がん対策推進起業アクション、がん対策に積極的に取り組んだ優良企業を表彰

2019.03.08
佐々木昌弘氏
中川恵一氏
★ がん対策推進起業アクションは、3月5日(火)、東京大学鉄門記念講堂(東京都文京区)において「平成30年度がん対策推進企業アクション 統括セミナー」を開催。平成30年度、がん対策に特に積極的に取り組んだ企業への表彰を行った。
 厚生労働大臣賞に輝いたのはヤフー株式会社。同社はがん検診の受診率向上のため、全社員を対象として「がん検診と早期治療の重要性」等に関するe-ラーニングを毎年実施し、定期健康診断はがん検診の項目を組み込むとともに勤務時間内に受診可能。社員の意識向上とともに検診も受けやすい環境づくりに取り組んでいる。また社内独自の「治療と就労の両立支援プログラム」の策定、健康相談窓口の設置など、主治医と産業医の連携を図りながら個別性のある支援体制が作られている。社内ポータルサイトへの「がん予防と対策」の掲示や社内の健康イベントでの冊子配布などを行い、社員の家族に対してもパンフレットを配布するなど広い対象への情報提供も評価された。
 がん対策推進パートナー賞「検診部門」を受賞したのは、新潟県の研冷工業株式会社。同社では社長自ら朝礼でがんに関する情報を発信するとともに、社員共有のネット掲示板に掲示して周知を行っている。これにより社内の35歳以上の対象者における胃がん、肺がん、大腸がんの検診受診率が100%を達成した。
 同「がん治療と仕事の両立部門」はローソン株式会社。同社では2018年9月に専門スタッフの常駐する「ローソングループ推進センター」を新設。罹患した社員及びその上司の相談窓口や、産業医との架け橋となっている。また個別事情によっては主治医、産業医、本人と確認の上で在宅ワークも認めるなど就労の意志を尊重した柔軟な対応もあり、広く手厚く健康を支援する体制が高い評価を受けた。
 同「がんの情報提供部門」を受賞したのは株式会社ポーラ。2018年より「がん共生プログラム」をスタートさせた同社では、医療制度やがん経験者の声を掲載した冊子を、従業員のみならずビジネスパートナーに向けても作成し、社内に留まらない情報発信を行っている。また健保組合、健康管理センターと連携したセミナーの開催や健康診断の結果に関連した健康情報を発信するポータルサイトを導入するなど、範囲、手法ともに多様な情報提供でがん対策の輪を広げている。
 表彰後は佐々木昌弘氏(厚生労働省)から、第3次がん対策推進基本計画についての講演がなされた。「がん患者を含めた国民が、がんを知り、がんの克服を目指す」を全体目標とするこの計画は、特にがん予防、がんゲノム医療、希少がんやAYA(Adolescent and Young Adult)世代のがん対策、緩和ケアや社会連携によるがんとの共生などに注力されているという。
 続いて中川恵一氏(東京大学)は、日本におけるがん罹患率の上昇と併せ、自身も膀胱がんを発症した際の体験を語った。がんの体験を経てわかったこととして、早期がんはほぼ治癒でき、かつ早期の対応が重要になることを訴えた氏は、同時にその機会を逃し得る日本人のヘルスリテラシーの低さや検診受診率の低さに警鐘を鳴らした。