島津製作所米国子会社SSI、ワシントン大学今井眞一郎教授とNMNの定量化を共同研究

2021.05.19

島津製作所の米国子会社Shimadzu Scientific Instruments, Inc. (以下SSI) とワシントン大学医学部発生生物学部門・医学部門 (以下WUSM、ミズーリ州セントルイス) の今井眞一郎教授は、共同研究契約を締結して「質量分析(MS)技術によって生体試料中のニコチンアミド・モノヌクレオチド (以下NMN) および関連化合物を定量化する手法」の開発に合意した。研究の主要な目的は、哺乳類における老化と寿命のメカニズムへの理解を深めることであるとしている。

NMNは、ニコチンアミド・アデニンジヌクレオチド(NAD)生合成経路における重要な中間体1)です。2011年に今井教授の研究室は、「NMNの摂取が高脂肪食または加齢による2型糖尿病モデルマウスのグルコース代謝の機能障害を劇的に改善する」ことを実証。2016年には今井教授の研究チームは「明らかな毒性や有害作用のないNMNが健康な老化マウスにおいて、加齢に伴う体重増加を抑制し、エネルギー代謝や身体活動を促進し、インスリン感受性を改善、また血液中の脂質の値や眼機能、他の加齢に伴う病態生理を改善する」ことも突き止めている。

最近では、WUSMのSamuel Klein教授と今井教授が率いる研究チームは『Science』誌に論文を発表し、NMNに関する最初の臨床試験の結果を報告し、NMNが特に骨格筋においてインスリンの感受性とシグナル伝達を有意に改善することを実証した2)。 NMNはヒトの加齢に伴う機能低下および疾患状態に対する予防および治療の可能性を有している。

SSI西村雅之(New Strategy部門ディレクタ)コメント
「マウスにおけるNMNおよびNMN関連化合物は、液体クロマトグラフ(LC)を用いて定量できますが、ヒトの血中NMN濃度はマウスに比べて1桁以上低いです。そのためヒト血液中のNMNを正確に定量するためには、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)が必要です。このたびの提携は、WUSMの主要なアンチエイジング研究者および臨床リソースと島津製作所の質量分析技術を統合し、生体試料中のNMNおよびNMN関連化合物の信頼性の高い定量法を確立するものです。今井教授は老化・寿命研究におけるグローバルリーダーであり、当社にとって質量分析法のアンチエイジング研究への応用を進める上で理想的なパートナーです。」

ワシントン大学医学部発生生物学部門・医学部門(WUSM) 今井眞一郎教授コメント
「島津製作所と共同で、生体試料中のNMNおよびNMN関連化合物に対する正確で再現性のある質量分析法を開発したいと考えています。この重要なプロジェクトで島津製作所の科学者たちと協力できることをとても楽しみにしています。」

 

¹⁾ 目標とする化合物への合成経路途中で現れる化合物のこと
²⁾ https://doi.org/10.1126/science.abe9985

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島津製作所URL:https://www.shimadzu.co.jp/
Shimadzu Scientific Instrument https://www.ssi.shimadzu.com
WUSM 今井眞一郎教授 https://imailab.wustl.edu/