MY BOOKMARK No.17 4D-imagingの呪縛からの開放〜血流動態評価を可能にするアプリケーション〜 

2021.12.22

地方独立行政法人 佐賀県医療センター好生館 放射線部

三井宏太 先生

緒言

 Computed tomography(CT)装置の多列化およびCT技術の進歩により、CT検査で血流動態評価が可能となった1、2)。従来、血管造影検査で侵襲的に行われていた検査をCT検査で代用できるため、その簡便性および利便性から多時相撮影(four dimension-imaging:4D-imaging)は飛躍的に増加した。特に頭部領域では、硬膜動静脈瘻における流入血管(feeder)・流出血管(drainer)の同定だけでなく、血流動態評価(皮質静脈への逆流の評価)による治療方針の決定に有用である3)。また、虚血性脳血管障害では4D-imagingを用いた灌流評価(CTperfusion)により、虚血コアとペナンブラの同定が可能となり、同時に血管評価も行えるため治療方針の決定や予後予測に有用とされている4)。このように、4D-imagingは、形態評価だけでは困難であった診断が行えるため、臨床的有用性が非常に高いと言える。
 しかし、4D-imagingは経時的に同一断面を連続スキャンするため、従来のCT検査と比べ被曝量の増加が懸念される。そのため1スキャンあたりの線量を調整することで、被曝量低減を行う必要5)があるが、過度な線量低減は画質不良を伴う6)
 また、4D-imagingは1スキャンあたりの時間分解能を短くすることで、経時的な血流動態評価を可能としているため、CT装置のスペックに依存し、時間分解能が長くなるような広範囲のスキャンには適応することができない。
 よって、臨床において血流動態評価を行いたい場面は多々あるが、4D-imagingは様々な制限があるため、総合的に判断した結果、断念せざるを得ないというジレンマが生じている。
 このように、4D-imagingは様々な制限があり、その適応は限定的である。また、4D-imagingを行えたとしても被曝量の懸念から撮影位相を縮減することも少なくない。しかし、撮影位相の極端な縮減を行うと、CT-perfusionにおいて各種パラメータの計算精度に影響を及ぼし7)、血流動態評価では視認性が低下する。前者に関しては最適な位相を取得することに他ならないが、後者に関しては、特有のアプリケーションを使用することで視認性が向上することが報告されている8)。しかし、装置に依存するため、一般的には、4D-imagingから得られた時間濃度曲線(time enhancement curve:TEC)を用いて血流動態評価を行っている。一方、アニメーション制作の分野では少ないフレームからフレーム間の動きを予測するフレーム補間を行うことで視認性を向上させている9)。このフレーム補間技術を4D-imagingに応用できれば、装置に依存することなく視認性の向上が期待できると考える。

フレーム補間技術

 前述の通りアニメーション制作では、数少ないフレームの場合に動作が不自然になるため、フレーム補間技術を用いて視認性を向上させている。ここでは、代表的なフレーム補間技術について簡単に解説(図1)する。

図1 代表的なフレーム補間技術

1. リニア補間

 リニア補間とは文字通り直線的なフレーム補間である。既知のAとBのフレーム間に等間隔に補間フレームを内挿し、時間方向のフレーム数を多くすることでフレーム間の動作をより鮮明に描出することが可能となる。機械的な動作に関して有用な手法である。

2. ベジェ補間

 ベジェ補間とは、ベジェ曲線をもとに変化量を任意に調整するフレーム補間である。既知のAとBのフレーム間に非等間隔に補間フレームを内挿し、時間方向を一定にしないことでリニア補間より、滑らかな動作にできる特徴がある。

 ここで、4D-imagingも広義のアニメーションとして扱えるため、このようなフレーム補間技術が応用できると考えられる。4D-imagingのフレーム補間は“物体の動きの補間” と“CT値の変化に対する補間” である。前者に関しては、物体の特徴量を捉えたボクセルトラッキング等の技術が必要となり10)、専用のアプリケーションがないと補間することはできないが、後者に関しては、リニア補間であれば我々が普段行っているTECと同意義である。つまり、TECでの血流動態評価を目に見える形で表現できれば“疎” の位相より得られた4D-imagingでも十分診断可能な画像が得られる。

