変異株のスクリーニング検査を支援 株式会社iLACが「新型コロナウイルスの全ゲノム解析受託サービス」を開始

2021.04.01

島津製作所および伊藤忠商事株式会社の出資する株式会社iLAC(読み方:アイラック)は、4月1日から「新型コロナウイルスの全ゲノム解析受託サービス」を開始。島津製作所は、iLACと提携して本サービスの営業面を支援する。

新型コロナウイルスの変異株は、従来株よりも感染性が増していたり、免疫やワクチンの効果を低下させたりする可能性が指摘されている。日本国内での変異株感染者は3月30日までに678人(空港検疫での判明分を含まず)に上る。変異株の感染経路などの疫学的調査のためには、変異株のゲノムの網羅的な解析が必要。また、ゲノム配列情報から得られたウイルス変異の情報と感染者の臨床情報を組み合わせると、新型コロナウイルスの病原性や感染性などのメカニズムを解明する手がかりとなる。ただし、従来のゲノム解析には手作業による前処理が必要で、時間がかかるうえ、検体取り違えや手技によるデータのばらつきなどが課題であった。

本サービスの基礎となる技術は、当社シニアフェロー・筑波大学特命教授/プレシジョン・メディスン開発研究センター長の佐藤孝明らが開発した。自治体や研究機関などによるPCR検査で陽性となった検体を対象に全ゲノムを解析。国産ヒト型汎用ロボット技術による自動前処理システムを使用することで、精度を約40倍に高め、約30倍のハイスループット化を達成した。リスクを大幅に低減しながら一日当たり6000検体の解析が可能で、変異株の感染状況の把握と新たな変異株の検出が迅速に行う。免疫やワクチンの効果を低下させる可能性のある変異株が検出された場合には、島津製作所がそれぞれの変異株に対応したPCR検査用試薬「プライマー/プローブセット」を開発し、変異株の感染状況や拡大動向の把握に貢献していく。

なお、自動前処理システムは、日本医療研究開発機構(AMED)ウイルス等感染症対策技術開発事業「ヒト型汎用ロボットを中心とした新興再興感染症PCR検査と全ゲノムシーケンス解析の包括的自動化」(研究開発期間:令和2年11月1日~令和3年3月31日)において開発したものである。

島津製作所は昨年から「新型コロナウイルス検出試薬キット」(研究用試薬)、「Ampdirect2019-nCoV検出キット」(体外診断用医薬品)、「新型コロナウイルス拭取り検査試薬キット」(研究用試薬)、クリニック向けにPCR検査を全自動で行う「遺伝子解析装置 AutoAmp」、新型コロナウイルス変異株をPCR検査で検出する「SARS-CoV-2変異株検出コア試薬キット」および「N501Yプライマー/プローブセット」(いずれも研究用試薬)を製造・販売していく。このような知見を活かし、iLACと提携して本サービスの営業面の支援を行う。

今後も様々な製品・技術・サービスを通じて新型コロナウイルスの感染拡大防止、安心・安全な社会の実現に尽力してまいる。

※全ゲノム解析:すべての遺伝情報(ゲノム)の網羅的な解析。

お問い合わせ先
島津製作所 https://www.shimadzu.co.jp/news/press/r073msp1316mq4ja.html