、Dake MD, et al. Journal of Vascular and Interventional Radiology 2011; 22(5): 603-610 非臨床および前臨床試験や結果は臨床成績を示すものではない。270日以降の薬剤放出量は、270日時点の残存薬剤量と、それまでの放出曲線を元に算出した推定値
*3:(出典)平成24年度 次世代医療機器評価指標作成事業 重症下肢虚血分野 審査WG報告書
●お問い合わせ先
ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社公式WEBサイト
http://www.bostonscientific.jp