本邦初1非弁膜症性心房細動による脳卒中を予防する左心耳閉鎖システム 「WATCHMANTM左心耳閉鎖システム」新発売~脳卒中を引き起こす血栓形成に起因する左心耳を閉鎖し、1回限りの手技で予防を可能に~

2019.09.03

 ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社は、本邦初となる左心耳閉鎖システム「WATCHMANTM左心耳閉鎖システム」を2019年9月2日より発売した。
 本製品は、非弁膜症性心房細動による血栓の形成に起因する心臓の左心房にある「左心耳」を閉鎖し、脳卒中を予防する医療機器で、非弁膜症性心房細動を罹患し長期間の抗凝固薬の服用ができない患者さんに対して、1回限りの手技で心房細動による脳卒中を予防するという新しい治療の選択肢を提供する。

販売名:WATCHMAN左心耳閉鎖システム(医療機器承認番号:23100BZX00049000)

 
 心房細動により、心臓にできた血栓が原因となる心原性の脳卒中の場合、血栓形成の約9割が左心房にある「左心耳」に起因するといわれている。WATCHMANは、開心術をする必要がなく、鼠径部の静脈から細い管(カテーテル)を通して心臓に挿入され、左心耳を閉鎖し、脳卒中のリスクを低減する。また、出血リスクを伴うワルファリンの服用を中止できる可能性がある。
 東邦大学医療センター大橋病院の循環器内科准教授原 英彦先生は、「高齢社会で心房細動の患者数が増加する中、心房細動による脳卒中が要介護状態を引き起こすリスクがあることから、有効で安全に脳卒中を予防する治療法が待ち望まれていました。従来の抗凝固療法では長期にわたる服薬のため出血リスクの懸念があったり実際には服用できない患者さんも多くいたりしましたが、WATCHMANTMは、1回限りの手技で心房細動による脳卒中の予防を行う画期的な治療方法です。『人生100年時代』といわれる中、疾患に悩みながらもアクティブに生活したい患者さんの負担を軽減し、QOLを向上させることも期待できます」とコメントされている。

 本製品に関して、日本循環器学会より、適正使用指針および実施施設認定のフローが定められた。ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社では、本指針に基づき、WATCHMANTMが心房細動をもち脳卒中の発症のリスクがある患者さんに貢献できるよう、適正使用の推進に努めていく。また、費用対効果の観点も含めたリアルワールドデータの構築にも取り組んでいく。
 
 
 

■臨床試験の結果について

 WATCHMANTMは、2,000名以上を対象とした複数の臨床試験で評価されている。1,114名を対象としたPROTECT AF試験およびPREVAIL試験の2件のランダム化臨床試験により、ワルファリンと比較して出血性脳卒中リスク低減に加えて、長期的な出血性イベントの低減が確認された。ワルファリンとの比較において、心血管死/原因不明の死亡は52%低減(p=0.006) 2、手技6ヶ月以降の大出血は72%低減(p<0.001)3、出血性脳卒中は78%低減(p=0.004) 2という結果となった。また、PROTECT-AF試験およびPREVAIL試験のメタ解析によって、WATCHMAN留置期間が長いほど、出血性イベントが低減すると共に、WATCHMAN群はワルファリン群に比べて手技6ヵ月後の大出血が72%少ないことが確認された(1.0対3.5、P<0.001)3
 また、42名の日本人を対象としたSALUTE試験においても、有効性に関して脳卒中、全身性塞栓症、心血管死の発現率、安全性に関して周術期の重篤な合併症の発現率を評価し、それぞれの主要評価項目が確認されると共に、全患者さんでワルファリンの服用が中止される結果となった。手技から1年後の経過を調べた試験結果では、虚血性脳卒中が2例(4.8%)認められたが、いずれも身体に障害は認められず、入院も必要ない軽度のものであったことから、WATCHMANTMとの関連は極めて低く、塞栓性の脳梗塞ではないと判断された。また、出血性脳卒中や全身性塞栓症、心血管死は認められなかった。左心耳の閉鎖については、経食道心エコーにより42例全例とも留置後1年まで左心耳が適切に閉鎖されていることが確認された。
 
 
 
 

 
■製品特長
①左心耳内部留置に適したデザイン 左心房壁との接触を回避し、左心房への合併症リスクを低減させると共に、表面は左心房に面する表面積を最小限に抑え、留置後の血栓形成を低減させるようデザインされている。また、10個のアンカーにより、左心耳の組織に固着して安定させる。

②塞栓を防ぐポリエチレンテレフタレート(PET)フィルターとナイチノール製フレームおおよそ200μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルターを用い、塞栓を防ぎ、被膜生成を促進させる。また、フレームは左心耳に特有の解剖学的構造に適合し、デバイス塞栓リスクを低減させる。

③手技時間の短縮と安全性を考慮したデリバリーシステム 閉鎖デバイスが予め装填されたデリバリーシステムで、手技の準備時間を短縮する。また、1ステップで閉鎖デバイスを展開できるように設計され、デバイスの位置修正や再収納、再留置も可能である。柔軟なコアワイヤを用い、閉鎖デバイスが展開した後には自然な位置に留置される。

 
 
 
■心房細動について

 心房細動は、心臓の中で血液が流れ込む心房が細かく震えることで起こる不整脈の1つで、血液がよどみ形成された血栓が移動することで、脳卒中を引き起こすリスクがある疾患である。特に高齢者で罹患のリスクが高く、高齢化に伴い、患者数は2010年の約80万人から、20年後の2030年には100万人に増加するといわれている4。心房細動がある人は、心房細動がない人と比べると、脳卒中リスクが5倍高く、心房細動のある患者さんの約3分の1が脳卒中を発症するといわれている。脳卒中は、寝たきりの原因の1位、認知症の原因の2位にあげられ5、要介護となるリスクも高いことから、脳卒中の発症を抑制するための治療が重要になっている。これまで、薬物療法として、抗凝固薬により血栓形成を予防していたが、出血リスクが高まるという課題もあった。
 
 

(出典)
1 2019年2月22日現在
2 Left Atrial Appendage Closure as an Alternative to Warfarin for Stroke Prevention in Atrial Fibrillation
3 Bleeding Outcomes After Left Atrial Appendage Closure Compared With Long-Term Warfarin
4 国立循環器病研究センターウェブサイトより
5 日本脳卒中協会ウェブサイトより
 
 
 
 
 
 

<お問い合わせ>
ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社
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企業サイトURL: http://www.bostonscientific.jp