市立函館病院
狩野麻名美
さまざまな用途で使用できる
当院に設置している撮影装置は、多目的X線透視撮影システムSONIALVISION G4 LX edition(島津製作所社製)である。X線透視装置ではあるが、モダリティがRF(透視)、XA(血管造影)、CR(一般撮影)、DX(デジタル系一般撮影)と4種のモダリティの役割をこなすことが可能である。当院では、透視可能な一般撮影装置と老朽化したCRシステム一般撮影装置の二台分の代替えとして更新した。従来の装置では、透視可能な一般撮影装置専用装置として泌尿器科のみに使用、CRシステム一般撮影装置は混雑する午前の数時間のみの稼働で使用頻度が少なかった。これらの装置を一台にすることで、病院としての保守費用も削減するという目論みもあった。このため、当院の装置にはXA機能は付属していない。導入当初は、X線透視装置を主として使用する目的で運用を進めていた。しかし、いざ一般撮影装置の稼働がストップすると患者の待ち時間が増加する時間帯もでてきてしまった。そのため、急遽、一般撮影装置としての積極的運用も検討し、サービス会社の協力を得ながら調整を行なった。その使用経験なども記載する(図1、2)。
一般撮影装置としての特徴と使用経験
当装置の特徴として、従来モデルでは1.5mであったSIDが最大1.8mとなった。これにより、胸部写真を撮影できる可能性がある。当院では、胸部写真については2mの距離をとっているため、各診療科に確認しながら運用検討中である。X線管装置と受光部(フラットパネル・ディテクタ以下FPD)が連動動作することにより位置決めが容易となり、簡易的な立位胸腹部撮影装置として一般撮影装置のバックアップが十分可能である。腹部撮影の立位から臥位への移行においても天板を倒すことにより、患者さんの動作は不要で、術後の方なども動きによる痛みを伴わずに撮影することが可能である。ただし、SID1.8mで撮影する場合には、グリッドを手動で交換することが必要となるので、多少の煩雑さは残る。
また、当装置はX線TV装置であるため低線量透視が利用可能である。整形領域の一般撮影などにおいては、ポジショニング不良による再撮影が減少することに期待している。現在は脊椎系のみの撮影にとどまっているが、ポジショニングに自信のない私のような者には重宝するのではないであろうか。もちろん、一般撮影のポジショニングは、我々診療放射線技師の重要な仕事の一つであるため、常に鍛錬は必要であるが、ポジショニング習得中の方などにも技術を磨くための一助となる装置になりうる。
最初の操作説明では、アプリケーション担当者の同席がなかったため、いろいろな困惑もあった。当院の一般撮影装置には、さまざまな機種が混在している。これまでも画質や表示方法を統一するのに苦慮してきたが、今回も例外ではなかった。アプリケーション担当者の来院を依頼して、他装置の一般撮影室の画質に近づける画質調整をしていただいた。一例として、胸腰椎移行部側面では、周波数強調を強め鮮鋭度を向上させダイナミックレンジ圧縮も強めてより肺野内胸椎の視認性を向上するような調整を行った。PACS上他装置で撮影したものと画像サイズが近くなるよう、画像切り出し(トリミング)も可能であった。当装置で撮影した一般撮影画像は、モダリティCRとしてPACSに送信できるため、一般撮影として撮影した画像の判別も容易である。一般撮影装置と同様、ハンドスイッチも装備されているため、スムーズに複数枚の撮影や、患者さんの立位補助をしながら撮影することもできる。
当装置は、SLOT撮影が可能であり、脊椎系撮影長尺撮影にも有用である。SLOT 撮影はX線照射野をスリット状に絞ってX線管とFPDを平行移動させながら撮影し、自動で画像をつなぎ合わせて大視野画像を作成している。X線照射野をスリット状に絞ることにより大視野画像の上端から下端までのX線入射角が垂直方向となるため、従来の長尺撮影に比べて画像上下端の歪が少なくなり計測精度が高くなるメリットがある。下肢撮影においては骨盤領域、大腿部領域、足関節領域で体厚が大きく変化するため、各部において照射線量を適正線量にコントロールすることで低線量化が可能である。撮影から画像処理までの時間が非常に短時間である。当院では、これまで、脊椎の長尺撮影と腰椎など椎体系の撮影を一度に行える撮影室はなく、患者の移動が必須であった。当院のように一患者あたりの複数部位撮影が多い施設や一般撮影患者が混み合う施設にとって、透視装置でありながら一般撮影の役割もこなすSONIALVISIONG4 LX editionの導入はメリットがあるのではないだろうか。
透視装置としての特徴と使用経験
当院では、24時間365日開院している救命センターがあるため、我々診療放射線技師の業務も日当直により対応を行なっている。普段、透視業務を行わない技師でも透視検査に従事することがあるため、透視画質をより調整しやすい様タッチパネル操作モードの変更をしていただいた。検査中、ワンタッチで透視輝度調整の自動/固定の切り替えや透視レートの変更が可能となり、検査に合った画質・線量調整が行える(SCORE PROAdvance)。当装置は、気管支肺生検(TBLB)や嚥下造影で画像中心に対して目的部位が外れても透視画質の視認性が落ちない。特有の画像処理により低線量と高SNRを兼ね備えており、動きによる滲みなどを感じさせない使用感である(オブジェクト抽出型エッジ強調処理およびモーショントラッキングノイズリダクション:動態追跡型ノイズ抑制処理 図3)。この技術により、泌尿器系の透視検査ではフレームレートの検討を行い低線量とすることを可能とした。支脚器を使用した泌尿器科のような検査では、コリメーションを上端のみに絞り、天板端でのポジショニングを維持してアプローチポイントに限局した撮影が可能となっており、被ばくのコントロールをすることもできる(UROコリメーション 図4)。
留意すべきところ
すでに述べたように、基本はX線透視装置であるため、一般撮影専用機と比べると煩雑な部分は多数ある。当装置は平台であることから、FPD上縁と患者の肩部分と合わせることができず胸部撮影時は上肺野を密着できない。被写体とFPDの距離が多少なりとも出てしまうため、画像のボケが生じる可能性がある。SID1.8mを使用する場合は、手動でグリッドを交換しなければならない。撮影条件変更時など、姿勢を低くしなければならないことがある。ポジショニング時、FPD上縁などが目視できず光照射野での位置合わせであるため被写体が大きい場合などは慣れが必要である。今後の検討などで、解消される項目や装置に慣れることで問題とならない項目もあるが、一定の期間は、留意しながら運用していきたい。
SONIALVISION G4 LX editionの魅力
これまで述べてきたように、多機能を備えたSONIALVISIONG4 LX editionは、患者さんだけではなく、病院にとっても医療の質と経済性の両立を確立可能な装置なのではないだろうか。我々診療放射線技師側にとっても、いろいろな装置を習得する手間も省ける可能性もある。さまざまな機能を使いこなす技術は必要とはなってくるが、それも含めてこの装置の面白みであると考える。今後も、当院の技師とともにこの装置の可能性を探っていきたい。