東京大学医学部附属病院放射線部一般撮影部門
多田真也
東京大学医学部附属病院放射線部CT・血管撮影部門
鈴木雄一
東京大学医学部附属病院放射線部CT・血管撮影部門
岩崎貴大
はじめに
新型コロナウィルス(COVID-19)により世界の状況が一変し2年の月日が経過するが、いまだにそのウィルスは脅威を振るい続けている。当院では「COVID対応」という名で感染対策が行われ、個人用防護具(Personal Protective Equipment:PPE)の着脱や装置の清掃に至るまで、日々の業務に多大なる影響を与えている。しかし、我々はCOVID対応の業務だけでなく、今まで通り多くの放射線業務を平行して行わなければならない。当院の胸腹部撮影室では1日に約300件数の撮影を行っているが、COVID対応を含めその全ての検査をスピーディーにミス無く行うことは容易ではない。さらに、現場では様々な人為的ミスと機械的ミスが混在し、その度に業務改善の見直しが行われるが、年間発生数をゼロにする事は困難を極める。そのような状況で新たな診断用X線撮影装置システムが導入され、当院のワークフローが改善された。
一般撮影業務において、当院では様々なメーカのX線管、FPDを用いて日々の診療業務を行っている。この度導入された富士フイルム社製のFUJIFILM DR BENEO-FXという装置では、「自動化」によるアシスト機能が数多くある。次項にて詳しく説明するが、X線管を触れることなくリモコン一つで欲しい位置に動かせる機能や、ポジショニング時のFPDとX線管の追従機能、さらには患者情報読み取りとIP登録の機能が一つに集約されたBluetooth搭載バーコードリーダーなど、業務の煩雑さを改善する機能が多く存在する。今回は、その製品を実際に取り扱う診療放射線技師の目線で、機能や使いやすさを紹介させていただく。
オートポジショニング機能で位置合わせ
X線管の位置合わせを自動で行うオートポジショニング機能が搭載された。以前はX線管とFPDの中心や撮影距離(SID)を手動で動かし合わせる事が必要であったが、スイッチ一つで任意の設定したFPD中心、SIDへとX線管を移動させることが可能となった。また、デジタル表示にてSIDを表示するため、距離をメジャーで測る動作が不要となった。表示撮影メニューごとに最大30ポイントのポジショニングをプリセットし再現できる為、角度設定が難しい斜入撮影のX線管移動も自動で行うことができる(図1)。
これにより次の撮影準備にかかる時間を大幅に短縮する事が可能となり、さらに大きなメリットとして、骨盤のインレット・アウトレット撮影や仙腸関節撮影などの振り角がある場合に、斜入時のX線中心とFPDの中心が確実に担保されている状態で撮影できる為、FPDとX線管の位置ズレによるミスはほぼなくすことが可能となった。また患者さんのそばから離れずにX線管を動かす事が可能な為、後述の検査室内タブレット端末と合わせて、夜勤帯や人手の足りないときにも検査を簡潔に行う事ができる。
オートトラッキング機能と照射野連動機能
FPDとX線管の自動位置合わせをするオートトラッキング機能により、患者さんの身長に合わせた撮影ポジションを素早く決定することが可能となった。オートトラッキングでX線管の位置を合わせた後、患者さんの身長にFPDの位置を動かすと、自動でX線管がFPDの中心を追従する機能である(図2)。手動にも素早く切り替えられるため、早く動かしたい時などは撮影者側のニーズに合わせた使い方を選択することが可能である。
これにより、特に立位胸部X線撮影時は撮影手順の煩雑さが大幅に減り、よりスピーディーに業務を行うことができる。また、照射野連動機能により、撮影部位にあらかじめ設定された撮影プロトコルに合わせた照射野サイズが自動で再現することが可能となった。追従させる際にはX線管をFPDの中心だけで無く、上基準・下基準による位置調整も自動で行えるため、特に小児の場合などは、年齢(身長)に合わせた照射野の大きさなどをあらかじめ設定をすることで、始めから小児に合わせたプロトコルでの撮影を行うことができる。
