シーメンスヘルスケア、日本初となるフォトンカウンティングCT「NAEOTOM Alpha」の製造販売認証を取得

2022.02.17

・Siemens Healthineers AGが国内子会社である半導体メーカーと15年をかけて研究開発したフォトンカウンティングCTを実用化

・フォトンカウンティングCTはSiemens Healthineersが2021年に世界で初めて*1発売

・エネルギー情報を可視化することで、従来のCTでは困難であった、血流や骨を識別する精度の高い画像診断を実現

1秒未満での撮影や、被ばく線量を約100分の1に減少した撮影が可能*1,2

・COVID-19患者の肺炎症状など、高精細な画像で診断可能

 シーメンスヘルスケア株式会社(以下シーメンスヘルスケア)は、日本で初めてフォトンカウンティング検出器を搭載した次世代CT「NAEOTOM Alpha(ネオトム アルファ)」が2022年1月26日に医療機器製造販売認証を取得した。

 本製品は、Siemens Healthineers AGが、子会社である日本の株式会社アクロラドとともに開発した、これまでの技術を一新する次世代のCT装置である。Siemens Healthineersは、半導体製造プロセスなど世界をリードする技術を有するアクロラドと15年をかけて研究開発に取り組み、この先進的なCTを生み出した。

 技術の中核にあたるフォトンカウンティング検出器は、従来の検出器のようにX線光子を可視光に変換するのではなく、各X線光子とそのエネルギーレベルを直接検出するため、より少ない放射線量で高解像かつ有用なデータを提供することができる。また、被ばくを抑えることができるため、患者や検査を受ける方の負担を減らしつつ正確で包括的な検査が可能となった。

 その応用範囲は、腫瘍や心臓の診断から肺のフォローアップ検査まで、幅広く多岐にわたる。本製品は、高齢化社会が進み、病気の早期発見や正確な診断が求められる日本の医療現場において重要な役割を果たしていくことが期待される。

「NAEOTOM Alpha」の中核技術であるフォトンカウンティング検出器の主な特徴

 Siemens Healthineersがアクロラドとともに15年をかけて開発し、「NAEOTOM Alpha」に搭載した新たな技術であるフォトンカウンティング検出器は、主に被ばくを低減しつつ高分解能な画像を臨床利用できるという点で、従来のCT装置から大きなイノベーションを果たした。

 従来までの標準的なCT検出器は、2段階プロセスにより、①まずX線を可視光に変換、②光センサで可視光を電気信号として検出して最終的な画像を生成する。このプロセスが介在することでX線エネルギーに関する重要な情報が失われ、コントラストは低下し、画像の鮮明さが失われてしまう。しかし、フォトンカウンティング検出器ではX線を可視光に変換するプロセスを排除し、X線の光子(フォトン)をそのまま電気信号に直接変換してから測定する。これにより情報の損失がなく、画像の鮮明さとコントラストが大きく向上する。

フォトンカウンティングCTにおけるX線の動きフォトンがそのエネルギーごとに電子を発生させ、高速で陽極へ移動する電子を捉えてカウントすることで、X線の強度とエネルギー自体を検出

●正確に細部まで確認できる視認性と表現力

 フォトンカウンティングCTでは、光子を個別にカウントすることで高解像度の画像が得られる。微小な組織も見えるようになり、より正確な臨床上の意思決定をサポートする。

従来のCTとフォトンカウンティングCTでステント画像を撮影すると、
画質はフォトンカウンティングCTが大きく上回る。
従来のCTでは失われていたエネルギー情報を可視化できるため、
骨折部位の中の様子を、カルシウム成分を抜いた画像とともに表示することで、
骨折した断面の炎症の有無も確認ができる。
このエネルギー情報により体内の物質を特定することができ、
関心領域を遮るものがあれば、画像から削除することも可能である。

●電気ノイズをゼロにすることで、被ばく線量を低減

 電気ノイズを完全にゼロにすることが可能なため、低被ばくで安定した画像の提供が可能になる。

 例えば、一般的な副鼻腔のCT検査では、比較的線量を落として撮影した参考値として0.2mSv~0.8mSv*2となるが、フォトンカウンティングCTでは0.0063mSvと約100分の1程度になる。この線量は日本の自然放射線量のたった1日分程度である*3。また、従来のCTであれば約10秒かかった70cmを超える広範囲の撮影も、0.9秒で完了し、被ばく量を抑えることができる。被ばく線量の低減により、CTイメージングを用いた肺がん検診などの検査が今まで以上に患者に定期的に提供できるようになる。

重度の解離性動脈瘤患者の検査画像

COVID-19患者の検査にも有用

 フォトンカウンティングCTの強みである、低被ばく、高分解能、エネルギー情報の可視化を同時に行うことで、COVID-19患者の肺炎症状を正確に診断することも可能となる。

 従来のCT画像では、右肺に肺炎の影がぼんやりと見えますが、フォトンカウンティングCTで撮影した中央の画像ではより高画質で肺炎の様子が確認できる。また同時に、右図のように、この部分に血流があるかどうかをエネルギー情報から表現することが可能になる。

開発の歴史

 Siemens Healthineersは、15年にわたるフォトンカウンティングCTの研究において、この技術に関連した特許を500件以上出願し、臨床機関のパートナーと密接に連携して、臨床機能と使用例をテストし、検証してきた。これまでに6世代のプロトタイプを評価、改良し、2021年にこの新技術を搭載した世界初のフォトンカウンティングCTを発表し、すでに世界20施設以上で臨床使用を開始している。

 「NAEOTOM Alpha」は、市場初のフォトンカウンティングCTであるだけでなく、Dual Source CT(2つのX線管と検出器を搭載したCT)であり、非常にパワフルで高速かつ高精度なCT装置である。

 CT装置は長年にわたる技術的進歩によって適用範囲が拡大し、現在の医療において必要不可欠な検査機器となっている。しかしながら、被ばくや造影剤投与による侵襲性を考慮して十分に活用できていないケースや、空間分解能が不足することでCT装置以外の検査機器で代替しなければならない検査も存在している。フォトンカウンティングCTは、CT装置の基本性能とされる高分解能化と低線量撮影、定量性をさらに飛躍させることに加え、X線フォトンのエネルギー情報を活用した機能情報の提供が常時可能となったことで、今後のプレシジョン・メディシンの拡充に大きく貢献できるイノベーションであると言える。フォトンカウンティングCTの登場により、今後のCT装置のあり方が再定義される大きな原動力となることを期待する。

*1 シーメンス調べ

*2 A national survey on radiation dose in CT in The Netherlands. 2013 Aug; Insights Imaging (2013) 4:383–390

*3 環境省ホームページより https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h29kisoshiryo/h29kiso-02-05-01.html

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