アプリケーションの特徴および使用方法

 そこで我々が着目したのがCT装置に付属する基本的なアプリケーションであるAdd/Subtrac(t キヤノンメディカルシステムズ株式会社:Canon)の機能である。
 Add/Subtractは画像間の演算を行うアプリケーションであり、任意の重み付けにより加算および減算処理が行える。
 重み付け:1で造影相から単純相を減算(サブトラクション)すれば、造影剤の分布を可視化することが可能であり11)、同一の位相を重み付け:1で加算すればコントラストを増強させることが可能となる12)。また、4D-imagingの複数位相を加算平均(Time stack)することで、ノイズの低減効果が期待できる13)
 この機能を利用し、連続した位相間を任意の重み付けで演算処理することでTEC上の任意の点におけるCT画像を作成し、実位相間に内挿すれば、4D-imagingの視認性を向上させることが可能である。
 具体的な手法を図2に示す。

図2 Add/Subtractを利用した4D-imagingのフレーム補間方法

 まず、4D-imaging(撮影時相は2相以上が必要)を従来どおり撮影する。Canon社製CT装置では様々なスキャン方式が存在するが、一般的に4D-imagingで用いられる“Dynamic Volume”のDICOMデータでは、Add/Subtractによる演算処理を行うことができないため、多断面再構成(multi planer reconstruction:MPR)により演算処理が行えるDICOMデータへと変換する。このとき、フレーム補間による画像枚数の大幅な増加を考慮し、再構成範囲やスライス厚、スライス間隔を適宜決定(血流動態評価のため、極端に細かなスライスは必要としない)する。次にAdd/Subtractを使用し、任意の重み付けによりフレーム補間画像を作成する。当館の場合は、画像枚数の増加を考慮し4D-imagingは重み付け:0.25(内挿位相が3相)、2相撮影では重み付け:0.1(内挿画像が8相)でフレーム補間を行っている。フレーム補間後のデータと実位相のデータを3D-画像処理端末(ZIOSTATION2:Ziosoft)に転送し、血流動態を反映した画像を作成する。

臨床症例

 撮影位相および撮影部位が異なる臨床画像を示す。

1. 硬膜動静脈瘻

 硬膜動静脈瘻は、細かなfeederおよびdrainerの同定および皮質静脈への逆流を観察する必要がある。3D-imagingを用いればfeederおよびdrainerの同定は可能であるが、皮質静脈の逆流を判断することは困難であり、4D-imagingを用いればその逆である。よって、当館ではTest Bolus Tracking法14)を用い、最適なCT-Arteriography(CT-A)およびCT-Venography(CT-V)のタイミングは通常線量で、その他の位相を低線量で撮影している15)。この手法を用いることで、CT-AとCT-Vの位相においてfeederおよびdrainerの同定が可能な画質を維持している。さらに撮影後、フレーム補間(重み付け:0.25)を行うことで、血流動態評価も可能にしている(図3、4)。

図3 硬膜動静脈瘻に対する4D-imaging
図4 硬膜動静脈瘻に対するフレーム補間

2. 巨大中大脳動脈瘤

頭部CT-Angiographyは、1相撮影が主流で、穿通枝の同定や被曝量の観点からその有用性は高く、2相(CT-A、CT-V)撮影を行う機会は年々少なくなってきている16)。しかし、2相撮影は、4D-imagingほどではないが血流動態を反映した画像が得られる利点があり、状況に応じての使い分けが重要である。本症例は中大脳動脈に巨大動脈瘤が存在し、CT-AとCT-V間のフレーム補間(重み付け:0.1)により、動脈瘤内の血流変化が認識できた症例である(図5)。

図5 巨大中大脳動脈瘤に対するフレーム補間

3. 総腸骨動脈瘤破裂

 緊急性が高い症例や体幹部の撮影の場合、撮影範囲の制限や手技の煩雑性のため4D-imagingができない場合が多い。本症例はショック状態でCT室に運ばれ、原因検索のため造影CTが施行された症例である。総腸骨動脈瘤の存在と動脈瘤の前面に縦走する破裂部位の形態および血流動態がフレーム補間(重み付け:0.1)によって明らかになった(図6)。