臥位撮影の場合では、X線管を体軸方向へ動かす事で寝台下のFPDが頭側から足側へ自動で追いかけるように動作する為、寝台へ移動後は患者さんをほとんど動かす事無く、ほぼ全身の撮影が可能となった(図3)。今までは寝台の可動域の限界を考慮し、臥位ブッキーでの胸部撮影の際は、ベッドの中央付近に患者さんの胸部が位置するように移動し、股関節を撮る場合は股関節付近がベッドの中央に位置するように移動する等の工夫が必要であった。また、移動後も寝台の可動域が足りなければ患者さんに移動していただくことが必要であったが、ほとんど患者さんを動かす事無く撮影が可能となったため、患者さんへの負担を軽減することが可能となった。
Bluetooth搭載バーコードリーダー
Bluetooth搭載のバーコードリーダーにて患者情報を読み取ることが可能となり、RISとモダリティーを連携させる際の手間を省く事が可能となった(図4)。以前はマウスクリックによるRISとモダリティーとの連携を行っており、患者の間違いが生じやすい環境であった。今まで通り患者確認の際に氏名・生年月日を名乗っていただく作業の徹底に加え、マウスクリックによる手順が省かれることで、ミスの発生原因を減らすことが可能となった。
またCR撮影の際のIP登録を行うことも、一つのバーコードリーダーで可能となっている。以前は、大きいサイズの長尺IPを読み込む際などは、読み取り機の置いてある机の高さまでIPを持ち上げる動作が必要であったが、Bluetooth機能により、スムーズに業務を行うことが可能となった。
検査室内タブレット端末による確認・操作
検査室内に操作室コンソール画面とリンクされたタブレット端末があり、画像確認をはじめ様々な撮影変更などが可能となった。発声が困難な患者さんの撮影時でも画面の患者情報表示を見ていただくことで確認が可能となった。また、この画面を操作することで、検査室内でもFPDやX線管などの選択が可能であり、画像確認や写損に至るまでも行う事が可能である(図5)。
一番のメリットとしては、患者さんのそばを離れることなく、様々な操作が可能になった点である。今までは画像確認やプロトコル選択のために患者さんから離れ操作室側へ行く状況も生じていたが、この機能により患者さんの近くにいながら検査を完結させることが可能となった。
当院のワークフロー・COVID対応
今回紹介する装置が導入された当院の撮影室は「救急部撮影室」と「胸腹部撮影室」である。入院時スクリーニングやフォローアップ、血管撮影後のX線撮影など様々な撮影を行っている。一部屋に独立した2つの立臥位管球が設置されており、FPDは立臥位17×17インチ、持ち運び用(ポータブル形式)の半切FPD17×14の計3つが常に連携されている。当院の胸腹部撮影用更衣室は3部屋用意してある為、お昼交代などで人が少ない場合を除いて原則撮影者1名、患者さんの着替えや検査実施入力などの外回り担当1名の、計2名で撮影を行っている。また技師間の息止め指示の差を減らす為、立位保持困難の患者や状態の悪い患者を除いて、オートボイスを用いる事で、常に一定の息止めの合図を流し撮影を行っている。
COVID陽性もしくは疑いの患者対応をする際は、当院は2名体制で検査を行い、図6のようなビニール袋で触れる可能性のある部分の養生+PPE+撮影後のアルコール消毒清掃などを行っている。状態が悪く重症度の高い患者さんから、独歩来院する患者さんまで幅広い症状の患者が来院する為、今まで紹介したアシスト機能をうまく使う事で、スピーディーかつ患者さんに合わせた撮影を行う事が可能となり、当院の撮影業務に非常に役立っている。
おわりに
今回紹介させていただいたFUJIFILM DR BENEO-FXの装置は、様々な「自動化」によるアシスト機能が備わっており、撮影者への負担を軽減し業務をよりいっそう円滑にサポートする製品である。他にも紹介したい機能が多々あるが、富士フイルムメディカルの皆様へ感謝を申し上げるとともに、この報告が診療放射線技師の皆様へ少しでも参考になれば幸いである。ご精読感謝する。