オーバスネイチメディカル、国内初、バイオロジカルテクノロジーを利用した薬剤溶出型ステント『COMBOコンボ®Plusプラスコロナリーステント(抗体使用冠動脈ステント)』を新発売
オーバスネイチメディカル(株)(以下、オーバスネイチメディカル)は、本日2020年2月3日(月)より「COMBO® Plusコロナリーステント(一般名:抗体使用冠動脈ステント」(以下、COMBO® Plusの国内での販売を開始した。
COMBO® Plusは、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患の経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary interventionPCI※1による治療で使用される薬剤溶出型冠動脈ステント)※2である。
現在国内で販売されている薬剤溶出型ステント(drug-eluting stent DES)は、いずれもプラットフォーム、薬剤、ポリマーの3コンポーネントを基本構造としているが、このCOMBO® Plusは、これらに加え、国内では初となる抗体(抗CD34抗体)を搭載したバイオロジカルテクノロジー製品として2019年9月18日付で製造販売承認を取得し、2020年1月1日付で保険適用を受けた。
〈COMBO® Plusの構造について〉
■プラットフォーム
リコイル※3を防ぐ強いラジアルフォースと2重らせん構造による優れたコンフォーマビリティを兼ね備えたステンレス鋼製のプラットフォームを採用している。リングデザインは正弦波構造で、高いスキャフォールディングにより留置部位を保持。ステントエンドは、フレアリング※4を防ぎ、病変をカバーする。また、ショートニング※5を最少に抑える工夫が施されている。
■薬剤・生分解性ポリマー
右図はCOMBO® Plusのストラット断面図。血管壁側ストラット表面には、国内で医療用医薬品としても使用されている免疫抑制剤シロリムスとその支持体(生分解性ポリマー)の混合マトリックス層がコーティングされている。シロリムスは、炎症反応による細胞増殖を阻害する機能を有しており、ステント留置後に血管組織へ約30日にわたって徐放され、新生内膜の過増殖による再狭窄を抑制する。薬剤溶出コントロールの役割を終えたポリマーは、加水分解により生体内で分解され約90日で消失する。
■抗CD34抗体
本製品に搭載される抗CD34抗体は、循環血中内に存在し、損傷した血管内皮の修復に関与することで知られる血管内皮前駆細胞(endothelial progenitor cells EPC)を抗原抗体反応により捕獲する機能を有している。捕獲されたEPCはステント表面で血管内皮へ分化し、ステント内腔の再内皮化(ステント被覆)に寄与することが期待される。
COMBO® Plusは、世界50カ国以上で承認されており、多くの患者に使用されているが、現在までにこの抗CD34抗体に対するアレルギー等の有害事象は、国内外を含め報告されていない。
■製品情報はこちら:
http://www.orbusneich.com/en/products/dual-therapy-stent/combo-plus
〈国内臨床試験〉
オーバスネイチメディカルは、COMBO® Plusの承認を取得するために、HBD(Harmonization By Doing、日米医療機器規制調和)※6の枠組みに基づき、日米共同治験『HARMONEE Harmonized Assessment by Randomized,Multi-center Study of OrbusNEich’s COMBO StEnt試験』※7を実施している。
この治験は、国内の冠動脈ステントの治験としては最大規模の登録症例数日米両国で約600例、40施設以上を誇るものであり、ステント留置後1年経過時の安全性及び有効性の比較の結果、試験対照医療機器のエベロリムス溶出ステント(以下、EES)に対して非劣性であることが示された(p0.020)。
TVR:標的血管不全(Cardiac death, TV-MI, TVRの複合)
TV-MI:標的血管の心筋梗塞
TVR:虚血による標的血管血行再建術
TLF:標的病変不全
TLR:虚血による標的病変血行再建術
ST:ステント血栓症
さらに、ステント留置後1年経過時のステント内の健常な新生内膜組織被覆率において、EESに対し優越性が認められた。
〈COMBO® Plusの開発の経緯〉
製造元であるOrbusNeich Medical, Inc.(オーバスネイチメディカル社)は、1990年代にステンレス鋼を素材としたDNA2重らせん構造から着想を得たストラットデザインのステントである『Rステント』を開発した。
『Rステント(本邦未承認)』は、強いラジアルフォースを維持しつつ長軸方向への柔軟性が高いという長所を有し、CEマークを取得している。
その後、2000年代にRステントのプラットフォーム表面に抗CD34抗体をコーティング(血中を循環する血管内皮前駆細胞(EPC)を抗CD34抗体が捕獲し、ステント内側の内皮細胞被覆を迅速に達成させる目的)した『Genous(本邦未承認)』を開発した。
その後、ステント留置部の再狭窄を抑制するとともに、抗血小板療法への依存を軽減して安全な使用を可能にすることを目的に、Genousに薬剤コーティングを施すことで薬剤溶出ステント(DES)の機能を追加した『COMBO®(本邦未承認)』を開発した。
そしてさらに、『COMBO®』のデリバリー性能を高めるために、ステントは同一であるが、デリバリーカテーテルを改良した『COMBO® Plus(本製品)』が開発され、このほど国内にて承認取得、販売開始するに至った。
COMBO® Plusは、世界50カ国以上で承認されており、現在も多くの患者に使用されている製品である。
※1 PCI:狭くなったり塞がったりした血管の内側から、先端に風船のついた管(バルーンカテーテル)で拡げる治療方法のこと。
※2 冠動脈ステント:PCIでの治療を行った後に再び冠動脈が狭くなってしまうことを防ぐために、バルーンカテーテルの風船部分の外側に「ステント」と呼ばれる小さな網目状の金属の筒を装着し、バルーンカテーテルの風船を膨らませることでステントを病変血管の内側から押し拡げて血管壁に圧着し留置する。ステント留置後は、バルーンカテーテルの風船を萎ませてステントを残したまま血管から抜去する。「ステント」に免疫抑制剤や抗腫瘍剤などの薬剤をコーティングすることで再狭窄を予防するものを薬剤溶出型ステントと呼ぶ。
※3 リコイル:デバイスによって一度拡張された血管の内径が再び縮小する現象のこと。
※4 フレアリング:ステント拡張時にステントストラットが外側へ広がる現象。
※5 ショートニング:ステント拡張時に長軸方向への短縮を起こす現象。
※6 HBD(HarmonizationByDoing、日米医療機器規制調和):HBDは、主に心血管系の医療機器における日米の規制の整合化を図ることを目的とした、FDA(米食品医薬品局)と厚生労働省/PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)を中心に日米両国の官・学・民が共同して行う活動の場です。国際共同治験の推進や、日米間で協力して審査を実施する体制の構築、効率的かつ迅速な審査を進めるための施策の検討を行い、日本としては、医療機器承認のタイムラグの改善を目指しています(関連リンク:http://www.jfmda.gr.jp/hbd/index.html)。
※7 HARMONEE試験の概要: https://academic.oup.com/eurheartj/article/39/26/2460/5042208
●お問い合わせ
オーバスネイチメディカル株式会社
URL:https://www.orbusneich.jp/