図6 総腸骨動脈瘤破裂に対するフレーム補間

使用上の注意事項

 灌流評価は、適切なタイミングでの位相がないと計算精度に影響を及ぼすため7)、灌流評価を目的とした場合の使用はおすすめできない。また、実位相間をリニアにフレーム補間するため、実位相間の時間軸が大幅に異なる場合は、誤った画像を作成してしまう可能性がある(図7)。あくまでも小循環をターゲットにした補間方法である。また、実位相間にミスレジストレーションがあるとフレーム補間画像にアーチファクトが生じるため、撮影時にミスレジストレーションが起こらない工夫17)(当館では頭部領域の撮影でネックカラーを使用)や実位相画像のレジストレーション処理などの工夫18)が必要である。

図7 実位相の時間軸がフレーム補間に与える影響

まとめ

 このように4D-imagingに対するフレーム補間は、血流動態の視認性が大幅に改善されるため、臨床的有用性が非常に高い。何よりもCT装置のスペック(撮影列数やスキャン方式等)に左右されることなく使用できるためその有用性は高い。
 しかし、誤った使用をすると偽りのデータを提供することにもなり得る。あくまでもTECをベースにした画像表示法ということを意識しつつ有用に使用していただきたい。

<文献>

1) Siebert E et al: 320-slice CT neuroimaging: initial clinical experience and image quality evaluation. Br J Radiol 82: 561-570, 2009
2) Katada K et al: Clouse.Area Detector CT.Tokyo: Medical Tribune,2015
3) 林佐衣子 ほか: 硬膜動静脈瘻の評価における320列area detector CTを用いた3D CT-DSAの有用性. 脳卒中 37(2): 96-101, 2015
4) CT/MR灌流画像実践ガイドライン合同策定委員会; CT/MR灌流画像実践ガイドライン 2006
5) Wintermark M et al: Acute stroke imaging research roadmap. AJNR.29: E23-E30, 2008
6) Richard S et al: Towards task‐based assessment of CT performance: System and object MTF across different reconstruction algorithms. Med Physics 39(07): 4115-4122, 2012
7) Wintermark M et al: Dynamic perfusion CT: optimizing the temporal resolution and contrast volume for calculation of perfusion CT parameters in stroke patients. AJNR. 25(5): 720-729, 2004
8) Heather A Brown PhD: PhyZiodynamics: A Revolutionary Approach for Post-Processed Noise Reduction, Motion Coherence and Functional Analytics. Ziosoft, inc. 2010
9) 児玉 明: フレーム間予測技術. 映像情報メディア学会誌 67(4): 303-307, 2013
10) 石田和史: PhyZIodynamics って何者?―paradigm shiftを起こせるか!?―.INNERVISION 28(11): 33-36, 2013
11) 関谷俊範: CTにおけるサブトラクション技術の現状と課題. INNERVISION 29(10):14-18, 2014
12) 渡邊 亮 ほか; 3D画像作成におけるCT値スケール変更によるコントラスト増幅画像再構成法の提案. 日放技学誌 69(5): 864-872, 2013
13) 竹内明日香 ほか: Time-MIPとTime-Stack―スキャン後でもノイズとコントラストの調整を可能に―. Proceeding of JSCT 6(2): 68-71, 2018
14) 山口隆義 ほか: 新しい造影方法であるtest bolus tracking法の開発と、冠状動脈CT造影検査における有用性について. 日放技学誌65(8): 1032-1040, 2009
15) 三井宏太: 頭頸部3D-CT Angiographyの基礎と疾患を診せるテクニック. Rad Fan 17(6): 24-28, 2019
16) 三井宏太: 3DCTAの再現性と撮影プロトコルの再考『頭部』. 日放技撮影部会誌26(1): 24-27, 2018
17) 神永直崇: 頭頸部領域撮影時におけるモーションアーチファクト低減を目的としたネックカラーの有用性. Rad Fan 18(13): 75-77, 2020
18) Kabus S et al: Lung ventilation estimation based on 4D-CT imaging. Proc First International Workshop on Pulmonary Image Analysis,MICCAI: 73-81, 2008